2008年9月30日火曜日

ワカモノよ!


というわけで今日からゼミ再開。「フランス映画ゼミ」の第1回は、90分で駆け抜けるフランス映画史、という感じで、まあごく大雑把な流れを紹介しました。

ただ「フランス映画」といっても、たとえば「アメリカ映画」の話をまったくしないというわけにもいかないし、イタリアのネオ・リアリズモだって、カンフーだって無関係じゃないわけなので、やや大風呂敷目に話しました。(まあね、「考える種」になりそうなことは、直接関係なくても話しちゃいますけど。)

で、フランス映画の歴史をサクッと知りたいとご希望? それならこれ、『フランス映画史の誘惑』(集英社新書)です。この本、とっても分かりやすいです。これを読んでから、めぼしい映画を30本も見れば、一応「フランス映画」というものが、あるパースペクティブをもって見通せると思います。

今日の学生の一人が、映画研究会所属でした。(実はわたしも、高校時代入ってました。)で彼女に言ったのですが、今の時代は、ビデオ屋さんもあって、昔の作品にアクセスするのはとっても手軽。でもそれは、「その映画は見てない」とは言いにくい、ということでもあるんですよね。

ワカモノよ、もしある日自分の見てない映画が話題になったら、帰り道にビデオやに寄り、その映画を借り、晩ご飯がすんだら即見てしまいましょう。そうすれば、今度それが話題になったときは、リアルに自分の感想を、誰かのそれと比べられます。楽しいです! がんばれ、ワカモノ!(もちろん、心のワカモノも!)

2008年9月29日月曜日

明大前へ


今日の夜11時からの「英語でしゃべらナイト」は、われらが美人ディレクター・アヤちゃんの、「まいにちフランス語」から移籍後の(初?)仕事です。ぜひ見ましょうね! 和田アキ子さん、奮闘するようです。

                  ◇

東京は一日しとしと降って、しかもかなり寒かったですね。もう冬に向かっているのが感じられます。

でこんな日は、一日家にいると元気が出ないので、あえて出かけました、明大前にある和泉校舎に。

明治大学のキャンパスは3つあって、まず理工学部のある生田(と、トップにもってきました、いつも最後なので!)、それから御茶ノ水の駿河台校舎、そして明大前のというわけです。

例の図書館検索をしたところ、探していた本が和泉校舎の図書館にあったのですが、どうもそれは稀少本らしく、「貸し出し不可」とのこと。で仕方なく、はるばる見に行ってきたというわけです。

明治の教員でありながら、実は和泉校舎を訪ねるのは初めてでした。駅からは近いんですが、今日は雨が降っていたので、甲州街道にかかる歩道橋は大混雑! でもまあみんな大人しく並んで、いい子でした。

予め連絡しておいたので、図書館の方が本を用意してくださっていました。Merci ! でついでに、昨日のことをお話しました、『異邦人』は、保存庫に入れたほうがいいんじゃないかしら、ということですね。そしてどうやら、その方向で調べてくれることになりました。貴重な本なので、そうなって欲しいと思います。

ちなみに今日見てきた本は、森山啓の『潮流』という詩集です。彼はプロレタリア系の詩人なんですが、この詩集自体は、すごくデキがいいというほどでもない気がしました。もちろんそれなりに面白かったですけど。ちゃんと汚さず返してきました!

さて、明日はゼミの初日、なんですが、なんと、「東京詩」のゼミは登録者がZÉRO ! で自動的に開講中止です。楽、というか、つまらない、というか…… (でもほんとは、この授業はやりたかったので、残念です!)

とりあえず、今週もはりきっていきましょう! 雨ニモマケズ!

2008年9月28日日曜日

びっくり!


ええ、ほんとに~!? ということが、目の前で起きました。

これはまったく無名な詩人で、植村諦(うえむら・たい)という人がいます。生まれは1903 です。

彼の代表的詩集に『異邦人』があります。これは 1932 に出てますから、フランスのアレより前ですね。植村はいわゆるプロレタリア派、というかアナーキストに近い人で、彼にとって昭和初期を生きることは、まさに「異邦人」として生きることだったようです。で……

復刻版でもあるかなあ、と思って明治の図書館を検索したところ、おや、本物が収蔵されています。ラッキー! さっそく配送をお願いして、先週届きました。で、読もうとしたのですが、

まず驚いたのは、本の扉に、著者自筆の献辞が書いてあったことです。

祖国なきよろこびと悲しみと  諦
豊島与志雄様

おお、あの岩波の『レ・ミゼラブル』の訳者、豊島与志雄宛だ! でもなぜこんな本が明治の図書館に?

でまあ、とりあえず通読。うん、これはなかなかいい。政治的過ぎず、純真な怒りも。なるほどねえ。

で今度は、ちょっと「植村諦」で検索してみると……

おや、豊島与志雄関連の項目が1番上に来てる。どれどれ。

見るとそれは、今読んだばかりの『異邦人』の書評でした。ちょうどいい! で読んでいくと……

植村君はその詩集の扉に、「祖国なきよろこびと悲しみと」と私に書いてよこした……

私に? それってもしかして…… この本のこと? 今目の前にある??

いやあ、驚きました。本当に本物です!(画像。さっき撮影。)

こんな貴重本、貸し出しちゃっていいんでしょうか? 保存庫に入れることをお勧めします、図書館様!

2008年9月27日土曜日

折って、折って


『ハートにビビッとフランス語』、印刷所からの細かい質問も来なくなり、ついに印刷が始まる気配です。

そういえば、出張校正というのも、何回か経験しました。フツーの校正が終わった後、最終の最終確認をしに、刷る直前のもの(「青焼き」といったり「白焼き」と言ったり。ちょっと違うのかな?)をチェックしにいくわけです。郵送したりしてる時間がないので、印刷所に行って、その場で何時間か見てくるわけです。

そういうときはたいてい、「あんまり直さないでくださいね~」と言われます。もちろん、なるべく直さないようにします。1行増やすなんて、ダメダメです。

中でも特に困るのが、索引です。これは1箇所直すと、どこまでもどこまでも波紋が広がり、そうなると、今度は何かの弾みで新たな誤植が生まれやすくなります。どうしても索引を直さなきゃならないときは、とにかく行が増えたり減ったりしないようにします。

場合によっては、さらに工場まで行き、試し刷りを見て色を調整したりもします。見本のときとは、びみょ~~に違う場合など、その場で直してもらうわけです。

印刷された紙は、かなり大きいものです。それを折って、折って、折ると、あ~らフシギ、16ページ分になりました。というわけでほとんどの本は、16の倍数のページ数です。(この16ページは、「ひと折り」と言います。)

でその紙は、今度は製本所に送られます。そこで折って、切って、閉じるんですね。

本ができてゆく過程は、決してブラック・ボックスではありません。そんなところも、本の可愛さの一つですね。

見本誌ができるのは10月6日です。楽しみなような、怖いような…… そんな感じです!

