2010年10月31日日曜日

36 Quai des Orfèvres


今日の東京は、期待した晴天には恵まれず、
結局この土日は、なんだかな~の天気でしたね。

というわけで、今日も部屋で映画です。その名も、
あるいは裏切りという名の犬』。
おお、なんだかアナクロではありますが、
かといって受けないわけでもなさそうです、ノワール・ファンには特に。
しかも主演は、ダニエル・オートゥイユとジェラール・ドパルデューという、
まあフランスの2大スターといっても良さそうなコンビです。

http://www.youtube.com/watch?v=jPx0PQpR82s&feature=related

このDVDは、行きつけのレンタル屋さんで何度も手に取り、
その度に棚に戻していたのですが、ついに見てみました。
36 Quai des Orfèvres という原題なので、もしかしたら、
少しはパリ情報もあるかな? という感じで。
(この住所は、パリ警視庁の所在地。
それにしても、あまりに思い切った邦題ですね!)

内容は…… パリ情報とは無縁でしたが、
とてもよくできたノワールだと思いました。
ヴァイオレントだし、ややムリ目な部分もあるけれど、
全体としては、傑作ノワールに入ると感じました。
そう、ヴァイオレントではあるけれど、ある種の品もあるし。

わたしは一時期、ハードボイルドが好きでした。
(今も嫌いじゃないですけど。)
文学的な表現技法から行っても、
ハードボイルド的な、心情表現を排するやり方は、
ベタベタなものよりはずっとよかったし。

ただ最大の問題は、つい様式化してしまうことなんでしょうが、
今回の『あるいは裏切りという名の犬』については、
不思議に生き生きしているところもあり……
それが成功作というものなんでしょう。
こうなったら、もうちょっと映画見ることにします!

さあ、今週からは11月!
びっくりですねえ、もうあと今年も2カ月なんて!
はりきって行きましょう!

2010年10月30日土曜日

『アイシャ』


昨日は午前の授業の後、
大澤真幸さんの特別講義がありました。
さすが、というしかない、濃い2時間でした;

http://monpaysnatal.blogspot.com/

で今日は、あるイベントに行くつもりだったんですが、
台風にビビって、家で過ごすことに。
そして前から見たかった『アイシャ』という映画を見ました。

これは日本未発売なので、
アマゾン・フランスで買った(9.99 €。安いです。)ものなんですが、
ラッキーなことに、フランス語の字幕を出すことができます。
字幕なので、会話そのままではないのですが、
と~っても助かります。
でもその分、分からないところは辞書を引きながら見るので、
倍くらいの時間がかかりましたけど。
でもそれは言いかえると、時間かけたくなる面白さ、ということでもあります。
ま、興味深さ、というほうがいいのかな?

http://www.youtube.com/watch?v=H_mZpcW4Uto&feature=related

アイシャが住んでいるのは、パリの北東、ボビニーです。
これはメトロの5号線の終点なんですが、
細かく言えば、アイシャの住む団地はもう少し先のAvenue Karl Marx です。
もちろん、環状道路(ペリフェリック)の外側です。

アイシャの一家はアルジェリア系のムスリム。
小柄な父親は強権的、抑圧的、
母親は信心深く、おまじないに頼ったり。
アイシャはなんとかこのシテを脱出しようとしていて、
博士号をもつ従妹は、イスラム系だという理由で就職できません。

たくさんのムスリムが登場しますが、彼らはもちろん一様ではありません。
たとえば女性の「純潔」に対する感覚も、
世代によってずいぶん差があるし。

そしてこの、コメディともいえる映画に厚みを与えているのは、
丁寧な人物描写です。
たとえば、
教条的で頑固な父親は、自分の定年退職の日、
一人で医者を訪れ、退職への心の準備ができていない悩みを打ち明けます。
しかも彼は、1952年に、退職の時には、家族を連れてアルジェリアに帰ると、
コーランに誓っていたのです。これは大問題です。

けれども医者は、
イスラムは開けた宗教なんだから、誓いを取り消す方法があるだろう?
と励まします。
わたしらはもっと大変なんだよ、ユダヤ人だから!
というわけです。

