2008年7月31日木曜日

Au zoo.


いつの放送だったか、動物園が話題になったことがありましたね。たしかわたしは、

Je vais au zoo une fois par semaine.(週に1回動物園に行きます。)

と言った記憶があります。これ、まあすこしは盛っていますが、そんなに真実と遠くはないんです。なにしろ、動物園の「年間パスポート」を持っています!

というわけで、今日の午後、ちょっとキリンやゾウやフラミンゴの様子を見に行ってきました。暑いのに、みんな元気そうでした。

そして4時過ぎ頃でしょうか、ライオン園のほうから、異様な咆哮の高波が次々に押し寄せてきました。駆けつけてみると園内では、サファリ模様の小型トラックが、ライオンたちをその「ねぐら」に追い込んでいる真っ最中でした。追われるままに舎内に入るものもいますが、中には壁沿いに逃げ回るものもいて、そのどちらもが、なんだか地響きのような咆哮を発しているのでした。(逃げ回っているのは、オスが多いようでした。)

人間は、声で相手を識別することができますが、ライオンの場合は、どうなんでしょう? きっと、できるのでしょうね。ああ、この吠え方はイチローだわね、とか、今日のカオリはやけに頼りないじゃん、とか。(いやいや、こんな人間に引き付けた見方はよろしくないのかもしれません。)

でもやっぱり、夏場の動物園はけっこう大変です。意外にいいのが、晴れた冬の日です。客は少なく、空気はきりっとして、動物たちと静かな時間を共有できます!

2008年7月30日水曜日

1, 2, 3 j'irai dans les bois.


今日は水曜日。「歌のお姉さん」の日でしたね。今日の曲目は、<1,2,3 j'irai dans les bois.>です。ココで聞けます;


これは以前にも紹介したサイトです。左側に、この曲のタイトルが見えています。そこをクリックすると、音楽が始まります。
                                               さて、この歌詞はこうですね;
                                               1, 2, 3, j'irai dans les bois
4, 5, 6, cueillir des cerises
7, 8 ,9, dans un panier neuf
10, 11, 12, elles seront toutes rouges.
                                               この中に、放送では出てきていない内容が入っているので、たまには(?)お勉強しましょう。この歌詞、数字を抜けばこうですね;
                                               J'irai dans les bois cueillir des cerises.
Dans un panier neuf, elles seront toutes rouges.
                                               わたしは森に、さくらんぼを摘みに行くつもり。
新しい籠の中で、さくらんぼは真っ赤でしょう。
                                               まず上の行。これは<aller(=ira)+動詞原形(=cueillir・摘む)>のうち、「~しに行く」のほうです。ほら、「森に」みたいなのが付いているときは、こっちのほうがしっくりきやすいんでしたね。
                                               ただし(ここからがやってないところです。)、irai がよく分かりません。実はこれは、aller の「単純未来」形なんです。「単純未来」は、内容は簡単。ようは未来のことを言っているだけです。(活用のパターンは、今はいいことにしましょう。)で、「摘みに行く+つもり(=単純未来)」となるのです。
                                               2行目の seront 、実はこれも、être の「単純未来」形です。だから (elles) seront=(they) will be という感じになります。
                                               toutes rouges のtout(es) は、意味を強める副詞です。(We are all alone. なんて言うときの all のイメージです。「ぜんぶ」じゃないですね?)ただこのtoutes がややこしいのは、副詞のくせに、女性形にもなる(!)っていう点です。そう、toutes は、女性複数形なんです。(直後の形容詞 rouges が女性複数形なので、それに一致してます。)
                                               でも、なぜ副詞なのに形が変わるんでしょう? それは多分、tout には形容詞もあるので、そのときの感じに引きずられて、ということなんでしょう。(いや、たしかにメンドウな単語です。でも、こんな単語めったにありません。)
                                               いやあ、ブログでまで勉強すると、ちょっとヘンな感じですね? じゃあ、明日はくだらないこと書きましょう、いつも通り。(それじゃダメじゃん!)

2008年7月29日火曜日

Tombe la neige.


今日の「まいにちフランス語」、聞いていただけましたか? 途中でレナさんが、アダモの「雪が降る」を歌ってくれましたね? ついこの前、大学の授業で訊いてみたら、60人のクラスで、誰一人この歌を知らなかったんですけど……、まあ、18,9歳じゃ無理もないか?

歌いだしは、こうです;

Tombe la neige.
Tu ne viendras pas ce soir.

雪は降る。
あなたは来ない(だろう)。

映像はこちら;


今日はいつのも you tube にコレというのが見つけられなかったので、dailymotion からです。

そうそう、この曲について尋ねたさっきのクラスで、ついでに紹介したのが、定番の替え歌;

雪は降る。
荒川区内。

わたしは大好きなギャグです。(たださっきのクラスでは、またしても誰一人笑いませんでした!)仲良しの編集者スーヤンが「荒川区」に移ってから、この替え歌は(私の中で)いっそうの輝きを放っています!(「荒川区」ですか? よく知らないんですが、スーヤンによれば、ようは「ディープ・トーキョー」だそうです。今度遊びに行きます!)

ダメ押しにもう1つ。これは映像はないんですが、歌詞を見ながら歌が聴けます。何度も言いますが、ほんとにいい時代です!


*絵は、ヴラマンクの「雪景色」です。(ちょっと涼しくなったかな?)

2008年7月28日月曜日

野に、球。


まずは、ウングワレー続報。美人ディレクターのアヤチャンもご覧になったそうです。若き友人ダイドー君も、今日行く予定だって言ってました。ほかにも、ご覧になった方、お互い、間に合ってよかったですね! ピカソやマティスなら、数年に1回、けっこう大きい展覧がありますが、ウングワレーのような個性派は、なかなか…… 

でも、管さんのブログから始まって、この3日間でこれぐらい情報が広がるっていうのが、今の時代の最大のメリットの1つなのかもしれません。あとは、ほんのちょっとの行動力だけ。ランボーは10代で、「もう十分に見たさ」と書きましたが、なんのなんの、まだまだ見足りません! 

                 ◇

さて、今日は「まいにちフランス語」の収録でした。いつも通り、楽しくできました。レナさんもシゲピョンも、暑さにめげずおしゃべり全開! ああ、元気だなあ……(今日から、オープニングで「足し算」ですね? どうですか? できましたか? だんだん数字が大きくなりますよ!)

今日は、収録の途中、大学時代の同級生がスタジオまで来てくれました。実は彼女、もう20年NHKにいて、大リーグ関係の通訳の仕事をしているそうです。でも……、あれ? 大リーグ?

そう、彼女はフランス文学科を出たのに、今は英語の通訳なのでした。もちろんそれも「アリ」でしょう。

大リーグ。実はわたしは、大リーグけっこう好きです。今年はなんだかんだ忙しくて、そんなに多くの試合は見ていませんが、この4,5年は、かなり見ました。印象に残った選手? たくさんいますけど、ピッチャーならペドロ・マルティネス。彼が好調のときは、惚れ惚れするような球の勢いでした。打つほうなら、シェフィールドとか、モンデシーとか、いわゆるプル・ヒッターが好きです。力動感、というのでしょうか?

なんだかどんどん細かい話になりますけど、わたしが子供の頃、最初に好きになった野球選手は、ドラゴンズの中暁生でした。あのころは、ああいう職人肌の、柔よく剛を制するタイプが魅力的でした。なんだか、シェフィールドと正反対で、自分でもフシギな気がします。

野球を見ている楽しさの原点は、まあ「緑のスタジアムに渡る風を感じること」にある気がします。野球を見に行ってまず「ああ!」と思うのは、通路から、美しいグラウンドが見えた瞬間ですね。

徳持南ライオンズ(少年野球です)では、レギュラーになれなかったわたしですが、そしてあんまり見る時間も取れない今日このごろですが、やっぱり野球は好きです。 

2008年7月27日日曜日

朝1番に


さっき知り合いの女性(30歳)から、やや興奮気味の連絡がありました。その内容はつまり、「ウングワレー展、すごい!」ということでした。彼女が言うには、「カンディンスキーに出会ったとき以来の衝撃!」だそうです。ね、ウソじゃないでしょ! 明日が最終日です!

                ◇

唐突ですが、みなさんが朝最初に口に入れるものって、なんでしょう? わたしの場合は、1年の大半の時期、それはグレープフルーツです。(わたしのGF係数はかなり高いです!)