2008年9月26日金曜日

ボルネオ

今日は、ボルネオから戻られたヒフミ先生(中国語)の土産話を受け売りしましょう。


マレーシアはイスラムが強くて、基本禁酒ではあるんですが、中国系のレストランなどに行くと、お酒がおいてあるのがフツーだそうです。ただしボルネオはもう少しゆるいらしく、わりとどこでも買えるのですが、やっぱり中国系の方々の店で買うと安いんだそうです。

で、ちょっとそれらしいところに行くと、もう野生の天狗猿なんか樹の上のほうにたくさんいるし、奥の方にはオランウータンも。

オランウータンは、なんというか、綱渡りみたいなことをするイメージですが、ボルネオの森の中では、空間を歩いているような感じなんだそうです。枝が入り組んでいて、もう3次元的に絡み合っているんでしょう。オラン君は、その3次元空間をゆうゆうと歩いてゆく……

それから急に熱が出て駆け込んだ「赤新月社」(「赤十字」じゃなく)のお医者さんたちの、親切で手際のよかったこと! ともおっしゃってました。

ボルネオかあ…… 行く機会があるかどうか分からないけれど、ヒフミ先生は、「ぜひ行ってください!」 とのことでした。

ついでに言うと、ヒフミ先生は、中国語の本を何冊も書かれています。現地でフツーに売ってる本です。すごいですねえ! 

2008年9月25日木曜日

日仏で


始まりました、授業が! こんなに人がいたっけ? というくらい、キャンパスが賑やかです。夏休みとはちがいますね。(当たり前)

今日は研究室で、ある2年生に会いました。彼はこの前の春、日仏学院の講習で、レナさんとも知り合いになりました。彼が夏休み中に日仏に顔を出したときも、レナさんに会えたそうです。で、彼の友だちや、友だちのクラスのみなさん(大学生)も、ラジオを聞いてくれたそうです。Merci !

でもほんとに、わたしも学生の頃、レナさんに習いたかった! というか、もっとちゃんと勉強しとけばよかった! と、これはまあ誰でも思うみたいですねえ。Moi aussi !

そういえばわたしも昔、日仏に通ったことがあります。たしかシュルレアリスムのテキストを読む授業でした。それからそのだいぶ後、日仏の通信教育部の採点をしていたこともあります。そのせつは、キタナイ字で申し訳ありませんでした! 

ちなみに日仏学院は、カフェやレストランや本屋さんもあって、これは誰でも利用できます。

さて、明日は1時間目からです。ちゃんと起きられるか!?

2008年9月24日水曜日

Je suis menteur !


今日は家にいて、「新宿」のことを調べてました。前にもちょっと書きましたが、1929年(昭和4)に発表された「東京行進曲」、その「四」番の歌詞の背景が知りたいなあ、と思ったからです。

四 シネマ見ましょか お茶のみましょか
  いっそ小田急で 逃げましょか
  変わる新宿 あの武蔵野の
  月もデパート 屋根に照る

この中の「シネマ」、「お茶」、「デパート」が、実際は何を指しているのか、それを問題に設定してみました。

「シネマ」。これはほぼ間違いなく「武蔵野館」のようです。武蔵野館は1920に、今三越がある場所にできました。で28年に今の場所に移ってるのですが、洋画専門館として、ハイカラな人気があったようです。

「お茶」。これは確実とはいえませんが、おそらく「中村屋」です。中村屋は、1901に本郷でパン屋としてスタート。1907に新宿3丁目に支店を出し、09年に今の場所に。で、1915からは例のインド独立の闘志ボースを匿い、彼に教えてもらったカレーを出すのが1927。そしてそのために始めたのが、中村屋喫茶部だったようなのです。タイミングは、ぴったりですね。(ボース? 『中村屋のボース』(白水社)を!)

「デパート」。これはおもしろかったです。結論は3軒。三越(今のアルタの場所)、ほてい屋(画像。今の伊勢丹の場所)、新宿松屋、です。

三越は、1925に新宿駅が東口に移動するのに合わせ、アルタのところに分店を開業。(1930には、今の場所に。)ほてい屋は、大きくて立派な建物。(ただし1933には隣りに伊勢丹が建ち、2年後には吸収されます。)新宿松屋は、今の3丁目交差点から、ちょっと四谷方向に行った丸井側。実はこれ、京王線新宿駅の駅ビルだったんです。

? と思いましたよね。そうなんです、当時京王線は、こんなことろまで来てたんです! ただ松屋は、数年で撤退してしまいますが。

というわけです。なんだか、おもしろいですね? 新宿は、わたしにとては、1番なじみの都会です。でも、歌は知っていても、やっぱり調べてみないことには、往時の風景はよみがえってこないんですね。

           ◇

でなんと、明日から大学の後期の授業が始まります。うれしいなあ!(Menteur !)

2008年9月23日火曜日

J. ニコルソン


一昨日の夜遅く、ビデオ屋さんで借りてあった『ザ・ディパーテッド』という映画を見ました。(The departed =出発した人たち=死者。このカタカナ・タイトル、どうでしょうねえ……)

監督はマーティン・スコセッシ、主演はディカプリオ、マット・デイモン、ジャック・ニコルソンの3人。2年前の作品ですけど、オスカー作品なので、ご覧になった方も多いでしょう。

2時間以上あるんですけど、結論を言えば、あきないです。複数のサスペンス(宙吊り状態)をうまく連鎖させて、あっと言う間。ただちょっと「    」過ぎって感じはありますけど。(「 」内には、ネタバレな言葉が入りますので、ブランクです。)

ギャンググループに入った覆面捜査官と、警察内部にいるギャングのスパイ、この2人のそれぞれを中心とする2つの円が、やがて否応なく重なってゆく、というお話。明らかにもっと膨らますことができそうなエピソードも、湯水のごとく使っていきます。まあ、ぜいたくと言えばぜいたく、急ぎ足と言えば急ぎ足です。

もちろん、行動の背景には、さっきの2人、ギャングのボス、セラピストの女性、など、それぞれの美学の対立ということもあります。

ジャック・ニコルソンの映画はたくさん見ましたが、最近のものでは、『アバウト・シュミット』が好きでした。これは原作の小説もよかったので、映画を楽しみにしていたんですが、裏切られませんでした。

ああ、またヘンなこと思い出しました。ニコルソンの親友のロバート・エヴァンスという映画プロデューサーの書いた、『くたばれ! ハリウッド』という本があります。このエヴァンスという人は、『ある愛の詩』や『ゴッドファーザー』のプロデューサーとして知られている人です。(たしか彼をモデルにした映画も見た気がします。)その本を読むと、映画作りの大変さ、生臭さ、いやさしさ、などが、もろに伝わってきます。『ゴッドファーザーⅠ』の有名な最後の10数分の編集をしたのは、実はコッポラじゃないんだ、とか。もし『ゴッドファーザー』がお好きでしたら、おもしろい本です。

さあ、授業が始まる前に、あとなに見ようかな?(先週の『タクシー4』は、わたしにはハズレだったし……)

2008年9月22日月曜日

あの時SFジャイアンツ


大リーグ、お好きですか? 今年はなんだか忙しくて、なかなか見る時間がなかったんですが、数年前はよく見ました。やっぱり、松井がヤンキースに入って、テレビ中継が飛躍的に増えたのが大きかったですね。

で今日は、ヤンキースタジアムの最終試合でした。ああ、1度行っておけばよかったなあ…… あそこで見たかったです。きっと、アメリカの野球の歴史に参加してる気がしたでしょうねえ。まあ、ファー・イーストにいても、参加してはいるんですけど。

そういえば昔、東京球場っていうのがありました。(もうありませんけど。)子供の頃、そこに1度だけ連れて行ってもらったことがあります。忘れもしない、サンフランシスコ・ジャイアンツVS.読売ジャイアンツ、でした。ピッチャーは豪腕マリシャル(画像)。足を高~~く上げるのが特徴でした。

そうそう、その時、子供はSFジャイアンツの帽子がもらえたんです。黒地に、オレンジの糸で、SFと刺繍してありました。これはね、ちょっとした宝物でした。当時は、MLBのグッズなんて、なかなか売ってませんでしたから。ましてやSFジャイアンツとなると…… 

だからその頃の写真を見ると、必ずといっていいほど、その帽子を深く被っています。お調子者というか、バカというか、三つ子の魂というか……

というわけで今日は、ヤンキースタジアム最終戦を見て、何十年かぶりで、あの帽子のことを思い出しました。Everything reminds me of something...  歳取ると、何を見ても何かを思い出しちゃうんですね。(ああ、歳かなあ!)