またマルセイユ生まれの母親は、
とにかく運転免許を取ることに命がけなのですが、
アイシャの貞操を守るため、怪しげな魔術師(?)のところを訪れます。
彼は黒人で、フランス語でもアラブ語でもない言葉で祈ります。
(途中まちがいなく、彼は「タタンザンベ」と言っているので、
リンガラ語なんでしょうか? 「わが神よ」という意味でしたね。
ってこれはほら、Bisso na bisso の曲名でした、「今週の1曲」でも取り上げた。)
で母は、彼に調合してもらった薬を毎日娘に飲ませるのですが……
 
また、博士号があるのに就職できない従妹は、悩んだ末、
若きイスラムの伝道師(?)のような人のもとを訪れます。
そこには、彼女と同じ悩みから出発し、
今ではヘジャブを付けることで心の安定を得た、と語る女性たちがいます。
これはどうも胡散臭い感じ。
しかもその伝道師は彼女に、「一時的結婚」という、
訳のわからない申し出をします。
まさか彼女が受けるわけはないよね、と思ったのも束の間……

アイシャは、色々シテを脱出する計画を立てるのですが、
ムリない理由で決行できず。
しまいには、職場(クルマの解体工場)の上司に彼女から結婚を持ちかける始末。
(結婚後すぐに離婚する予定で。)
けれどこの話は、両家の激突により破談。
というのも、アイシャの父親はFLN派。相手方はMNA派。
でこの両派は、アルジェリアのライバル政党(?)なのです。
まあ単にライバルって言えるほど、単純な敵対関係じゃありませんが。
でもこれも、ほぼ50年前の話。今だに「有効」とは……

簡単に見られないのが難点ですが、
学びどころ満載の映画でした!

2010年10月28日木曜日

そろそろ


で、今日の午後、やっぱり『チャオ・パンタン』、見たくなりますね。

自宅のVHSが壊れてから半年、
これは大学の資料室にあるプレーヤーで見るしかない、というわけで、
試してみたんです。が……

最初はテープが悪いのかと思ったんですが、
他のものもまったく同じ。つまり、
10秒ごとに止まってしまうんです!
これは壊れてるな。しかも見ると、
「91年製」。
これはもうそろそろ、買い替えてもいいですね?

備品担当のK先生に、来週交渉しよ!

         ◇

明日は生田校舎で、「大学院特別授業」があります。
担当は、日本を代表する学者の一人、大澤真幸さんです。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

〈第二の科学革命〉の知識社会学――量子力学、キュビスム、そして革命

普通は「科学革命」と言いますと、ニュートンなどが出てきた17世紀
の科学の変化を指すわけですが、私は、20世紀初頭の科学、とり
わけ物理学の革新(相対性理論‐量子力学)を「第二の科学革命」
と呼んでおります。この「第二の科学革命」を、同時代の芸術や政
治の変化と関連づけることで、20世紀以降の「近代社会の変容」につ
いて考えるのが、講義の主題です。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

楽しみです!

2010年10月27日水曜日

ゴシップ的に


昔、『チャオ・パンタン』という映画があって、好きでした。
いわゆるフィルム・ノワールで、
若い友人を殺されたガソリン・スタンドのオヤジが復讐に立ち上がる、
という話です。もちろん彼は、元刑事(みたいな感じ)。
(たしか、たった1回ですが、授業で見せたこともあります。
その大学は、ちゃんとしたAVホールがあり、
濡れた石畳の質感も一応感じられます。
撮影は、後に監督もこなしたブルーノ・ニュイッテン。
イザベル・アジャーニとの間に、子供がいるそうです。)

研究室の棚に、この映画のVHSがあります。(画像)
83年の作品なので、少なくとも、もう20年は見てないことになるんですが……

昨日、何の気なしにこれを手に取ってみました。
するとまずオヤッと思ったのは、そのジャケ写。
これってもしかして、バルベス駅じゃ? いや、多分そう。

そしてもう1つ、監督は……クロード・ベリ。
ああ、そうそう。彼だったよね……って待てよ、
あの『サンドイッチの年』の主役のトマ・ラングマンは、
ベリの次男だったはず!