なぜ今日これを言い出したのかと言うと、実は明日の朝は、GFではなくオレンジにしたからです。

GFファンの方はご存知でしょうが、おいしいGFは、たいていフロリダからやってきます。ところがこの時期なると、フロリダ産はもうどこを探しても見当たらず、あるのはカリフォルニア産と、南アフリカ産ばかりです。(カリ産はおいしいんじゃ、と思うでしょう? 多分、カリフォルニアではそうなのでしょう。でも、東京のスーパーでは、そうじゃありません。南アのGFは、蜂蜜なしでは食べられません。)

で明日、おそらく今年に入って初めて、GF以外のものから1日を始めることにしたのです。(ちょっと不安です!)

でももう少し待てば、梨の値段も手が届くようになるでしょう。林檎は、ちょっとおいしい時期まで遠いけれど。適当に冷えた梨って、おいしいですよね!

さて、明日は久しぶりに、放送の収録があります。(なんだか終わりが近づいてきて淋しいです。)今日はその準備をしていたのですが、いよいよこれから仕上げです。また暑い1週間になりそうですが、今週も元気にいきましょう!

2008年7月26日土曜日

緊急連絡!


今日、「ギロッポン」の国立新美術館まで、「エミリー・ウングワレー展」を見に行ってきました。結論から言います。これはちょっと、すごいです。

実は一昨日までは、この展覧会に行く予定はありませんでした。が、昨日、同僚である管さんのブログに、こう書かれていました;

国立新美術館のエミリー・ウングワレー展。すごい。
色も、波動も、うねりも、その広さも。鼓動が速くなってくる。だんだん気が遠くなる。
これはすごい。ぼくにとってはロスコに匹敵するかも。
28日が最終日。まだの人は、この週末のすべての予定をキャンセルしてでも、ぜひ見に行こう。人が多いとは思うが、ふと気がつくと誰もいなくなっているだろう。彼女の絵ときみ以外、何もなくなっているだろう。
これだけの点数が一度に見られることは二度とないにちがいない。今世紀の必見。ほんとだよ。

週末のすべての予定をキャンセルして! う~ん、そこまでおっしゃるなら行ってみましょうか、どうせキャンセルすべき予定もないし!

というわけで行ってみたら…… これは、びっくりしました、ほんとに圧倒的。予備知識ほとんどゼロで行ったんですが、堪能しました。(500円で音声ガイド借りました。これ、十分モトとります。ちなみに88番にアボリジニの音楽が入ってました。解説のないところでは、ずっとそれ聞いてました。)

カタログも買ってみたのですが…… これはまあ、どんな絵のときもそうですが、実物の迫力には遠く及びません。だから、「エミリー・ウングワレー」でグーグル・イメージするだけでは足りないんです。あと2日あります。明日のデートは、いっそギロッポンへ!(思ったほど込んでませんでした。会場がゆったりしているおかげかな?)

では蛇足に、会場内で聞こえた大学生くらいのカップルの会話を。

「あ、また変わった!」
「すごいね……」

ほんとにね……

2008年7月25日金曜日

レポートは


今日も暑かったですね。「梅雨明け10日」は、まだまだ生きてるんですね。

今日はほぼ1日、小さな研究室で過ごしました。その間、1, 2, 3... 結局7人の学生たちが、入れ替わりやってきました。用事は2つ。「ぼくの(大事な)単位は取れてましたか?」と、「後期最初の日に出すレポートってなんでしたっけ?」です。

単位の方は、1人を除いてみんな取れていました。ただこういう時の、取れなかった学生の様子って、ちょっと意外なんです。というのは、「もう、こいつ、落としやがって!」的な雰囲気は、まったくないんです。(もちろん、廊下に出たら爆発するのかもしれませんが。)

「でも受けたときの感じで、こりゃ落ちたってわかるでしょ?」
「わかります!」

こんな感じ。で、レポートのほうは……

これはあくまで「ボーナス・レポート」であって、出しても出さなくてもいいんです。(でも「お互いのために」、なるべく出してね!)このレポート、後期は、今上野で開催中の「コロー展」を見に行き、「好きな絵を3点見つけてくる」、です。

大半の大学生は、自分から美術館に行くということをしたことがありません。でもこれは、半ば習慣の問題であり、とにかく行ってみないことには、その面白さはわかりません。だから、まあ甘いといえば甘いんですが、彼らが美術館に行くきっかけになれば、ということで、こんなレポートを課しているわけです。で実際、意外に面白かった、という感想は少なくないんです。

やはり大事なのは、好きなものを蓄えていくことでしょう。「色がきれい」とか、「女の子がかわいい」とか、始めはそんな理由で十分だと思います。好きな絵を、好きな詩を、好きな小説を、好きな歌を、たくさん蓄えること。これです!

ちなみにコロー、わたしもまだ行ってませんが、これは必ず行きます。(行きましょう!)

2008年7月24日木曜日

いい湯だな!


今日の東京はほんとに暑かったです。しかも11時を回った今も、まだ蒸し暑い…… Il fait chaud et humide ! です。

今日は渋谷で、CDの収録をしてきました。といっても、いつものラジオ講座のではないんですけど。(でもレナさんも一緒でした。)

今日のスタジオは、初めて行ったところなんですけど、と~ってもキレイ。わたしの何倍も録音をこなしているレナさんでさえ、「知ってる中で1番素敵!」とのたまわっていました。素敵なミキサーの女性によると、まだできて1年、ということでした。(カメラ忘れました。ザンネン!)

ぴかぴかのウッディフロアーに、ブースの中は緑の壁紙。触ってみると、それは「紙」というより柔らかい布で、しかも少しへこむ感じ。これじゃあ、ずいぶんデッドになるんじゃ?

「そうなんです」とミキサーさん。「この前も、加賀美アナが録音されて、静か過ぎてかえってやりにくい、っておっしゃってました」

う~ん。プロにとっては、あんまりデッドだと、「静か過ぎる」って感じになるんでしょうか? せめてオナカが鳴る音は入れないように、というレベルで録音してるわたしとしては、よく分かりません。

と思っていたのですが、始まってすぐ、そのブースの異様な静けさに気づきました。(これは、誰でも気づきます。なにしろ、音がしないんですから!)1メートルも離れていないところで読んでいるレナさんの声が、いつもより遠く聞こえます。ふだん聞いている声の何割かは、反響した音だったんですね。

そういえば、大学の建築学科のある研究室には、無響室(写真)があるらしいです。それって、どんな感じなんでしょう? 

というわけで、(またも!)大量の休憩時間を取りながら、収録は4時間で終了しました。帰り道のセンター街は数え切れない音に溢れ、なんだか音の風呂にでも入っているみたい。でもそれって、ある種の安心感があるんですね。「日本のうるさいわたし」は苦手なほうですが、それでも今日ばかりは、いい湯だな! という気分でした。
                                               (そうそう、1つ面白かったのは、収録中、ほんとにオナカが鳴った場面。それはちょうどレナさんが、J'ai faim. 「オナカすいた。」と読んでいるところでした。できすぎです! レナさんは言いました、「これ、取り直さなくていいですよね!?」 ミキサーの女性も、笑いながら頷いていました。さて、どうしましょう??)

2008年7月23日水曜日

古本屋さん


というわけで、町田の古本屋さん、行ってきました。予定外の本をいくつか購入。ま、古本屋さんに行くっていうのは、「予定外」を期待してるわけなので、よかったです。(それはフツーの本屋さんでも同じですけど。)

今はインターネットという強い味方がありますけど、わたしが学生の頃は、なにか調べようと思ったらまず図書館。それから本屋、そして古本屋、というのが、1つの流れでした。東京で古本屋というと、神田、という印象が強いかもしれませんが、わたしがよく行ったのは、早稲田の古本屋街です。(早稲田の学生ではなかったんですけどね。)もちろん神田にも行きましたが、当時は、明らかに馬場のほうが安かったです。

まず高田馬場まで行って、そこからあっちこっち見ながら買いながら、早稲田まで歩きます。で、いいかげん疲れたところでバスに乗り、結局また高田馬場まで戻ってくる…… そういうパターンを、何度繰り返したかしれません。(帰りは本が増えて重いので、ついバスなんですね。)

今回は、なんとなくネットの古書店を見ていたら、その町田の古書店が充実していそうだったので、それならちょっとのぞいてみようかな、と思ったのでした。

それにしても、古本屋の雰囲気と言うのは、今も昔もかわりませんねえ。学生時代に目にした本もけっこうあって、余計その感が強くなりました。「荒地出版会」発行の、鮎川信夫詩集もありました。

古本屋さんが面白いのは、なんというか、時代が圧縮されているからなんでしょう。(しかも図書館と違って、買うことができるし。)今年出た本が、50年前に出た本とフツーに並んでいるんですから。探せば、戦前の本だって、もちろんあるでしょう。

今の学生諸君は、まあ最初はネットだとして、その後はどうしてるんでしょう? 図書館、ちゃんと利用してるでしょうか? そしてたまには、古本屋さんも物色するのでしょうか?(意外に、面白いですよ!)