2008年9月21日日曜日

世界の言語入門


日曜でした、が、やはり予想通り、一日中校正するはめになりました、日曜日なのに!

でももう、さっきコンビにから送り出し(バンザイ!)、一応わたしの役目は終わりました。(レナさんに電話したら、彼女は今日授業がたくさんあって、今やってるところ、とのことでした。終わらなかったら、明日届けます! ですって。Bon courage, Léna !)

               ◇
                                               ここでも何度か登場頂いた、「まいにちロシア語」の黒田先生が、講談社現代新書から『世界の言語入門』という本を出されました。う~ん、『世界の!』『言語入門!』です。これ書ける日本人は、黒田さん以外にいないでしょう。なにしろたった一人で(つまり誰かと分担するんじゃなく)、世界90の言語についてお話してくれています。

ただしこの本、決して難しい本じゃありません。へえ、こんな言葉があるんだ! という発見に満ちたエッセイです。気軽に読めて、世界が広がる。しかも、ここを読みに来てくださるマイナー言語理解者であるあなたなら、きっと共感できる哲学付き! これはお勧めします!(720円ぽっきり!)

さあ、わたしの日曜はこれからです。残り少ないです!(涙)くそー、ムリヤリ映画でも見よう!

2008年9月20日土曜日

勇敢な、一人


今日は、昨日の天気予報がいい方に外れ、わりと過ごしやすい天候でした。 土曜日だし、いい1日を過ごされたことでしょう。わたしは……

朝の9時に来た宅急便が、今日1日の予定をあっさり決めてくれました。一昨日報告した本の、最終ゲラが送られてきたのです、256ページ分! それを全部チェックして、明日の夜には発送しなければなりません。完全に、土日がつぶれました!(でもまあ、宅急便のおかげで、夜9時ごろまでにコンビニに行けば、翌朝午前には着くんですよね。助かります!)

                 ◇

そういえば一昨日、『ブレイブ・ワン』というアメリカ映画を見ました。主演はジョディ・フォスター。彼女と恋人がヴァイオレントな事件に巻き込まれ、恋人は酷い殺され方をします。その結果彼女が、自分の中にもう一人の自分、「勇敢な一人」を発見する、というお話です。もちろん、勇敢な彼女は、行動します。あるいは、行動しすぎる、と言うほうがいいのか…… 彼女は言います、「わたしがあんなことするなんて……」

相手役の刑事はテレンス・ハワード。あのオスカーの『クラッシュ』で映画プロデューサー役だった人です。ちょっといいですね、存在感があって、甘くて。

で監督は、あのニール・ジョーダン。『クライング・ゲーム』は、もうずいぶん前ですねえ。あの頃に比べると、画面が引き締まっている感じがします。もちろん、カメラマンの力も大きいに違いないですが。

でトータルとしては、なかなかよかったです。ハムラビ法典の時代からあるテーマを、現代NYに持ってきたわけですが、NYには、幸か不幸か、似合います。(ローレンス・ブロックのマット・スカダー・シリーズも、NY以外では成立しない物語でしょう。)

だいぶ違うけど、ちょっとだけ似てるのは…… レナさんは昔、ほんとにオットリしたマドムワゼルだったんだそうです。(本人語る。)でもそれが、フランスで予備学級&大学校(大学院レベルです)を過ごして日本に戻ったら、家族にも友達にも驚かれたんだそうです、強くなってて!

フランスでの生活は「戦い」だったから、とレナさんは言います、日本とは比較にならないくらい、フランス生活は「戦い」なんですよ! と。もちろん、日本にはない魅力もありますよ。でも、「戦い」なのは事実……

その結果レナさんは、自分の中の「勇敢な一人」に出会ったのですね。もちろんフランスまで行かなくたって、たとえば仕事でも、たとえば子育てでも、そういう出会いがやってくる可能性は十分ありますね。場合によっては、困難の多い恋愛とかも!?

でいったんそうなると、あああの頃の自分はナイーヴで、可愛かったなあ、と思うかもしれませんが、だからって昔に戻ってもしょうがないですね。ピーター・パンじゃないんだから!

みなさんの中にも、ブレイブ・ワン、いるんでしょうか?
※予告編は「ムービー」を cliquez, svp.

遠きにありて……


台風でこんな天気ですが、みなさんいかがおすごしでしょうか? 

今日は夕方から、新宿のジュンク堂に行ってきました。「トークイベント・細川周平~管啓次郎」を聞くためです。

メインは、細川さんが最近出版された『遠きにありてつくるもの 日系ブラジル人の思い・ことば・芸能』という本。この分厚い本は、細川さんの移民研究の集大成。膨大なフィールドワークと思考の結晶です。

「郷愁というのは、生き物みたい。たとえば、わたしは郷愁なんて関係ないわ、と言っていた女性が、たとえば身内の病気などがきっかけとなって、突如郷愁にかられる、なんてことが起きるんですね。なんだか、あの映画のエイリアンみたい、郷愁って。自分じゃどうしようもないことってあるけど、郷愁もそのひとつ」
「ブラジルという異国にいて、日本語しか話せないっていうのは、ひとつの負い目になりうるのね。でもそれが、短歌とか川柳みたいな<型>を使う日本語と親しむうち、その負い目が誇りに転化するってことがある」

なるほどねえ。そういうことってあるんでしょうね。ある気がします。

ところでこの「遠きにありて……」って、何日か前にここで話題にした室生犀星でしたね。この詩は、故郷に帰らない決意表明なんだ、と書きました。だから故郷は、もう帰らない、思うだけの場所=存在しない場所、なのだと。

ブラジル移民にとって、それは「つくる」ものだった。犀星が東京でただ「思って」いたのとはちがって、かれらはそこに「つくって」しまった。この違い、面白いですねえ。もちろんそこには、言葉の問題が深く関わってくるのでしょう。

いやまあ、それにしてもこういう話を聞くと、自分が何も知らないのに今さらながら驚きます。細川さん、管さん、ありがとうございました!

2008年9月18日木曜日

全面広告(デゾレ!)


今日は18日、「まいにちフランス語」の10月号の発売日ですね。実はそこに、レナさんが書いた「ジャガイモ」についての文章が出ています。なかなか面白いですよ。ぜひ読んでみてください!

で、その記事の最後に、細かい字で書いてあるのは……

ご好評いただいた「ナミのおいしいフランス語」が、装いも新たに再登場します!

『NHK CDブック ラジオまいにちフランス語 
   ハートにビビッとフランス語 清岡&レナ式初級講座』

そうなんです、この前の3連休を見事につぶしてくれたのは、この本のゲラでした。やっと校正も(一応)終わり、一安心したところです。(タイトルは、編集長が付けてくれました。)

この本(1900円です)の最大の売りは、やっぱり CD です。目一杯、78分近く入れてあります。オープニングとエンディングの音楽もやめて! しかもその2箇所には、レナさんの歌が入りました。(放送で歌った歌です。どれでしょう?) 可愛いですよ! ほんとはもっと入れたかったんですけど、収録時間が一杯で…… ちなみにスキットも新録音で、今度はレナさんも出演しています。

それから練習問題。これはレナさんが、あらゆる隙間を埋め尽くす感じで、増量しました。やりごたえあります!