さっそく確認すると、やっぱりそうじゃん!
そのことは知ってたのに、『チャオ・パンタン』の監督がベリであることは、
完全に忘れてました。
今調べたら、ベリの本名は、クロード・ベリ・ラングマン、なんですね。
これなら覚えやすいです。
しかも、はっきりユダヤ人名ですね。
(実際ベリの父親は、ポーランド系のアシュケナジム。)

そしてトマ・ラングマンのほうは、今はプロデシューサーもやってるみたい。
ふ~ん、そうなんだ。でどんな作品の? と思ったら、
なんと、『ジャック・メスリーヌ』ときた!
あら~、全然知らずに見てました!

そして話は戻りますが、『チャオ・パンタン』で殺された青年、
彼はアラブ系ユダヤ人という設定なんですが、
これを演じるリシャール・アンコニナは、もうバリバリのユダヤ人ですね。




『原色パリ図鑑』という、
パリのユダヤ人街を舞台にした作品では、彼は主役でしたし。
(『ギャングスター』では、アンヌ・パリロー(=ニキータ)の恋人役でした。)

Mmm... まあ見てたんだけど、見てなかったんですねえ……

2010年10月26日火曜日

切り開く


遅ればせながら、昨日、
NHKの「プロフェッショナル」の、松本人志の回を見ました。

まず驚いたのは、松っちゃんを前にした時の、
他の芸人さんたちの緊張ぶり。
松っちゃん自身ははむしろ気さくな感じなのに、
周囲からはどれほど畏怖されているか、伝わってきました。

あとはやはり、彼の真摯さ、でしょうか、笑いというものに関しての。
そして同時に、同じことはやらない(!)という姿勢に、
時代を切り開く人たちに共通の、なんというか、
瞬発力のある運動選手のような鋭さを感じました。

でもこういう人たちって、やっぱりどこか孤高の印象があります。
いや、実際にはたくさんのスタッフがいて、
彼らなしではこんなに仕事ができるはずもないのだけれど、
それでも、彼の横顔には孤独が浮かんでいます。
わたしなんかにはうかがい知れない境地なのでしょう。

やはり、現代日本を代表する、「笑い」クリエーター&パフォーマーですね。

そういえば、松っちゃんは adidas のレザー・ジャケットを着てましたね。
かっこいいけど、高そう。
ちなみに adidas はユダヤ系の会社ですね。
そのせいかどうか、パリのユダヤ人街にも、
唐突に店が出現します。
これも遅ればせながら、スポーツメーカーの服や靴、
最近わたしもよく使っています。

2010年10月24日日曜日

こんな民主化


一昨日の金曜日、2年生の授業では、これを読みました;

http://www.madmoizelle.com/tendances-accessoires-automne-hiver-20102011-15427

なぜこれにしたのかというと、
まず、ここのところ硬いネタが続いていたこと、
そして、ちょうど前日、朝日の夕刊に、
「パリコレ・2011・春夏」
の記事が出ていたからです。
これもコピーして配ったら、
ファッションというものの「波動」が、
まあ一瞬でも感じられるかなあ、と思ったのです。

いや、もちろんほとんどの女子たちや、
結構な数の男子たちは、
まさにファッションの現場にいるのでしょう。
(訳す時も、今回ばかりは彼らが頼り!)
でもね、ファッションのファの字、いやフの字、
いやフの字の最初の横棒さえ気にしてこなかった学生もまたいるわけです。
一生に90分くらい、ファッションについて思いめぐらすのも、
悪かないかなあとも思うわけです。
クリエーターたちは、時に無意識なまま、
時代の気分を表現してることもあるわけですから。

前にも書きましたが、結論を言えば、
パリより東京のほうがおしゃれだとわたしは思っています。
でもね、パリの流行を覗いてみるのも、
やっぱりそれなりに楽しいです。

ニーハイの解説のところで、

..., il ne reste plus qu’à démocratiser cette inspiration.

というところがあって、ここでいう「民主化する」っていうのは、ようは
「今季はもうニーハイをストッキングの上から穿いちゃうこと」
なんですね。あとはそれだけだと。
この使い方、面白いですね。

それから羽根の髪飾り、これはちょいちょい見かける気もします。
日本でもクルんでしょうか!?

2010年10月23日土曜日

昆布と明治維新


ああ自分は何も知らないなあ、と思うことはしょっちゅうありますが、
つい昨日もありました。
沖縄出身の英語の先生とだべっている時のことでした。
(ここからはすべて、その時に教わったことです。)

みなさん、昆布が全然採れない沖縄は、
実は昆布の消費量日本一だ、という話、ご存知ですか?
(わたしはこれさえ知りませんでした。)
で、なぜそうなったか、という話なんですが……

最初に結論を言いましょう。
江戸時代、北海道産の昆布が、北前船によって運ばれたから、です。
じゃあなぜ、そんな遠くのものが、沖縄(琉球王国)まで?

