2009年9月30日水曜日

H3K9



3週間ほど前、ネット上にこんなタイトルの記事がありました。(日経プレスリリース)

東大先端科学技術研究センターなど、
生活習慣病の発症に重要なエピゲノム制御を解明
生活習慣病の発症に重要なエピゲノム制御を解明
肥満をもたらす遺伝子修飾
-ヒストンH3の9番目リジンの脱メチル化制御分析により明らかに-


ただしこの記事は、準備なしで読んでもチンプンカンプン。そして昨日、朝日新聞の朝刊に、まさにこれと同じ内容、しかもそれをかなり噛み砕いた形にした記事が出ました。すごくうまく整理されている、とまでは言えませんが、記者が苦労して噛み砕こうとしているのは伝わってきます。(29日付朝刊・18面)

あれは20世紀の終わり近く…… 人間(だけじゃないですが)にはDNAというものがあり、それが「すべて」を決めているので、それを解読できれば、ほんとにたいていていのことは分かるかもしれない。ただ1人1人のDNAは長大で、それを全部読むのはほとんどムリだろう…… なんて言われていました。

ヒトゲノム計画が終了した今から見ると、なんだかずいぶん昔のことのような気がします。そう、DNAは読み解かれ、しかし、「すべて」が分かるなんてことは、まったくないのでした。

で、エピゲノムです。このエピゲノムは、そもそも定義からして難しい。

エピゲノム=DNA塩基配列以外の(1)DNAのメチル化 と (2)ヒストンの修飾で維持・伝達される遺伝情報。

素人の理解では…… 1つのDNAが、1つの役割に対応しているわけじゃない。たとえば、遺伝子Aは心臓、遺伝子Bは爪、などとなっているわけじゃない。そうではなく、DNAの配列は同じでも、働く遺伝子の組み合わせを変えて、いろんなものが作られている。たとえば、心臓は遺伝子A, C, M、爪なら遺伝子A, F, G という具合に。

だとすると次の問題は、この働く組み合わせやタイミングは、どうやって決められているのか、ということですね。そこで登場するのが、メチル基という分子です。このメチル基がDNAにくっつくと、それはいわば鍵のかかった状態になり、そのDNAは活動することができません。(転写されることはない、ということなんでしょう。)

そしてまた、DNAが巻きついている「糸巻き」ともいえるヒストン(という名のタンパク質)。このヒストンがみっちりひっついて並んでいる部分でも、DNAは活動できないそうです。

たとえば、あるメチル基を外す酵素を持たないマウスがいるとします。つまりそのマウスは、ある部分のDNAにカギがかけられ、使えない状態になっているわけです。そしてその遺伝子が、もし脂肪燃焼の促進に関わるものだったら…… マウスは太っていくのでしょう。

DNAは変わらない。でもエピゲノムは、栄養状態によってさえ変わるそうです。ということは、薬が効くかもしれない、ということだそうです。なるほどね~

理科、面白いです!