よろしければ、可愛がってくださいませ。(10月中旬発売予定です。)

2008年9月17日水曜日

お疲れ様!


みなさん、お疲れ様でした! おかげさまで、「まいにちフランス語・ナミのおいしいパリ日記」、完結の日を迎えることができました。まあ何と言っても、ラジオ講座のようなものは、聞いてくださる人がいなければ、これは存在してないに等しいですから、今日までお付き合い頂いたみなさんのおかげで、なんとか番組として成立しました。ほんとうに、Merci mille fois !

で……

いかがですか、オベンキョーの具合は? 最後の3週くらいは、難しかったですね。特に最後の、目的語代名詞と複合過去を同時に、っていうのは、かなり難です。(ただ実際のフランス語では、フツーに出てきます。)

これ、前もちょっと書いた気がしますが、目的語代名詞というのは、フランス語の考え方の根幹に触れています。(ちょっと大げさ!)9月号のテキストの12&20ページ、難しいですが、みなさんこの先に進むわけですから、ちょっと気合入れて読んで欲しいところです。代名動詞の考え方も、中性代名詞 y の考え方も、大いにこれと関係があります。

そうそう、フランス語文法の範囲で言うと、みなさんは55%くらい終わった感じです。この後は、今上に挙げたもの以外では、関係詞があり、それから半過去、大過去、という過去時制、単純未来という未来時制、それから英語の分詞構文に当たるジェロンディフ、仮定法に当たる条件法、などがあります。(英語にはない接続法というのもあります。実は、主な「法」は3つあるんです。え? 「法」ですか? これは、どんなつもりで話してるか、その「つもり」のことです。事実を事実として話す気持ち、とかね。)

なんだかいっぺんに書いたので、コミイッテル印象かもしれませんが、大丈夫、今日までがんばれたなら、この先もがんばれます! そう、10月からの藤田先生の講座は、もともと20分だったものが5分短縮されちゃうんですが、それでも、とにかく接続法までカバーしています。

藤田先生のお作りになった教科書は、実はどれもとても評判がいいんです。今、フランス語の教科書を作らせたら、日本一かもしれません。で、その藤田先生のテキスト&講座なので、期待できますね!

ほんとうはレナさんもわたしも、接続法までやりたかったんです。でも…… 週3回×15分=18時間! これでは接続法まではムリです。で、今回は複合過去までとしたのでした。(でもみなさん、複合過去までできれば、か~な~りなことまでしゃべれるの、お気づきですよね?)

このまま後半の内容に進みたい、という場合は、やっぱり参考書が安上がりですね。もちろん、『フラ語入門』だけが、フランス語の参考書ってわけじゃありません!(そりゃあねえ)

で今日は、わたしのところにも「おつかれさま」メールがいくつか届きました。ありがたいことです。

ちなみに、来年度の後期、「ナミ」の再放送の可能性はあります。あるといいですね!(もうたくさん?)まあとにかく、今日はみなさん、お疲れ様でした。来週は…… 5日続けて「ナミ」再放送です!

2008年9月16日火曜日

The Man who Fell to Earth


というわけで、第71回目の放送が終了。残すところあと1回! みなさん、明日はどうぞハンカチのご用意を!(だから J'exagère ですって!)

今日は夕方、クルマで10数分のショッピング・モールに行きました。毎日使っている電動歯ブラシがフリーズしてしまったので、修理を頼みに行ったのです。実はこの歯ブラシ、なんと1万円以上もするんです! 春に、エッフェル塔から飛び降りるつもりで買ったのですが…… もうフリーズとは!

でも、ケーズ電気はナイス・カバーしてくれました。その場でちょっと動かしてみて、ああ、これじゃだめですね、と言ったかと思うと、ちょっと在庫見てきます、と走り出し、1分後には、じゃあこちらとお取替えします、となりました。おかげで今晩から使えます。よかった!

で、気をよくしたわたしは、ちょっとマックに。そこのマック、なんというか、駐車場に向かってものすごく開かれたテラスになっていて、しかも今日は、客がわたしを入れてたった3組! 夕暮れてゆく空を見ながら、爽やかな風に吹かれるという、プチ贅沢ができました。(100円で!)

で、こんな場面をどこかでみたような…… と考えていたら、そう、『地球に落ちてきた男』のラスト・シーンで、デヴィッド・ボウイが風に吹かれていたのを思い出しました。(画像)(ま、たしかにマックじゃないし、ケーズ電気も近くに映ってたりはしませんでしたが!)あの映画、好きでした。1番好きだった場面は、ネタバレになるので言えないんですが……

           ◇

さて、ではあしたの最終回、わたしも聞きます。レナさんもどこかで聞いているはずです。(今日の放送も聞いたって、さっきメールがきました。)聞き終わったら、握手しましょうね!(だから心で!)

2008年9月15日月曜日

天井パスタ


最終週の第1回、お聞きいただけましたか? レナさんの歌、なんというか、かわいいというか、微笑ましいというか、つい笑顔になってしまいますね。特に『あずさ二号』のほうは、一所懸命歌ってる感じが伝わってきて、ちょっとほろっとしちゃいました!(J'exagère !)
                                               でも、本人が言うには、日仏ではスパルタ先生なんだそうです。ほんとかなあ? あんなに天然で?

そういえば、レナさんから聞いた彼女のルームメイトだったイタリア人の女の子の話。やっぱりイタリア人の彼女は、主食がパスタ。とりあえず茹で始めちゃって、それから冷蔵庫を覗いて、なにか味の出そうなものを探す、って感じ。

で、問題はその茹で方で…… そろそろいいかなあ、となったら、とりあえず麺を1本、えいっ! と天井に投げつけ、はら~っと落ちてきたらOK。ペタッとくっついたら茹ですぎ、すぐに落ちてくるならまだもうちょっと、なんだそうです。

おもしろいですねえ。(でも、天井汚れないんでしょうか?)

ちなみにわたしが時々作るのが、ハマグリと大葉のパスタです。作り方は簡単。フツーににんにくと唐辛子をオリーヴ・オイルで加熱していって、そこにハマグリと白ワイン投入。フタをして蒸し焼き。でハマグリが開いたら、わたしは取り出してしまいます。もちろん入れたままでもいいんでしょうけど、そうすると貝が固くなります。(スープはおいしいでしょうが。)であとは茹でたパスタ(わたしはフェデリーニが好き)を入れて、塩、胡椒、細切りした大葉をまぶせばできあがり。盛り付けるとき、もちろんハマグリを戻します。

これ、新宿のパスタ屋さんのランチで食べて、気に入って家でトライしたら、案外簡単に同じような味になりました。ただわたしは、天井は使いませんけど!

複眼・個眼


今東京の多摩地区では、激しい雨が降っています。気持ちいいくらいの!

この前大学の図書館に行って、「保存庫」から本を出してもらっている間、なんとなく新着本コーナーをみていると、『数値でみる生物学』という本が目に入りました。大型の、3800円もする本です。

パラパラ見てみると、紙面はとても地味。というか、なにやら細かいデータの数字が並んでいるだけ。でも、もう少しよく見ると……

ヒトの細胞数、1㏄あたり、6 000 000個。皮膚だけで、110 000 000 000個。脳のシナプス数、7 000 000 000 000。肺胞、850 000 000。唇の細胞寿命、14.7日。受精28日目の体重、0,02g...