小さなお船


今日の「歌のお姉さん」は、「小さなお船がありました」でした。

Il était un petit navire
Il était un petit navire
Qui n'avait ja, ja, jamais navigué
Qui n'avait ja, ja, jamais navigué
Ohé ! Ohé !

Ohé ! Ohé ! Matelot
Matelot navigue sur les flots
Ohé ! Ohé ! Matelot
Matelot navigue sur les flots


小さなお船がありました
小さなお船がありました
お船は一度も、海に出たことがありませんでした
お船は一度も、海に出たことがありませんでした
サア! サア!

サア! サア! 水兵さん
水兵さん、海を渡って
サア! サア! 水兵さん
水兵さん、海を渡って

とりあえずご報告します!(これから、町田の古本屋さんに行ってきます。)

Ready?


NHKの「プロフェッショナル」という番組、時々見ます。先週は、将棋名人戦、森内VS羽生の死闘を扱っていました。

いやあ、今「死闘」と言いましたが、こんなに静かで、こんなに深いところに触れている死闘は、そう多くはないんじゃないか、と思ってしまう内容でした。

わたしは実は、これでも(絵に描いたようなヘボ将棋とはいえ)一応将棋ファンなのですが、それでももちろん、名人戦がどれくらい深いのか、どれくらい高いところを飛んでいるのか、ほとんどわかりません。

一般に、「ちょっとは指したことがある」くらいの人だと、アマチュアの初段には歯が立ちません。で、二段、三段と強くなり、アマ四、五段くらいが、ほぼプロ(の卵)の初段。でプロはそこから、また一段ずつ登ってゆくわけです。

で、今回の名人戦では、将棋400年の歴史で、初めて指された手があったといいうのです! もう、天文学的な数の対局が行われたはずなのに。(わたしなども、将棋史上にないような手を指します、違う意味で!)

定石を叩き込んで、そこから離れること。そう、名人は言っていました。

ランボーが、10代であの詩群が書けたのは、異常に教育熱心だった母親の薫陶なくしては考えられません。その「定石」があってこそ、そこから離れることもできたんでしょう。

今J-POPシーンには、いくつもの人気バンドがいますが、その中には、わたしから見ると、若くしてすでに自己模倣に陥っているとしか思えないバンドもあります。セルフ・カバーなどと言って、録音技術以外にはなにも変わってない、なんてのもある気がします。

そういう意味で、わたしにとってこの前期はいい時間でした。新しい試みが否応なくやってきたからです。この夏休みは、それをもう少しだけでも深めたいと思っています。

というときは、まずは本探しから。明日は、古本屋さんへ行ってきます!

2008年7月21日月曜日

K(itto) Y(okunaru)


このブログが始まってちょうど2ヶ月。ヘッダーの図像を変えてみました。緑色とか、葉っぱとか、わたしは好きです。いかがですか?

(そういえば、1年ほど前に作った教科書のデザインも、緑、および植物をテーマにしました。実はこれ、弟がデザインしてくれました。弟が生まれたとき、将来一緒に仕事をすることがあるなんて、考えてもみませんでした!)

今日は午後から近所のスタバに出かけ、前期試験の採点をしていました。その結果は…… これを話題にすると、「血圧が上がる(という言い回しも、最近見ませんねえ。)」ので、やめときましょう……

             ◇

今日スタバにいるとき、目の前を大きなデモ隊が通り過ぎていきました。ブラスバンドつきで、着ぐるみも何体かいて。スローガンは、「青少年の権利を守ろう」という、ごく真っ当に思えるものでした。

フランスでは日常的なこの「デモ」や「スト」も、日本ではあまり見かけません。ある話題でフランス人の先生と話していたとき、彼は、「こんな事態は impossible だ。フランスなら、とっくにストになってるよ」と、呆れ顔で言いました。たしかにそれは、改善すべきだよな、と思えることだったので、ストも悪くないかもなあ、と思ったりしました。

もう決まったことだから仕方ない。上が決めたことだから、従うだけ。オレ1人が反対してもしょうがない…… こんな風に思ったこと、ありませんか?(わたしはあります。)でもそれって、すごく「日本式」な感じがします。いや、「日本式」が全面的に悪くて、「フランス式」が素晴らしい、と言ってるわけじゃありませんよ。

ただそれでも、とにかく「日本式」、というのには抵抗がありますね。KYと言われようと、譲れないこともありますから。お若いみなさん、時にとKY言われるくらいでちょうどいい気がします! みなさんが思いきって「ワテこう思うねん」と言えば、きっと賛成する人も出てくるでしょう。

なんだか、マジメな話になっちまいました! このブログがフシギなのは、何も考えないで書き始めると、自分でも意外なことを書いてしまうことです。ま、書くっていうのは、そんなものなんでしょうか……?

さて、3連休も今日で終わり。わたしも明日は大学に行きます。(ま、授業はないんですけど。)では今週も、元気にいきましょう!
                   ◇
                                               そういえば今日のエンディングで、レナさんが言ってましたね、Bonjour, amour. こんにちは、恋…… って。思い出すのは、もちろんサガンです。彼女は書きました、Bonjour, tristesse. こんにちは、悲しみ…… と。初めて「恋」と出合った時、初めて「悲しみ」と出合った時。それは、いつでしたか? こうして挨拶すると、曖昧に通り過ぎることは少なくなるのでしょうか? もちろん、ああ、あの時がそうだったんだ、と、あとから気づくこともあるでしょうけど。
                                               『悲しみよ、こんにちは』は、ときどきレポートを書いてもらうことがあります。概して、「女子」のほうが受けがいいようです。夏のひと時、いかがでしょう? 

2008年7月20日日曜日

マイナー上等!


いつもの通り、一昨日の18日から、「8月号」が発売されています。あと2ヶ月なんですねえ。楽しみましょう!

そういえば先日、編集のA子さんから、このハガキ(写真)が回ってきました。きょうこさん、ありがとうございました。そして事後承諾ですみません、ここにアップしちゃいました!(こんなハガキが頂けるのは、おそらく一生で最初で最後でしょうから、記念にさせてください!)それから、遅くなりましたが、ノリコさん、心のこもったお菓子、ありがとうございました。スタッフみんなで頂きました。(A子さん、食べすぎ注意!)

ラジオやテレビでの勉強のいいところの1つは、今同時に、自分と同じように勉強してる人がいるのね~、と思えることじゃないでしょうか? (もちろん、孤独の中で、コツコツ好きなものを読んだりしていく、っていうのもいいですけど。)ラジオは、テレビと違って、「視聴率」的な数字は出てこないらしいので、どれくらいの方が聞いてくださっているのか分かりにくいのですが、まあ、100人とか1 000人とかいうことはないのでしょう。ちょっと不思議な気がしますね。

去年教えていたあるクラスに、「英会話上級」を聞いているという女子学生がいました。(実はわたしも、クルマで聞くことが多い番組でした。ちょうど通勤時間にあたっていたので。)だから授業中も、彼女にする質問は、なるべく、

じゃあ、このフランス語、英語にすると?

というのにしていました。(なるべく、というのは、答えに自信がないときは訊かない、ということです!)
彼女は、きっと今年も聞いているでしょう。

AMラジオって、今はたしかにメジャーとは言えないかもしれないけど、そんなこといったら、そもそも「フランス語」がマイナーです。(まあ、ロシア語の黒田先生なら、「マイナーの中のメジャー」とおっしゃるでしょうけど。たしかに、ベラルーシ語に比べたら!)マイナー好き同士、8月号も楽しくやりましょうね!

