2009年4月9日木曜日

サイコロの一振りは


名人を15期もつとめた大物、中原誠名人が引退するそうです。長い間、お疲れ様でした。

新聞のインタヴューによると、今まで一番思い出に残る手は? と訊かれて、「79年の37期名人戦の第4局、△3三同桂のあとの▲5七銀」と答えていました。

これを聞いて、ああ、やっぱりあれかあ、と思う方は、相当の将棋通なのでしょう。不肖元将棋部員であるわたしは、まったく思い出せませんでした。まあ79年頃は、多分1回も指さなかったでしょうし。

でも解説を見ると、たしかにこれは、とても特殊な感じのする手でした。なんというか、「銀のタダ捨て」で、でもそれを相手の馬に取らせることで、馬の位置がひとつだけずれ、、それが勝敗を左右したのです。ああ、恐ろしくビミョーです!

将棋は、たとえばトランプや麻雀と違い、偶然の入り込む余地が(理論的には)ありません。そう、「偶然」……

先日のダブル中村対談でも、「偶然」の要素をどう呼び込むか、あるいは除外するか、が問題になったそうです。作品を作るとき「偶然」を利用するというのは、今までにも色々試みられてきました。たとえばかつてのアクション・ペインティングとか。それはもちろん、ひとつの面白さですね。

これはちょっと違いますが、カンディンスキーが自室に戻ってみると、そこに見知らぬ素晴らしい絵が置いてあった、というエピソードがありました。そしてその絵をよ~く見ると、逆さまになった自分の絵だったと。もちろん画家は、その「見知らぬ絵」のほうを、自分の作品としたわけです。

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というわけで、明日は授業です。これからまた1年、張り切っていきましょう!