カヤポ族(南米)では、血液型o型の比率が100%(!)、スー族(北米)91%、アイヌ人17%。

空間弁別閾、舌先 1.1 mm、背中 68mm、指先 23mm... これはほんとにごくごくごく1部。そもそもヒトだけじゃなく、動物、植物のページも長いんです。

数値じゃなく、そもそも表そのものに驚かされたのが、「主な節足動物の複眼中の個眼の数」というやつ。さて、このごろ見かけるようになったトンボなら……

28 000個だそうです。ちなみにミツバチ(女王)は 3900個。ミジンコは22個……

世の中には、色んな本がありますね!

              ◇

さて、「まいにちフランス語」は、ついにあと3日。なかなか Azusa numéro2 が出てこなくてすみません。まさか切ってないですよね、シゲピョン!?

2008年9月13日土曜日

Hilary Hahn


今は昔、このブログを始めて2日目に、NIGEL NORTH, Bach on the lute というCDのことを書きました。わたしが今までに、まちがいなく1番長い時間聞いたCDです。4枚組みで、バッハの無伴奏ヴァイオリン・ソナタを、リュートで演奏したものです。

この無伴奏ソナタは、色んな楽器で演奏されていて、そういうのもを聴くのはとても好きです。でももちろん、もともとのヴァイオリンもいいですね。

わたしがよく聴いたのは、シェリングと、クレーレルと、パールマンと、ハーンです。

シェリングは、なぜか中学生の頃から部屋にレコードがあり、当時は持っているレコードが少なかったので、しょうがなく(!)、このシェリング版を聞きました。懐かしいです。

クレーメルは、もうしばらく前から、ヴァイオリン界のエースですね。わたしは好きです。パールマンは、これはもうロマンチックで、たまには、いいです。

ヒラリー・ハーン。彼女はまだ20代。デビューのバッハ・アルバムの時、「バッハはわたしにとって特別」と言っているのを読んで、共感しました。たしかドイツ系のアメリカ人なのですが、 you tube には、たくさんの演奏風景に混じって、フランス語でのインタヴューもあります。ここでは「プロモ」風のものを挙げておきますね。


だまされたと思って、見てみてください。弾き始めた瞬間に、本物の匂いがします!

で、なぜ急にこんな話かというと、日本公演があるんですね、彼女の。で明日が、チケット発売日。緊張します!

2008年9月12日金曜日

本棚


書こう書こうと思いつつ今日になってしまったのですが……

私が今使わせてもらっている小さな研究室は、なかなか高い建物の5階にあります。ただこの建物、辛口の先生の中には「プレハブ」と呼んでいるかたもいるくらいで、もちろんホテルのようなものとは違います。(ほんとにプレハブなわけじゃありません!)

実はこの部屋、私の前に使っていたのは、堀江敏幸さんです。え、あの!? とお思いになりましたか? でもほんとにそうなんです。壁には、多分本棚でこすったと思われる小さな傷があり、床にも、やっぱり本棚があったとおぼしい跡がついています。ふだんは忘れていますが、ふとそうした「記憶」に目が留まることもあります。なんだか、フシギな気もします。

堀江さんは、文章がうまいのは今さら言うまでもないですが、おしゃべりもとっても上手です。もう10年以上前ですが、ある大学で毎週顔を合わせることがありました。で、しょちゅうおしゃべりをしてたんですが、話の引っ張り方、寄り道のさせ方、ずらしかた、そしてオチ、おそろしくうまいのです! 

で、数ある堀江さんの本のうち、『回送電車』というエッセイ集が、中公文庫になりました。648円+税。これで堀江さんの語りが楽しめるなんて、なんて安いんでしょう! フランス関係の話題ももちろんあります。読書の秋は目の前です!

2008年9月11日木曜日

群集


東京は人が多い、って言いますね。まあこの場合の「東京」は、渋谷や新宿を意識しているんでしょう。それならもちろん、人は多いと思います。

前期の「東京詩」のゼミでは、たくさん詩を書いてもらいましたが、その中に、新宿の人ごみをただ足元だけを見つめて歩く、という感じの作品がありました。上京して1ヶ月くらいで、まだちょっと戸惑いもあったのでしょう。

この前の打ち上げも場所が渋谷だったので、ちょっとそんな話になりました。

「まったく、なんでセンター街っていつもあんなに混んでるの!」
「傘なんか差してたら歩けやしないし!」

というわけです。が、実はわたしの意見は違います。わたしは人ごみが好きです。

「毎日じゃないからですよ、そんなお気楽なこと言えるのは」

まあね、そうかもしれませんが…… 

ではここで、強い味方を2人、呼んでみましょう。まずは、萩原朔太郎です。

私はいつも都会をもとめる
都会のにぎやかな群集の中に居ることをもとめる
群集はおほきな感情をもった浪のようなものだ
どこへでも流れてゆくひとつのさかんな意志と愛欲とのぐるうぷだ

同意!(と2チャンネル風) 二人目は、この朔太郎の心の師匠とも言うべき、ボードレールです。

群衆に沐浴(ゆあみ)するというのは、誰にでもできる業(わざ)ではない。群衆を楽しむことは一つの術(アール)である。

Il n'est pas donné à chacun de prendre un bain de multitude: jouir de la foule est un art...

言っておきますが、そういう技術がオレにはあるんだぜ、みたいなことが言いたいわけでは全然ないですよ。ただ、「群集」派のわたしとしては、大学生の頃このフランス語に出会って、おお、と思ったのはほんとですが。

朔太郎やボードレールがセンター街を歩いたら、なんて言うんでしょうねえ? みなさんはいかがですか? 人ごみは苦手ですか? 

2008年9月10日水曜日

変身


今日は久しぶりの「歌のお姉さん」でした。可愛かったですね! 曲は Une souris verte 。これは昔ここでも紹介した、


ここの左側の一覧から、選んで聞いていただけます。歌詞もそこにあるので、ここには書かなくていいですね? じゃあ代わりに、簡単に日本語を。

緑色のハツカネズミ
草の中を走ってた
ぼくは尻尾を捕まえて
あの人たちに見せるんだ
あの人たちはぼくに言う
そいつを油につけてごらん
それから水につけてごらん
あつあつのエスカルゴに変身さ

最後の行の fera というのは、faire の「単純未来形」というものです。(「単純未来」は、実はとても簡単です。)

放送でも話題になりましたが、この歌の一つのテーマは「変身」です。で……

みなさん、リュック・ベッソンの『ニキータ』、ご覧になりましたか? あの映画も、テーマの一つに「変身」を挙げることができます。なにしろ、殺人犯で、ほとんど獣みたいだったニキータが、厳しい訓練の結果秘密工作員に「変身」していく、というのが物語の骨格ですからね。

で、訓練の一つに、パソコン修行もあるのですが、ある日ニキータはその教官にプレゼントをします。教官は喜び小さな箱を開けますが、中から出てきたのは…… マウス。ただし、生きている方の。

そこで慌てふためく教官をからかうように、ニキータは歌いだすのです。Une souris verte...

そうそうもう一つ。教官のひとりボブが、訓練所内のニキータの部屋を訪れる場面。そこでニキータはテレビで映画を見ているんですが、実はそれ、ジャン・コクトーの『美女と野獣』(画像)、しかも最後のクライマックス・シーンなのです。

ベッソン監督、細かいところにも気を使ってますね。さすがです!