2008年7月19日土曜日

言葉なんか


「まいにちフランス語」は、今週で、3分の2を終えました。みなさん、いかがですか? まだまだ大丈夫ですか? どうぞ、練習問題こなしてくださいね。分かっているつもりでも、実際やってみると、「発見」があるものです。楽しんでください!(ついでに宣伝しちゃいましょう。練習問題の「追加」をご希望の方は、その名もズバリ、『フラ語練習、楽しいだけじゃだめかしら?』もどうぞ。全体としてはヤサシイけれど、これは初級の範囲をすべてカバーしているので、全体像を眺めるのには都合がいいです。)

問題集と言えば…… わたしの世代だと、やはり1番記憶に残っているのは、「原仙」の「英文法標準問題精講」でしょうか? 高校生のころ、あの問題集は3回やって、ほぼ丸暗記しました。(もう忘れましたけど!)なんだか、クイズを解いているみたいで好きでした。

と言うと、「変わってる」と言われることがあります、文法が面白いなんて! と。でも、文法、本当は面白いです。クイズみたいで。(ってもう言いました?)

そういえば中学生の頃は、日本語の文法が好きでした。中1のとき、本屋で「国文法なんとかかんとか」という本を買って、これは格助詞か係助詞か、なんてコラムを喜んで読んでました。(う~ん、これは書いていて、ちょっと「変わってる」感じがしますねえ。でも、勉強好き、というのでもなかったんですけど。)

これは、大学の授業で聞いて、いまだに記憶に残っている話なんですが…… 子供が言葉を覚える過程ってどんな風か、ということについての、試論の1つです。

まず、なにも描かれていない画用紙を想像してみてください。そう、真っ白けです。で、赤ちゃんが最初に、「ア!」と言ったとします。つまり、画用紙の真ん中に、「ア!」と大書きしたということになります。じゃあこの「ア!」は、なにを指しているのか? それは、「世界全体」だ、というのです。そう、画用紙は、「世界」なんです。

次に赤ちゃんは、「ママ」という言葉を覚えたとしましょう。画用紙は、「ア」と「ママ」に分割されます。「世界」は、「ママ」と「それ以外(=ア)」でできています。

そして赤ちゃんは、「パパ」を覚えたとします。もちろんそれは、その赤ちゃんのパパのことかもしれないし、もしかしたら、「男の人」はみんな「パパ」なのかもしれません。でもとにかく、画用紙に「ア」と「ママ」と「パパ」が並ぶことにはなるでしょう……

この話のポイントは、赤ちゃんが言葉を覚える順序ではありません。大事なのは、赤ちゃんが言葉を覚えるということは、最初はただ「真っ白け」だった世界を、どんどん分割してゆくことなんだ、という点にあります。「文節化」、と呼んでもいいのかもしれません。

で、たとえば、フランス語のpapillon。これは日本語にすると、「蝶」にも「蛾」にもなります。(「蛾」の場合は、papillon de nuit 「夜のパピヨン」とも言いますが。)これ、どうですか? 日本語を使う人たちにとっては、「蝶」と「蛾」が同じ単語だというのは…… ちょっとイワ感がありますね? どうしてこんなことになるんでしょう?

よく分かりません! 分かりませんが、1つ分かることがあります。それは、「言葉」によって、「分割」の仕方は違う場合がある、ということです。

もちろん、フランス語では分かれているけど、日本語ではイッショクタになっちゃう単語(「帽子」とか)もあります。日本語ほうが細かい、という話ではないんです。

ということは…… ふだん日本語を使って暮らしているわたしたちが「世界」を見るときは、「日本語」の分割の仕方にしたがって見ている、ということになります。「蝶」と「蛾」は、ちがう単語ですものね?

ということは…… わたしたちは、喜んだり、悲しんだりするときも、「日本語」の外側にいるわけではないので、わたしたちがどんなに嬉しいと思っているときでも、それはまあ、「日本語」、あるいは「日本語文法」の支配の下で、ということなんでしょう。(なんだか、ザンネンな感じですか?)

ここで思い出されるのは、田村隆一のあの有名な1行;

言葉なんかおぼえるんじゃなかった

です。言葉を知らなかったころの、「真っ白な」喜び…… 

2008年7月18日金曜日

いつも通りの最終日


「東京詩」のゼミのほうも、やはり今週終わりました。思っていたことの大半はできたし、9人のゼミ生は、誰1人脱落せず、というかみんなちゃんと聞いてくれて、ありがとうございました。聞く、というのは、一応受動的ですけど、みなさん(写真)の目を見ていれば、ちゃんと聞いてくれているのはわかりました。その上、わたしには馴染みがなかった音楽を紹介してももらえたし。わたしとしては、とても楽しかったです。(最後のレポートをちゃんと出してくだされば、いい成績を期待してもらっていいです!)

昨日も書きましたが、みなさんの「延長戦」もまだまだ続きます。どうぞ、「東京」を、そして(大げさに言えば)「世界」を、見続けてください! そしてなにか機会があったら、みなさんの思いを形にするのもいいですね。そんなときは、必ず教えてください。

               ◇

今日の2つの試験で、前期の授業は終了しました。何年もこの仕事をしてきましたが、今年が1番早かったし、1番楽しかったです! ラジオの仕事を通して、レナさんをはじめスタッフの人たちと仲良くなれたし、リスナーのみなさんに、少しは役に立てた(ですよね? Dites ' Oui ! '  ウソでもいいから!)し、2つのゼミも楽しかったし、新しい職場で、魅力的な先生たちとたくさん知り合えて、刺激があったし、まあほんとに、いいことづくめでした!(ただ残念だったのは、今週の火曜の朝、朝の2時間だけ左折禁止だったのを知らず、曲がった途端にお巡りさんにとめられ、その罰金が7000円だったことです!)

で今日は、いつものメンバーで昼ごはんも食べられたし、波戸岡先生との食後のおしゃべりもためになった(近々書きます)し、そのあと研究室では、次の会議用の書類仕事も終わらせられたし、その間、電気電子生命学科の4人が、「ここ涼しいからいいよなあ」とか言いながら、お下がりのソファでだべってるし、前期最終日にふさわしい、まさに「いつもの通り」の金曜日でした。なんだかわかりませんが、ありがとうございました!

2008年7月17日木曜日

延長戦は各自で!




      
                                  
わたしのいる理工学部では、来週からが定期試験期間なのだけれど、たいていの大学同様、語学はいわゆる「授業内試験」の形をとるので、今週が試験週間だ。

ということは、ゼミの授業も今週が最後で、わたしとしてはややさびしい感じ。「東京詩」のほうも、「フランス映画」のほうも、まだまだ材料はあるから、ほんとは通年でやりたいくらい。

で、ふつうゼミは試験はないものだろうけれど、「フランス映画」のほうだけは、ごく簡単な試験をしました。それは、前期にゼミで見た映画の主演俳優の顔写真を並べ、そこに俳優の名前と作品名、そして監督名を書くだけ。試験というより、まあ、ちょっと確認ね、という感じです。

が、これが意外にみなさん(写真)苦戦。まあ、「フランス映画は見たことがないけど、興味があるから」という理由で参加してくれた人もいたわけですから、少しは「勉強」しとかないとできないかもしれませんね。

前にも書きましたが、この「映画」ゼミでは、わたしはあまりしゃべりませんでした。毎週の「感想文」は、まじめに見てる感じが伝わってきたし、なぜこの作品をわたしが選んだかを考えて書いてくれる人が多かったので、それなら作品の選択そのものを「メッセージ」に代えよう、と思ったからでした。それにわたしがだらだらしゃべるより、しゃきっとした作品を見せる方がいいし。

でも、ちゃんと出席してくれた方々は、やはり(小さいけれど)一つの「糧(かて)」にはなったはずだと思います。フランス映画未体験の状態とは、はっきり違うはずです。

ゼミ生のみなさん、あとは自分で、どんどん映画館に行ってくださいね。ゼミの「延長戦」は、これからずっと続くのです!

言葉遊び


今日は、このところの一連の会議の(一応の)締めくくりで、9人で居酒屋に繰り出し(?)、さきほど帰宅しました。歌詞を待っていてくださったみなさん、遅くなってすみません!

で、今日のレナさんの歌、Trois petits chats は、こんな歌詞です。

Trois p'tits chats, trois p'tits chats,
trois p'tits chats chats, chats
Chapeau d'paille, chapeau d'paille,
chapeau d'paille, paille, paille
Paillasson, paillasson,
paillasson, sson, sson
Somnambule, somnambule,
somnambule, bule, bule
Bulletin, bulletin,
bulletin, tin, tin
Tintamare Tintamare
Tintamare, mare mare

ま、「しりとり歌」なので、そんなに意味はないんですね。(somnanbule は「夢遊病者」!)で、歌はこちら。(ちょっと音程がアヤシイ?)


言葉遊びって、きっと、どの言語にもあるんでしょうね。言葉遊びと言えば…… ジョイマン! 最初見たときは、なんだか気味悪いなあ(失礼!)、と思いましたが、彼らの言葉遊びは、ほんとうに無意味。そしてその無意味に並べられた言葉の遥かな距離感が、ちょっと面白く感じている今日この頃です。ぜひ、「意味」におちないタイプの芸を、突き詰めて欲しいです。期待します!

2008年7月15日火曜日

シェルブール/フラメンコ



今日も暑いですね。ただ、今(午後3:30)神奈川の空は曇ってますけど。

「まいにちフランス語」、今日も聞いていただいた方、途中お聞き苦しいところがあり、大変失礼いたしました。なんだか、スタジオで軽く歌ってる分にはなんてことないんですけど、放送で聞くと…… というわけで、重々反省してますので、NHKに苦情送るのはやめましょうね!

で、その「お聞き苦し」かった部分、こういう内容でした。


Tu sais bien que ce n'est pas possible.
(Je ne te quitterai pas.)
Mon amour, il faudra pourtant que je parte.
Tu sauras…

わかるだろ、それはムリなんだ。
(わたし離れない。)
かわいい子、僕は行かなきゃならないよ。
わかるときがくるよ……

これは実は、徴兵(アルジェリア戦争)にとられることが決まったワカモノと、その彼女の悲しい別れの場面なんです。「行かなきゃ」ってのは、だから戦争へ、なんです。この歌が含まれる部分が、これです;


英語字幕付きなので、どうぞ比べてみてくださいね。(ただ「まいにち」では出てこない文法も含まれているので、そのへんは流しちゃって!)

この『シェルブールの雨傘』という映画、何年かに1度、学生に見せることもあります。すると、金髪のオニイサンが泣いてたりするので、ちょっと可愛いです!

                 ◇

トルコ音楽に根ざした、男女の双子によるフラメンコ。これ、けっこうクルかもしれませんね。とにかく、だまされたと思って、見てみてください;


わたしは「クル」と思います!

2008年7月14日月曜日

暑い収録


今日は le Quatorze Juillet 、フランスの革命記念日にあたります。だからといって、朝の挨拶が、「革命記念日おめでとう!」になるわけではないようですが。

で、収録なんですが、今日の昼過ぎの渋谷は暑くて暑くて、NHKに到着する頃にはもうフラフラ(は大げさだけど)。汗が引くのを待ちながらまず打ち合わせ。「歌のお姉さん」コーナーで使う歌は、ちゃんとレナさんが用意してくれていました。でまあ収録自体は、いつものように楽しく進行。レナさんとシゲピョンとわたし、それに技術さんが1人。もう慣れたもんで、とてもスムーズ。この調子なら、前半に3課取れるかな? と思った矢先、ドレスアップした美人ディレクターアヤちゃん入場。
「とりあえず休みます?」と嬉しそうなレナさん。
「休もう休もう!」

で休憩突入。しかもアヤチャンは、ロールケーキの差し入れを持ってきてくれました。これはやっぱり休まないと。

「今日は」と、レナさん。「rouge et noir ですね? どうしたんですか?」

見ると、黒のパンツ・スーツに、赤いジャケット。これはついに?

「んん、ちょっとね」
「もしかしたら」とシゲピョン。「イイ男探し?」
「だといいけど」
「新しい恋人が、新しい会議室、っていうんじゃね!」

そしてアヤちゃんが会議(!)のために部屋を離れた後、やっと収録再開したかと思ったら、今度は編集のA子さんが入場。

「また休みますか?」とまた嬉しそうなレナさん。
「休もう休もう!」

ところが、A子さんの差し入れは、9月号のゲラ(!)でした。

「水曜午前までにお願いしま~す!」

楽あれば苦あり。OK, がんばります! その後、レナさんとA子さんは色々打ち合わせていたようですが、わたしはシゲピョンとだべっていました。ま、レナさんにまかせとけば大丈夫!

というわけで、なんだか休憩ばかりの収録でしたが、それでも、なんとか予定通り進みました。(う~ん、もとの予定がゆるすぎる??)

2008年7月13日日曜日

イメージを浴びよう


今日は青山の書店(写真)まで、先日ここでも紹介したトークイベントにいってきました。出演者は、ディジタルから韻文までなんでも来い! の管啓次郎さんと、詩人であり写真評論の第1人者でもある倉石信乃さん、そして写真家の北島敬三さん、の3人です。

それぞれの方の話はそれぞれに面白かったですが、特にドキッとしたのは、管さんのこのセリフ;

「ぼくたちの想像力は、どこまでもいけるってものじゃない。だから、自分の心というか、内面というか、そういうものに、いつでもしっくりくる<姿>を与えることはむずかしい。でも、いろんなイメージ(写真とか、絵とか)に触れ続けていれば、その細かな違いに気づくようになって、そして、心や内面に、ふさわしい<姿>を与えることができる……」

もちろん正確な言葉ではないけれど、わたしにはこんな風に聞こえました。

で、帰り道、大江戸線に乗っているとき、鞄の中にあるデジカメのことを考えました。今それを出して、この車内を写したら…… あそこのカップルを、あそこのタンクトップの女の子を、大きい荷物のおばあさんを、滑り込む新宿のホームを写したら…… そう考えるだけで、実際にシャッターは押さなくても、ちょっと風景が変わって見えました。イメージは、通勤通学の途中にも、潜んでいるのかもしれませんね。(なんなら明日、鞄にカメラをしのばせたら? それだけで、風景が変わるかも!?)

                 ◇

梅雨もそろそろ終わりですね。今週も元気にまいりましょう。わたしはこれから、明日の収録の準備です!

2008年7月12日土曜日

解があるなら


今日は土曜なので授業はないのですが、最近続いている一連の会議が2つあって、大学にいってきました。で、その中休み、3人の先生方と学食でランチいたしました。

3人は、物理(1人)と機械情報(2人)の先生で、もちろん一緒の昼食は初めて。そう、たとえば今日の会議の場合、30人中文系はわたし1人です。でもそれはそうなんです、なにしろ理工学部なので。

理系の先生とおしゃべりするのは、なかなか興味深いです。というのも、基本「同業者」でありながら、教えてる内容は全然違うので、色々なことに対する感じ方も違うからです。やっぱり、「違う」人たちと話すのはおもしろいです。今試しに手元の大学案内を見ると、3先生の専門は;

物理の先生:レーザーを利用して、飛び回る原子を静止させたり移動させたりする研究。
機械情報のA先生:ガン治療装置の開発。
機械情報のB先生:むだ時間系の制御問題。

と紹介されています。(その実態については、カイモク分かりません!)

雑談中、1つ印象に残ったのは、カリキュラムの「大改革」について話していたとき、機械情報のB先生が言ったセリフです。

「ぼくたちはね、ロジカルにしかいけないけど、解があることが分かれば、どんなパスルだってときますよ。」

は~。「アバウト」を絵に描いたような人間としては、びびってしまいます。それにしても、「解」なんて言葉が日常会話に出てくるのが、さすが理系! って感じがしますね。

でも…… 先生たちはとっても魅力的なんだけど、高校でザセツしたままの物理に再挑戦しようとまでは思えない、文系の(ダメな)ワタシなのでした!

2008年7月11日金曜日

拾ったバラを


昨日の終わりに、ついに you tube に「東京行進曲」がアップされた、ということを書きました。こんな曲だったんですね。でもどうして、この昭和4年(1929年)の曲が特に気になっていたのかというと……

この曲は、4番まであります。長くもないので、全部引用しちゃいましょう。

昔恋しい 銀座の柳
仇(あだ)な年増(としま)を 誰が知ろ
ジャズで踊って リキュルで更けて
あけりゃダンサーの 涙雨

恋の丸ビル あの窓あたり
泣いて文(ふみ)かく 人もある
ラッシュアワーに 拾ったバラを
せめてあの娘(こ)の 思い出に

広い東京 恋ゆえせまい
いきな浅草 忍び逢い
あなた地下鉄 私はバスよ
恋のストップ ままならぬ

シネマ見ましょうか お茶のみましょか
いっそ小田急(おだきゅ)で 逃げましょか
変わる新宿 あの武蔵野の
月もデパートの 屋根に出る

ね、なかなかかわいいでしょ? この1929年というのは、関東大震災で東京が壊滅したあと、もうかなり復興してきて、ただし太平洋戦争まではまだちょっとあるという、東京にとっては一つの「青春時代」だったようです。

そしてこの歌詞。上手ですね? 当時華やかだった「銀座」、震災にも耐えた「丸(の内)ビル(ヂング)」、かつては東京1華やかだった「浅草」、そしてついに登場する新しい街、「新宿」。たしかに「東京行進曲」です。おそらく、東京の1つの顔として「新宿」が切り出されたのは、これが最初ではないでしょうか?