             ◇

昨日、おみやげのマカロンをいただきました。しかも Ladurée ラデュレの!(これ、マカロンがおいしくて有名な店です。)さすがにうまかったです。Merci !

2008年9月9日火曜日

あなた が?


今日歌謡曲の歌詞を眺めていて思い出したんですが……

「あなたを愛してる」は、べつにフツーですよね? でも、「あなたを好き」はどうですか? 違和感ありませんか? わたしはあります。やっぱりここは、「あなた好き」ですよね? これって、翻訳風日本語の影響なんでしょうけど、どうなんでしょう、若い世代は、OKなんでしょうか?

「あなたが好き」っていう時の「あなた」は、英語やフランス語で言えば「(直接)目的語」にあたります。中学校のころ、この「直接目的語」が出てきた時、日本語で「~を」になるもの、なんて説明された気もします。(もちろん今の中学では、「直接目的語」は出てこないのでしょうけど。)

もちろん、英語の先生方も、それが完璧な説明だなんて考えてはいなかったのは、想像に難くありません。この説明が不十分なのは、すぐに分かります。だって、「あなた好き」がフツーなんですから。いきなり like でチンボツです!

じゃあいったい、「直接目的語」を日本語にする場合、「を」と「が」はどう使い分ければいいんでしょう? これはむしろ、日本語の性質を考えてるわけなんですが……

で、昔、留学生に日本語を教えてる先生とこの話題になり、彼によると、「可能動詞系」は基本「が」だ、というのです。

どれどれ。え~と、「~が読める」「~が聞える」「~が分かる」「~が見える」…… なるほど! 

でさらに2人でしばらく考えましたが、結局「好き/嫌い系」と「可能動詞系」以外に思いつきませんでした。(よ~く探せば、まだ他にもあるかもしれません。)こういうことって、意外に本には書いてないんですよね。 

(ちなみに、「~に」になる「直接目的語」、これはけっこうあります。「~に挨拶する saluer」とか、「~に同伴する accompagner」とか。)

                 ◇

今日学校に行ったら、お手紙がきてました。Merci, リエさん! 2級目指して、courage !

2008年9月8日月曜日

Trop sexy ?


この前の打ち上げが始まる前、まあ渋谷まで行けば当然、ブックファーストとHMVは寄りますね。で、HHVで1900円で買ったのが、Undies Kissing Girls という新人グループ、まあなんというか sexy 路線の女性5人組みです。アルバムの最初の曲はこれ。(短いCMのあと、勝手に始まります。)


出だしの歌詞は;                                    
Oh oh oh caresse-moi oh ×2
Sous tes doigts agiles, je ressens le i
Donner des ongles à mon corps qui se rappelle de toi.
Je ressens aussi les besoins du i droit et ferme ainsi ...
                                              

Trop sexy な感じですが…… まあ音は、ちょっとリアーナっぽいですね。ほかにもマドンナっぽいのや、ジェニファー・ロペス風なのもありました。で、このアルバム、協力したのはこんな顔ぶれ。

Les titres de l’album sont confiés à deux compositeurs de choc : Steve Diamond, dont on a pu mesurer le talent avec les albums de Britney Spears ou les Backstreetboys, et Adam Anders, qui a notamment collaboré avec Christina Aguilera et Ace Of Base.

Les musiciens ont eux aussi évolué avec les plus grands : Michael Jackson,
Snoop Dog ou encore Jay Z.

L’album a été mixé par Rob Jacob qui officie régulièrement avec Shakira et Beyonce.

要は、ブリトニーやアギレラやビヨンセの近くで仕事をしている人たちが、参加してるんですね。(ちなみに、赤い字になっているところ、これが今日出てきた複合過去です。pu はpouvoir の過去分詞だから、「~できた」。それから「コラボした」、「(今風にいえば)進化した」、です。)

このアルバム、すご~くいい、とまでは思いませんが、なんというか、こういう「今風」な音にフランス語がのってるのが新鮮です。

フランス語で歌うミュージシャンて、どうもアメリカ的なポップ前線との勝負を避けてる感があります。もちろん、勝負なんて無意味、って方向も必要ですね。資本主義がすべてってわけでもないし。でもまあ、あえてこういう作りっていう試みも、あってもいいと思います。

『プラダを着た悪魔』の中で、ハイファッションがいかに今のファッション市場の根っこにあるのかを力説する場面があります。「最先端」ファッションが、2年後、3年後に、ごく薄められた形で、スーパーに並ぶわけですね。たとえばマドンナだって、その音はまさに「最先端」。「最先端」であるがゆえに遠ざけても、実際のポップシーンは、その波紋のようなものでできているという現実もあるようです。先端を追わないにしても、知りませんでした、では頼りないですね、プロだったら。

なんだか、ちょっと大げさになっちまいました!(ま、新しいものが好きなだけ、という噂も……)
              ◇
                                              
『アイアム・レジェンド』、
わたしとしては、残念なデキでした……

2008年9月7日日曜日

Azusa numéro 2


今日は日曜日、だったんですが……

実は昨日、NHK出版のA子さんからプレゼントが届きました。開けてみると、ゲラでした! しかも「火曜までに戻すように!」という指示があります。しかも100ページ以上! 仕方ない、今日と明日はこのゲラのみと付き合いましょう。

というわけで、午前中から始めたものの、これがなかなか進まない! で午後もやり、4時ごろからはスタバに行ってまた校正。と……

一時間くらいたったでしょうか、さっきまであんなに混んでいた店内が、なんだか空いてきたかな、と思ったら、なんと空には大きな暗雲が! これは…… と思って眺めていると、あっというまに本降りに。そういえば、中学校でならった川柳に;

本降りになって出てゆく雨宿り

なんてのがあったなあ、なんて、何年ぶりかでつまらないことを思い出し、でもここはもう開き直ってまた校正を開始……

とまあこんな日曜日でした(涙)。腹いせ(?)に、帰りに寄ったレンタル屋さんで、『アイアム・レジェンド』借りました。もう少し校正やったら、見ます!(でも明日も校正かあ……)

             ◇

何日か前にも書いたのですが、たまには予習もよかろうということで、ここでお先に発表しましょう。

Demain, je vais partir pour un voyage,
avec un de mes amis que tu ne connais pas.

明日、わたしは旅に出発するでしょう、
あなたの知らないわたしの男友達のひとりと。

2行目は、with one of my friends that you don't know です。つまり、真ん中辺の que は、関係代名詞なんですね。

お分かりになりますか? これ一応、「あずさ2号」の出だしをフランス語にしたものです。(「あずさ2号」、ちょっとフルすぎる? でも、定番ですよね?)音数を合わせるために、ちょっと内容をふくらませてあります。

いつか分からなくて申し訳ないんですが、近々、レナさんがこれを歌います。よかったら、みなさんもご一緒に!