もう1つの注目点。それは「ラッシュアワー」と「小田急」でしょう。つまりこのころ、東京で私鉄が発展し始め、「ラッシュアワー」というものが出現するわけです。こんなに「時代」が詰まっている曲は、数すくないでしょう。

そしてこれを書いたのは、あの西條八十です。(といっても、若いあなたにはピンとこなかもしれません。わたしもまた、リアル・タイムで聞いたわけではありませんが、西條のヒット曲はいくつか知っています。『青い山脈』、とかね。)フランス文学専攻だった西條は、もともと象徴詩を書いていたのですが、途中から「歌謡曲」の作詞に力を注ぐようになりました。これは、幸福な転向だったといえると思います。(ボードレールや朔太郎のあとに、象徴詩を書くっていうのは……)

というわけで、歌詞だけはよく知っていたこの曲、こうして聞けてスッキリしました!


ちなみにこの曲、日本の「映画主題歌」第1号だそうです。

2008年7月10日木曜日

「東京詩」・ラスト


今度の火曜日はラスト・ゼミ。「東京詩」の方は、わたしが1番好きな詩集の1つ、清水哲男さんの『東京』を取り上げます。(ゼミ生のみなさん、印刷終わりました。取りに来てください。)よくわからない行も含めて、とにかく引き込まれる詩集です。(今は絶版ですが、古本のサイトでは、わりと簡単に見つかります。)

実は、わたしのvaioの「お気に入り」には、これが入っています。

清水哲男『新・増殖する俳句歳時記』  http://zouhai.com/

ここでは、毎日1つ俳句が紹介されると同時に、清水さんの「今日の一言」的な発言もあって、清水ファンとしては、ここに寄るのが日課です。(アーカイブを検索することもできます。)

「詩」は、儲からないものの代表選手だけど、まあ好きなものは仕方ないですね。そういえば、もう何冊も詩集を出している詩人が、あるエッセイで、「昔は、とにかく3000部の詩集を作るのが夢だった」と書いていました。ちょっと分かる気がします。

で、なんと! 長らく存在しなかった「東京行進曲」、you tube にありました! ず~っと待ってたのでびっくり。(2週間前アップでした。)これで覚えられます! 東京詩のゼミ生のみなさん、必ず見てね!

2008年7月9日水曜日

花粉前線


今日は差し迫った仕事もなく、久しぶりにノンビリ過ごしました。今夜予定されていた会議が中止になった(ラッキー!)ので、大学にも行かず。

また今日の東京は、1日曇っていて、まあ蒸し暑いということもなく、過ごしやすかったです。(そもそもこの辺は「東京の田舎」なので、都心に比べるとだいぶ涼しいんですけど。)そういえば数日前、大学の事務のオバサマとしゃべっていて、

「でもわたしなんか、雨だといいんですよ。花粉がないから」
「花粉? 今も?」
「わたしはねえ、真冬以外はず~っと。かわいそうでしょ?」

たしかに、ちょっとかわいそうですねえ。で、その後一しきり花粉の話をしたせいでしょう…… 学校からの帰り道、唐突にある展覧会のことを思い出しました。もう、4,5年前になるでしょうか。東京・竹橋で見た「ヴォルフガング・ライプ展」です。

この展覧会は、今でもこうやって思い出せるくらい、印象深いものでした。上にあげた写真の、黄色く輝くように見える部分、これ実は、花粉なんだそうです。
なんだか、すごいですね。花粉は何を象徴しているのか、なんてことより、花粉そのものに打たれる感じがします。(まあ、事務のオバサマは、ちがう意見かもしれませんが!)今は「グーグル・イメージ」という強い味方がいるので、ライプの名前を入れれば、たくさん作品が見られます。牛乳をこぼしただけ(?)みたいなのから、蜜蝋を使ったものまで。
この「花粉」の写真を見てしまったあなたは、きっといつか、このライプのことを思い出すでしょう。たぶん冬に、「この春の花粉前線予想」が語られる頃などに!
                                                                                     
              ◇
                                               今日のレナさんの歌、よかったですね。歌詞は、
                                              Pétrouchka, ne pleure pas
Entre vite dans la ronde
Fais danser tes nattes blondes
Ton petit chat reviendra
Il s'est fait polichinelle
Dans les chemises en dentelle
De ton grand-papa
                                               です。録音なさった方は、これを見ながらもう1度どうぞ。
「歌のお姉さんコーナー」、気に入ったので、しばらく続けます!(わたしは聞いてればいいので、楽チンだし!)

白熱、ロミオ、写真


わたしは今、「理工学部」というところにいるのですが、明治の場合、その中に8つの「学科」が割拠しています。

実はこの頃、妙に会議が多く、今日も夕方6時から9時近くまで、なかなか白熱した議論を展開してまいりました。ふだんわたしは、「借りてきたまま忘れられた猫」のように大人しいのですが、今日はちょっと、黙っていられない感じだったので、黙ってませんでした! ま、それはともかく。

今日の「フランス映画ゼミ」では、『ロミュアルドとジュリエット』を見ました。これはまあ、1つの企業を舞台とした、白人男性社長と黒人女性掃除係の物語です。で、今までは、その「人種」の観点から見ることが多かったのですが、今日久しぶりに見て、ちょっとびっくり。というのは、今日本で話題の、「食品」の偽装問題が出てくるし、それに対するマスコミの狂騒ぶりなども垣間見えるからです。ああ、こんな風に偽装は行われたのだろうな、と、単純に思ってしまいました。お近くのビデオ屋さんなどにあったら、面白いです、どうぞ見てみてください。(一応、現代版『ロミオとジュリエット』だそうです。)

                  ◇

写真、好きですか? わたしは、このところちょっと離れ気味でしたが、高校生のころは、遊園地などで開かれる撮影会にも行ったし、その後も、わりと写真集を買っていた時期もありました。(当時お気に入りだったのが上にある写真です。)で、そんなことはともかく。

今度の日曜日、こんなのがあります。

南青山のカフェ/ブックス246で連続トークセッション
「見えるもの聞こえるもの」(What We See, What We Hear)
第1回
ゲスト北島敬三「写真はいま何を考えているか」 with 倉石信乃/管啓次郎
日時:7月13日(日)午後4時から6時まで
場所:カフェ/ブックス246 http://www.book246.com/
料金=1000円(定員50名)
予約は電話5771-6899 
あるいはメール  info@book246.com

写真に少しでも興味があれば、きっと面白いです!(わたしも聞きに行きますので、もし会場で見かけたら、お声をかけてくださいませ。)

ではまたあした!

2008年7月7日月曜日

最後のCD収録


今日は、ついに9月号、つまり最後のCD収録でした。

「なんだか最初は遥かな道なんだけど、終わってみるとあっという間よね~」

とは、テキストの編集者であるA子さん。まあ、その通りですね。Le temps s'envole ! 時は飛び立ちます。まだ放送の収録は何回かありますけど、やっぱり今日は、1つの区切りなんでしょう。CD収録担当のサッチャンには、この場を借りてお礼を言います。Merci mille fois ! サッチャンのおかげで、どれほどわたしたちが仕事しやすかったことか!(でもシゲピョンの占いによると、サッチャンはエネルギッシュな人で、忙しくしていて吉、らしいので、これからもたくさんいい仕事をなさることでしょう。楽しみにしています!)ちなみに今日のお弁当はかつサンド。おやつは豪華なドーナツと六花亭のバタークッキー。う~ん、贅沢!

で収録そのものは、またまた厳しいシゲピョン・チェック! が飛びました。

「知ってまっせ? これ女の子はいわへんちゃうん? 直しといてんか!」

承りました。あとここは、こんな感じでよろしゅおすか?