2008年9月6日土曜日

遠きにありて


今は昔、放送中に出てきたこの句;

白粥(しろがゆ)に 卵がひとつ おはします

かすかに聞き覚えがあるでしょうか? いわゆる「卵かけご飯」の、あたたかな感じが伝わってきますね。この句は、室生犀星(むろう・さいせい)という人が作ったのですが、この名前、お聞きになったことがあるでしょうか? いや、初耳です、というあなたでも、きっとこれはご存知でしょう;

ふるさとは遠きにありて思ふもの
そして悲しくうたふもの

そう、これも犀星です。彼は金沢出身です。

この「ふるさとは~」は、実は続きがあります。こうです;
                                               よしや
うらぶれて異土の乞食(かたゐ)となるとても
帰るところにあるまじや
ひとり都のゆふぐれに
ふるさとおもひ泪ぐむ
そのこころもて
遠きみやこにかへらばや
遠きみやこにかへらばや        (「小景異情 その二」)


この「ふるさとは~」の詩、要は「ふるさとはいい所だよ。帰りたいなあ」みたいな歌だと思ってらっしゃいませんでしたか? 実はわたしも、かつてそう思っていたひとりです。でも、続きの部分を読むと、全然そうじゃないのが分かります。だって、「たとえ乞食になっても、帰るところじゃないぞ」っていうんですから。

「遠きにありて思うもの」っていうのは、ズバリ、「帰るな」とイコールです。そう、帰るべきなのは、「みやこ」なんですね。つまり故郷は、なんというか、意識されはするけれど、ほとんど現実の存在じゃないんです。思う対象に過ぎないんです。

う~ん、ちょっと意外な内容なんですね。(というようなことを、今日は読んだり書いたりしてました、ガラガラの大学図書館で! ちなみに画像の『犀星詩集』は、680円です。)

2008年9月5日金曜日

jouer au rugby


一昨日の会は、なにしろ総勢10人、お店滞在時間4.75時間なので、それはもう色んな話をしました。

まず、みなさんおなじみ(?)の美人ディレクター・アヤチャンは、1ヶ月前から「英語でしゃべらナイト」に嫁いでしまったので、そちらの様子もちょっと教えていただきました。なんでもモエちゃんはとてもまじめな勉強家だとか。う~ん、これで英語もできるようになったら、次はハリウッドでしょうか? できればフランス語もやって、パリコレにも参戦して欲しい!(と無責任なコメント。)それにしてもアヤチャンは、さらにオーラが出ていて、新たなNHKとの結婚生活も、順風満帆なようです。お2人に幸アレ!

レナさんは相変わらず忙しそう。日仏学院の授業だけじゃなく、通訳関係の先生の仕事もあるみたいだし。レナさん、あと何十年かして有名になっても、こんなやつ見たこともない! Je n'ai jamais vu ce type ! なんて言わないでね!(みなさん、ちょっと日付がはっきりしないんですけど、終わりまでに必ず、レナさんの「あずさ二号」が一節聞けます。お楽しみに!)

NKH出版のA子さん、そして料理にも「やかましい(=詳しい、の意)」編集長とは、ある本に使う紙のことを相談しました。鉛筆で書き込みやすくて、裏写りしにくくて、真っ白すぎないで、厚くない紙…… これが難しいんですよねえ。わざわざサンプルの本まで持って来て頂き、恐縮でした。(ある本? いつ発表していいんでしょうか? ね、A子さん!)

あと録音されたものを検査する(検聴、っていうらしいです。)担当のナオちゃんが、大学の先輩だということも判明。(まあナオちゃんは仏語科で、わたしは仏文科でしたが。)せま~いキャンパスなので、きっとどこかですれちがったはずです。(こういうとき、巻き戻してみられるリワイイド・ヴューができるのは、いつのことでしょうか、グーグルさん?)ナオちゃんの指摘を受けてリテイクしたことも何度かありました。その節はお世話になりました!

CD担当のサッチャンとは、もう少しお話したかったのですが…… でも、わたしが店についたときは、まだサッチャンした来ていなくて、しばし、2人で静かな時を過ごしました。

そしてその静寂を破ったのが、(みなさんの予想通り)シゲピョンでした。いやあ、シゲピョンが編集してくれるのでこちらはしゃべりちらせばいいので楽でした。ただ、なにしろ時間が15分なので、だいぶギャクがカットされているのも事実です。(あれでも?)ま、一応フランス語の番組なので、仕方ないですね。(一応?)

そうそう、最後にお一方、1番エライ(んですよねえ?)方がいらっしゃいます。といっても、爽やかで人望のある、簡単に言えば男前のマー坊(失礼!)です。マー坊とアヤチャンとレナさん。この3人は、完全に仕事中毒者で、特にマー坊は、周りのみんながそう言ってるのに、「そうかなあ……」などとのたまっており…… もうかなり重症かもしれません。

ね、花園というより、花園ラグビー場でしょ!?

2008年9月4日木曜日

MERCI !


というわけで昨日は、「まいにちフランス語」の打ち上げ会がありました。場所は公園通りをかなり上ったところにあるフレンチ、というかフレンチ・ビストロ、というか欧風居酒屋、という感じのお店。

以前もちょっと書きましたが、この「ラジオ講座」というのは、3つのグループの協力のもとに作られています。つまり、テキストを作るNHK出版、CDを作るNHKサービス・センター、そして放送の収録などを行うNHKエデュケーショナル、です。このスタッフたちが、素早いバトンリレーを繰り返すなかで、ひとつの「まいにちフランス語」というものが、まあホログラフのように、立ち上がってくるわけです。

で昨夜は、そのすべての部門のみなさまが揃ったので、(といっても10人ですが)なかなか賑やかな会になりました。そしてふと気づくと、男はわたしだけ! という、花園のような状況かと思いきや、みなさんむしろ、花園ラグビー場(!)という盛り上がりでした!(もちろんわたしは、借りてきた猫の額のように縮こまっていました!)

途中レナさんが、店のガラス扉に書かれたフランス語のマチガイを指摘するため、店主の耳(だったかな?)を引っ張っていったのが印象的でした!

まったく、今回のスタッフのみなさんには、ほんとにお世話になり、ありがたく思っています。おかげさまで、仕事自体はとてもやりやすかったです。いいスタッフに恵まれて、幸運でした! この場を借りて、御礼申し上げ奉り候!

とはいえ、もちろんこれは、聞いてくださるみなさんがいなければ、存在しないのと同じなので、最後の最も重要な支えはリスナーのみなさまとそのラジオのおかげです。この場をお借りして、御礼奉り候!
(でもあと2週&再放送1週、ありますよ!)

さて、実は昨日は、1人スペシャル・ゲストがいらっしゃいました。きっとみなさんの中にも、お顔をもお名前もご存知の方がいらっしゃるはずです。そう、ラジオだけでなくテレビでも活躍された、杉山利恵子先生です!

杉山さんとは、昔ある大学での教員仲間でした。(当時その大学では、ロシア語講座の黒田さんも、芥川賞を取るまえの堀江さんも一緒でした。おお、懐かしき日々!)その期間中、杉山さんは何度目かの留学で1年いらっしゃらない時期もありましたが、戻られてからは土産話なども伺いました。

が、それから幾星霜、わたしのほうでは、ラジオで声も聞き、テレビでお姿も拝見しているので、なんだかしょっちゅう会っているような気がするんですが、最後にお目にかかったのは、もう10年も前でした。それにしても、相変わらずお美しいのには、驚かされました。お店に入ってらしたときは、どこのギャルだろうと思いました。(後半はうそ)

実はわたしが「まいにちフランス語」を担当するきっかけを作ってくださったのも杉山さんで、番組開始前には、色々アドバイスもいただいたのでした。その節は、ありがとうございました!

でもなんだか、杉山さんと話していると、ラジオと話しているみたいな気がします。ああ、これラジオの声じゃん! みたいな。ちょっとおもしろかったです。

ふと思い出しましたが、カシオの電子辞書、の音声機能、の声は、レナさんです。1週間くらいかけて録音したそうです。たいへんそ~

7時に始まった会ですが、ふと時計を見ると 9:00、と思いきや、よく見たら 11:45! 驚きました!