「そやなあ。ちーとまっときや!(ゴニョゴニョ)ま、ええんちゃう?」

おおきに!  

「でもその前んとこ、これはもっかいやな。きばりや!」

できばって、やり直しました、3回!(でもシゲピョンも、ほんとはやさしい人なんです。今日は赤ペン貸してくれたし! おおきに。)

というわけですが、終了時点では「75分30秒」ほど。ここから編集しても、多分70分はいくでしょう。「テキストにはない質問」も、もちろんあります。よろしければ、活用してくださいませ!

レナさんファンの皆様へ。彼女は今日も元気でした。長~いフランス語を一気に読むところも、きれ~いに1発OK。さすがやね!

ではみなさん、蒸し暑くて大変ですけど、今週も元気にいきましょうね!

2008年7月6日日曜日

カバーの楽しみ


今日は日曜日。東京は蒸し暑くて、これからするゲラの校正、どこか涼しいところに移動してから、と思ってしまいます。(といっても、スタバかタリーズか地元の図書館か……)

さて、今週は2度、(受け売りの)フランス語圏音楽を紹介しましたけれど、今日はまったく趣味に走り、今はR&B界を代表する女性歌手となった、リアーナの話を少し、「カバー」を聞く楽しみと合わせて書いてしまいます。

R&Bというと、なんだかそれだけで遠い感じを持つ方もいらっしゃるかもしれませんが、まあ、聞いてみればカワイイ(?)音楽だと思います。R&Bって何? という問いに対しては、正確な定義を探すより、かつて音楽好きの若い女性の友人が言っていたこの説明、
「リズムが、揺れるかんじのヤツ」

がいいと思っています。ストレート・ロックとちがって、揺れるんですね、ちょっと。R&Bが好きっていうのは、この揺れる感じが好き、っていうのとほぼ同じです。

3年前、まだデビューしたてのリアーナ(写真は去年のアルバムジャケット。去年私が買ったCDの中で、最上のデザインだと思いました。)を、渋谷の小さなホールで聞く機会がありました。いや、「聞く」って感じじゃなく、DJ(カオリ)もいて、さながらクラブの様相でしたけど。あの頃は、バルバドス人の父とガイアナ人の母を持つ若手が、R&Bに新風、程度の扱いではありましたが、まあ当時も、「ポスト・ビヨンセ」という受け止め方もありました。今は、そんな感じですね。

で、リアーナの去年の大々ヒット曲『アンブレラ』は、こんな曲です。(冒頭のラップはジェイ・Zです。)


いかがですか? カワイイ(?)曲ですよね? で、なぜかは知らねど、この曲はカバーするミュージシャンが多いのです。たとえば、これはどうでしょう。


男が歌うと、また違った感じ。しかも素直で、いい感じ。じゃあ次はバラード風に。


当たり前だけど、テンポが変われば、雰囲気も変わるんですね。(絶えずリアーナが映りこむので、2つの曲を聴いてきるような眩暈感もあります。)じゃあ、こんなのは?


これは、PV自体をカバーするという悪ふざけぶりが面白いです。ただし、演奏はうまいですね。そこが肝心。ではしつこいついでに、最後です。1番シンプルに。


このマリエ・ディグビーは、日本人の母をもつアメリカ人。このビデオは、実は彼女自身のyou tube への投稿で、ここから火がついて、このカバーをレコーディングすることになったようです。

カバーって、その曲にちがう光が当たる限りにおいては、とても面白いですね。そして、オレにカバーさせろ! というみなさんは、you tube に投稿する手があります。もしかしたら、声がかかるかも!

というわけで、日曜のひと時、カバー曲の楽しみ、でした。(さ、校正しなくちゃ!)

2008年7月5日土曜日

白水社と


白水社、という出版社をご存知でしょうか? いわゆる「フランス」関連の出版社としては、1番大きいのかもしれません。わたしの場合、この白水社には、ひとかたならぬお世話になっています。初めて作った教科書こそ違う出版社でしたが、そのあとはほぼずっと、白水チルドレンとなっています。

昨日の昼休み、その白水社の営業のFさんが、わざわざ大学まで挨拶にきてくれました。(もちろん、わたしだけのところに、というわけではなく、色々な先生たちに、ということですが。)Fさんは、そろそろ不惑を迎える男性で、とても頼りになる営業担当です。忘れられないのは数年前、東京のかなり奥から、会社の近くに引越ししたときのFさんのセリフです。

「やっとこれで、心置きなく残業できます!」

Fさん、これからもよろしくお願いします!

ところで白水社には、たくさんの知り合いがいます。どこかわたしの父親に風貌が似ているOさん、仕事は5時きっかりにやめ、すぐさま飲みにかかるものの、ヒット作の絶えないKenちゃん、TVチャンピオン激辛選手権準優勝のワッキー、新旧の雑誌「ふらんす」担当の女性たち、かつて徹夜で校正に付き合ってくれたミドリさん、歳が同じHさん、宣伝のK君…… そしてその中で、1番付き合った時間が長いのが、編集のスーヤンです。

スーヤンと初めて仕事したのは、10年ほど前のある教科書でした。そしてその次が、その後に大きく影響することになった『フラ語動詞、こんなにわかっていいかしら?』。実はこの企画、もともとスーヤンが持ってきてくれたものなのです。

「いやあ、知り合いの知り合いの彼女がね、フランス語勉強し始めたんだけど、ど~しても読めないものがあるって言ってて、それが、動詞の活用形なんだって。フランス語はねえ、動詞の活用形が辞書に出てないから、最初はなかなか読めないんよねえ」

で、活用形から検索できて、しかも全部ルビがついてるっていう、そんな「動詞活用表」を本にしましょうよ、というのでした。で、どうせやるなら、動詞活用の全体像もつかまられて、覚え方のコツも紹介して…… と膨らんでできたのが、『フラ語動詞』だったのです。

でもスーヤンと酒を飲むと、ときどき、

「あの時は、まさか『フラ語シリーズ』がこんなに続くなんてねえ……」

と話すことがあります。実感です。

そのスーヤン、先日まで入院していて、ちょっと心配していたのですが、なんと今夜は、高円寺でライブをやっているはずです。(ボサノヴァです。)まあ一安心、というところです。

                  ◇

月曜日は、最後のCD収録があります。そう、9月号です。今その準備をしています!

2008年7月4日金曜日


今日昼ごはんの後、「総合文化教室資料室」という名の「憩いの場」でお茶を飲んでいるとき、火曜に合同ゼミをやった仲間のH先生が、ロン・ミュエクの作品集を見せてくれました。わたしが、かつてとても驚かされたのは、彼の「ボーイ」という作品(写真)。この「ボーイ」、もちろん作り物。ミュエクが作るものはいつも、大きすぎるか小さすぎる。そしてもちろん、それが面白い。どんなに精巧であっても、人間と等身大だったら、こんなインパクトはなかったでしょう。

その作品集をパラパラめくっていると、中に、制作風景を紹介する写真がありました。それを見てハッとしたのは、作品がどうしようもなく「手作り」だったから。なんというか、まず人物の形を、輪切りにした木を串刺しにして作り、そこに板を張り、それから粘土を塗りつけてゆく。仕上げの加工を除けば、それは正真正銘「手作り」なのでした。

で、その2時間後……

わたしは30人ほどの会議に出ていました。その中で、ある機械工学の先生が、やや苦笑交じりに話し始めました。

「わたしたちは、要はモノ作りを教えてるわけだし、学生たちもモノ作りが好きできてるはずなんです。でもね、最近は、時計を壊したこともない、粘土もあまり捏ねたことがないって学生が、結構いるんですよ。だからね、1年の最初に、手でモノを作る感覚を教えなきゃならないんです。粘土から始めるんです!」

おお、ここにもミュエクの仲間が! やっぱり、手を使うのは大事なんですね。美しいノーガキもいいけれど、手を使って、現実を(まさに)肌で感じることがないと、いい仕事なんてできないんですね。

朝起きたときには、考えもしなかった場面が重なり、「じっと手を見」た今日でした!

2008年7月3日木曜日

月は死んだ


歌、といえば、若き友人のブログで紹介されていたこの歌、また受け売りでここでも紹介しちゃいます。(受け売り、いいな~。)タイトルは、「月は死んだ」。



(サビ)
Pleurez Pierrots, poètes et chats noirs,
La Lune est morte, la Lune est morte.
Pleurez Pierrots, poètes et chats noirs,
La Lune est morte ce soir...