というわけで、電車は1駅手前までしかなく、最後はタクシーの運転手さんと、昨今の景気について論じ合って、一日をしめくくりましたとさ!

2008年9月3日水曜日

渋谷へ


今午後四時になるところです。なんだか残暑厳しいですね!

さて、今日はこれから渋谷に行きます。まだ放送は2週ありますが、「まいにちフランス語」、今日打ち上げ会です! その様子は、多分明日ご報告できると思います。では、いってきます!

2008年9月2日火曜日

難!


「まいにちフランス語」を聞いてくださっているみなさん、今週の内容は、ちいと込み入ってますね? ここは実は、初級フランス語文法の中盤のヤマなんです。

とはいえ、練習問題に答えられるようになれば(ってそれがひと苦労なんですけど)、実際にフランス語を使うことに関しては、一応OKなんです。(なぜ「一応」が付くんでしょう? 実は、この人称代名詞と「似てるけど違う」表現があって、それと区別できるようになるっていうのも、初級の最後あたりには登場する内容だからです。ま、それはおいといて。)

ただね、せっかくフランス語まで手を出す欲張り(!)なみなさんのこと、きっと英語との違いも知りたいでしょう?(やっぱりね!)で、放送ではその点に触れられなかったので(なにしろたった15分!)、ちょっとここで補足させてくださいませ。テーマは、「フランス語と英語の間接目的語、どうちがうねん!」です。はっきり言います、これは「難」です!

まずは比べてください。

1-a) I give    this book to Mary.
1-b) I give her this book.

2-a) Je donne ce libre à Marie.
2-b) Je lui donne ce libre.

これはそれぞれ同じ構文(=文の形)ですね。もちろん、代名詞になった場合の語順はちがいますが。

さて、では「間接目的語」です。2)のフランス語については、赤字は両方とも間接目的語です。ただ、名詞か代名詞かのちがいがあるだけです。

問題は英語です。結論を言います。1-b) の her は間接目的語です。英語の文型で言えば、SVOO ってやつですね。直接目的語と間接目的語の両方があるので、OO と言うわけです。ちなみに、英語の間接目的語っていうのは、SVOO の時しか出てきません。(SVO と SVOC の O は、いつでも直接目的語です。)

じゃあ、当然1-a) の to Mary も間接目的語なんでしょうか? 実はこれ、英文法的に言うと、単なる修飾部なんです。もう少し細かく言うと、副詞句(=全体で1つの副詞のように働いている句)ってことになります。

でも、これちょっとへんじゃないですか? みんな基本同じ内容、同じ文型なのに、1-a) だけ間接目的語じゃないなんて。

また結論です。これは、へんなんです。間接目的語の定義から言えば、1-a) ももちろんそこに含まれます。(定義ですか? テキストの12ページ! ここ大事!)

じゃあなぜ、1-a) は間接目的語に入らないのか? 実は英語では、<前置詞+名詞>という形になったものは、ぜ~んぶ修飾部! というお約束があるからなんです!

(だからみなさん、もし中高生から「間接目的語ってなに?」と訊かれた場合、1-b) の例文だけを見せて、「この her みたいのが間接目的語」って説明すると、それはちょっと不十分だと思います。だってそれじゃあ、なにとなにが「間接(的)」なのか、ち~とも分かりません! 1-a) の例文も見せて、本来はこういう風に(間に to が入って)間接的につながってるものやねん! と言ってあげてくださいませ。 )

というわけで、最後にもう1つ。

3-a) I go     to school.
3-b) I speak  to Mary.

4-a) Je vais à l'école.
4-b) Je parle à Marie.

さて、色つきの部分の中で、「間接目的語」と呼ばれるのはどれでしょう? 答えは…… 4-b) のみです! Mais pourquoi ?

まずa のほうは、英語もフランス語も、そもそも目的語じゃありません。「学校」は、go/aller が働きかける対象じゃなく、単なる行き先として示されているだけです。(I love Mary. の love は、メッチャ働きかけてますね?)

で残る 3-b) ですが、これはもちろん、リクツの上では間接目的語です。なにしろ「話しかける」ですからね、どうみてもメアリーは「働きかける対象」です。でも…… そう、さっき触れたように、英語では、<前置詞+名詞>は、修飾部扱いなのでした。というわけで、間接目的語は4-b) のみ、ということになるわけです。

蛇足を1つ。フランス語は6文型あるんですが、これは英語の5文型+SVO です。でも……SVO って英語にもあったんじゃ? Oui, exactement. だけどこのフランス語のSVO の場合、O=間接目的語 なんです。つまりフランス語には、SVO が2種類、直接目的語の場合と間接目的語、両方あるのでした!

ね、「難」だって言ったでしょ? でもこれ、わたしもはっきり分かったのは、大学院の終わり頃でした! つまり、仏文科の学生の時は、うやむやだったんですね。だから当然、「難」じゃないと困ります!

2008年9月1日月曜日

おいしいジュースのできるまで


ジュースを作るとします。なるべくおいしいやつを。

でもおいしいっていうのは、どんなものでしょう? もちろん、単純で、さっぱり爽やかってのも、一つのおいしさですよね。でもやっぱり、爽やかな中にも、甘さやすっぱさが複雑に絡み合い、その甘さ自体もまた何層かからなっていて、それでいて口当たりはよく、喉越しスッキリ。すぐにおかわりしたくなる。夏の炎天下でも、雪の降る露天風呂でも、場所に関係なく深い味わいが感じられる……

さあ、なんの話でしょう?

今日たまたま、「クローズアップ現代」を見ました。今日のお題は、コピペ。コピー&ペーストの是非について考え、さらに、そもそも人間の脳の活動にとって、コピペってどうよ、みたいな話でした。

たしかにわたしも、コピペを含むレポートを受け取ったことがあります。最近では、コピペを発見するソフトも開発済みらしいですね。でも、実際読んでいると、コピペはほぼ分かります。それに疑わしい部分は、ソフトなんかなくても、いくらでも検索できます。

でも、空しいんですよね、これがコピペかどうか検索までするって言うのは。

わたしは実は、コピペそのものは、基本的にいいことだと思っています。なにかを考えるときに、人の意見を聞くのは大切だし、そのテーマのどのヘンが問題になっているのかも分かります。たくさんコピペして、たくさんたくさんコピペして…… それをよ~くミキサーにかけて、つまり、色んな繋げ方をしたり、対立させたり、抜けてるピースを補ったり、なんなら一見関係なさそうな材料もちょっと擂(す)りこんでみたり…… そして最後に、それをカップに注ぐ。色合いや、形を考えて、中のジュースが飲みたくなるような、ちょうどいい器、つまり文体を使って。

もちろん先生たちが怒っているコピペは、な~んにも考えずに、ひとつかふたつのコピペをそのまま提出してくる場合なんでしょう。いや、でもその対応は簡単。大学なら、もう1回やってもらうだけです!(つまり落第ね。)

ネットは、ほんとに驚くほど便利です。かつてはロンドンの図書館の片隅で、埃にまみれてマイクロフィルムを見ていたのに、今じゃそれがネットでダウンロードできるんだよ! と、ある英語の先生も言ってました。古本だって、昔は足で探さなけりゃならなかったんです!

で、じゃあわたしたちはどうすりゃいいのか? いい材料をたくさん揃えて、なんなら素材だけじゃなく時代感覚とか<今>とかも入れちゃって、よ~くミキシング。そして……

おいしいジュースができるんですね!(とまあ、言うのは簡単なんですけどねえ……ってそれじゃダメじゃん!)