泣きたまえ、ピエロよ詩人よ黒猫よ
月は死んだ。死んでしまった
泣くがよい、ピエロよ詩人よ黒猫よ
今宵月は死んでしまった

というわけで、訳も彼のブログからいただきました。(Merci, Daichan !)
*図像は、最も初期のフランス映画監督の1人、ジュルジュ・メリエスの『月世界旅行』より。『死ぬまでに観たい1001本』という本には、このDVDが付録に付いてます。

                  ◇

「まいにちフランス語」7月号も、おかげさまで、売れ行き好調だという知らせがありました。ほんとにありがたいことです。やっぱり、ラジオのようなメディアを使わせてもらえるからには、なるべくたくさんの人に「届く」ものにしたい、と思っていたので。1課4ページにしてもらったのも、そのへんが理由です。
                                              で、以前放送でも言いましたが、練習問題は、レナさんの苦心の作です。木~日には、どうぞこちらを楽しんでください。分かっているつもりでも、やってみると、案外間違えちゃうっていうのは、人類共通の経験ですね? そして来週も、数字の聞き取りが待っています。練習問題が終わったら、ぜひこちらも!(たとえば、厚い本を用意して、適当に開く。で、そのページをフランス語で言う! こんな練習もアリですね?)ではまた明日!

2008年7月2日水曜日

うまく言えない


昨日の合同ゼミ発表会は、なかなか楽しいものでした。「写真」と「ドキュメンタリー」ゼミの作品を見て、それぞれのゼミの雰囲気や方向が感じられたし、なにより学生たちが、友達はこんなゼミやってたんだ、という感じで、ある種の(ふだんのおしゃべりとはちがう)交流を果たせたのが、よかったなあと思うわけです。

今年の「ドキュメンタリー」作品は、「学食シリーズⅡ」として、昼食時の1番込む時間、うどんを食べるなら「学食」と「めん処」とどっちが早い? をテーマにしていた。マドンナのLove Profusion(♪あまりに多い選択肢)がSlowly(♪時はあまりにゆっくり流れる)に代わってゆくオープニングから、行列には「旅」の歌が重ねられる。楽しい作品でした。ここには、わたしのフランス語の授業に出ている学生もいて、なんだか違う授業で会うのって、面白い感じがするものです。

「写真」のテーマは「うまく言えない」。色んな写真があったけれど、中に、ああこの子は表現したいんだな、と感じさせるものもありました。ただ本人も、何を表現したいのか、まだはっきりは分からない感じ。でも、表現したい、という気持ちはあって…… どんどん迷って、どんどん大きくなって欲しいです!

この「うまく言えない」で思い出したことが、1つ。知り合いのデザイナー(主にブック・デザイン。企画本を出すことも。仕事は順調。30台後半。でも見た目は20台。独身女性。猫3匹と暮らす。)は、今ある男性と付き合いかかっています。この「かかっている」ところが問題。彼女は彼が大好きで、とっても付き合いたい。でも、彼はすごく忙しくて、奥さんとの離婚問題でもゴタゴタしてる。だから、とても自分からデートしようなんて言えないので、彼が誘ってくれるのを待って、待って、でやっと誘われたときの返事のメールが、

「『OK. じゃ、明日。』になっちゃうの。そっけないでしょ? でもほんとはね、この10倍くらい打って、ああでもこんなこと言うとウザイかも。これも直接言えばいいし、これじゃ都合のいい女だと思われるし……って削っていくと、いつもこれしか残らないの……」

うまく言えないにもホドがある! でも、学生たちにこの話をすると、どうもかなり共感が広がる風情なんですよねえ。おお、こんなに「うまく言えない」人が多いとは! まあもちろん、わたしもよく分かるので、この話が印象に残っているんですけど。

                  ◇

さて、今日のレナさんの歌、いかがでしたか? 可愛かったですよね? 今日のような、フランス人ならみんな知ってるけど、なかなかメディアには登場しない、というような歌を紹介してゆくつもりです。これからしばらく、毎週水曜はこのコーナーを続けます。どうぞ楽しんでください!

2008年7月1日火曜日

エクレア


1日の収録数は、最初の頃は6課でした。でもこのごろではもう、初めから5課分取ればいっか! というきわめてなごやかな(?)雰囲気なので、気楽にできます。与えられているのは4時間。1課分多いか少ないかは、だいぶちがうんです。で昨日も、まだ1課しか取ってないのに、シゲピョンは

「もう休憩しはる~?」

せーへん! まだ始まったばかりやで! でも、2課めが終わると、わたしの前に座っている若き女性が、

「Bon, on fait une pause !  休憩しましょう!」

と言ったかと思うと、もうさっさとブースから出て行っていまいます。でわたしも、休憩に入るわけです、仕方なく(でもないか?)。

昨日はちょうどその休憩真っ最中に、このブログではお馴染みの、NHKを夫にしている女、美人ディレクターのアヤちゃんがやってきました。

「なんだか、いつも休憩してません?」

ドキッ! シゲピョンとレナさんはなぜかちょっと伏し目がち(でもないか?)。でも実はアヤちゃんは、エクレア(éclair 。「雷」の意味もあり)の差し入れを持ってきてくれたのでした。エライ! これでシゲピョンの京都土産の和菓子と合わせて、今日のおやつは豪華版です!

それからは女3人で、カナダ・ケベックの紅葉は1週間だが素晴らしいとか、ケベックに限らず、フランス語圏の情報をもっと「テレビ・フランス語」のほうで取り上げたらいいんじゃないかとか、なんならフランス家庭版「隣りの晩ごはん」やったら面白そうとか、世の中は占いとスイーツでできているとか、大いに盛り上がりました。(わたしは大人しく聞いていました、comme d'habitude ! いつものように!)

アヤちゃんは、実は大学での第2外国語は中国語で、その勉強に中国に留学もしていたという才媛です。そんなアヤちゃんは、かつて山梨放送局にいらしたのですが、そこでブドウの、ブドウ菓子の、ブドウ農家の1年を取材し、ついにワインつながりでボルドー&ブルゴーニュにまで取材に出かけ、あるとき唐突に、このフランス語セクションへの移動命令が下った、のでした。

「じゃあそのあたりから、NHKとの結婚生活は濃くなったわけですね?」

そのときアヤちゃんの目に光ったのは、涙ではなかったはずです。ああ、アヤちゃんよ、どこへゆく! 

さて、昨日今日の放送での、数字の聞き取り、できましたか? これからだんだん数字が大きくなります。そしてそれが終わって8月になると……、今度は「フランス語で足し算」をやって頂きます! 

                 ◇

お問い合わせがあったので、一応ここでも答えておきますね。My Way の原曲である、Comme d'habitude をお探しとのこと。歌手は、Claude François 。画像はこちら。


それにしても、you tube の便利さにはあきれます。(どなたか、もしお持ちだったら、「東京行進曲」アップしてください!)

秒針とスピーカー


今日は収録の日でした。いつも通り、のんびりした感じで、楽しく収録できました。

今日はちょっとだけ早くスタジオに着いたので、技術の方とだべってました。2人で、スタジオの隅にあるモニターで、連ドラ「瞳」を眺めながら。で、ふと気づきました、テレビ画面の時刻が変わる瞬間、スタジオの丸時計の赤い秒針も、きっちり12のところを通過することに。

「いや、このスタジオだけじゃないですよ」と、感じのいい技術さんは言いました。「すべてのスタジオの時計は、毎日、合わせるんです」
「毎日?」
「毎日。ここもそうですけど、ナマでも使うスタジオは、特に」

考えてみれば、もし3秒も狂っていたら、それはまずいでしょうね。でも、毎日合わせても、そんなに狂ってない気もしますけど。それから話は、中型冷蔵庫ほどもあるスピーカーのことに。

「わたしもね、家ではダイヤトーンなんですよ。もちろん、ず~っと小さいけど」
「どのスタジオも、このダイヤトーンなんですよ。でもこのごろは、別の会社のに換わりつつあって…… なんだか、ダイヤトーンの音に慣れてるから、音によっては、ちょっと薄い感じがすることもありますね」

どの道の人でも、「プロ」とだべるのは楽しいですね。こちらが思いもしないことを発見させてくれるから。

さて、そうこうするうち、いつものメンバーが到着。で、続きはまた明日!