図式はこうです。

琉球が中国から輸入した漢方薬(の原料)
       ↓     ↑
        薩摩藩
       ↓     ↑
      北海道の昆布

Mmm, これは明らかに、薩摩が儲かる仕組みです。
だって、どっちの方向でも潤うんですから。
そしてこの背景には、「富山の薬売り」からの、
漢方薬に対する需要があったと言われています。

さて、では薩摩は、この儲かった金で何をしたでしょう?
雑にいえば…… これは明治維新なんです!

沖縄料理には、そういえば昆布が多く登場します。
今回は、「昆布に歴史あり」をお送りいたしました!

          ◇

土曜日ですね。1曲行きましょう。
あの名曲、「悪魔を憐れむ歌」、ヴァージョン・バルベス!

http://www.dailymotion.com/video/x5k57k_sympathy-for-the-devil-orchestre-na_music

面白いでしょ!
national とありますが、これはバルベスを「国」とみたてただけで、
全然「国立」じゃありません。
最近、彼らのアルバムをよく聞いています。

2010年10月21日木曜日

新幹線


ラジオの仕事が終わってから、
なかなかレナさんと会う機会もないのですが、
今日久しぶりに連絡があり……

「先週の土曜日に愛知県で講演会がありました。
そこで、MIRACLE !
新幹線でお隣に座った方が、
2008年ラジオ講座の再放送を聞いてくれていたのです」

ほうほう、そんなことが。
レナさんは、なぜかリスナーの方と遭遇することが多いんですよね。
飲み屋さんでサインで話しかけられたり、
タクシーの運転手さんに「ア、レナさん!」て言われたり。
でもそれだけ聞いてくださってるということだから、
これは喜ぶべきことですね。

       ◇

今日は、イスタンブールでの学会から帰ってきた学生から、
色々彼の地の様子を聞きました。
イスラム99%の国ですが、
たとえば若い女性たちの場合ヘジャブを被っている人は少数派だとか。
で、スカートに、レギンス……
こんなことを聞くだけでも、その土地の印象は変わるものですね。

『イブラヒムおじさんとコーランの花たち』の後半、
イブラヒムとモモが、クルマでイブラヒムの故郷に向かうのですが、
その途中、ボスポラス海峡を船で渡ります。
わたしにとってのイスタンブールは、その場面で聞こえる霧笛と海風、
そして対岸の、尖塔の多いシルエットです。

アメリカ、フランス、ドイツなどからも、たくさん観光客が来ているそうです。
行ってみたいですねえ……

*画像はサン・マルタン運河。撮ったのはベルヴィルの近くです。

2010年10月20日水曜日

@ 渋谷


今日は久しぶりに、渋谷まで仕事に行ってきました。

まずはNHK出版のアキ子さん&編集長と少しだけ打ち合わせして、
別口の仕事に移ります。
こちらは、3:30 から6 時間、がっつり働きました。
今日初対面の方が3 人いらしたんですが、3 人ともプロ。
耳を傾けるべき意見をおっしゃいます。
う~ん、勉強になります!

帰り道、夜10時前にセンター街を通り抜けたんですが、
いつものように、
コンビニの前にしゃがんでカップ麺をすする女子たち。
(中にはなつかしいガングロの少女も。)
あちこちにたむろする男子たち。
(ホストクラブの広告から抜け出したような。)

深沢七郎の短篇に、「東京のプリンスたち」というのがありました。
わたしは好きな作品でしたが、
内容はほぼ忘れました!
でも、このタイミングでなんとなく思い出すっていうことは、
当時の「センター街」を描いていたんでしょう。

久しぶりに、七郎さん読みたくなってきました!

2010年10月19日火曜日

出張授業


今日は午前中にいつものゼミを2つやったあと、
あわてて電車に乗り、
同じ明治大学の駿河台校舎(お茶の水)に行きました。
というのも、同僚の管さんが、
情報コミュニケーション学部の「比較文学」の授業で、
ゲストスピーカーとして話すことになっており、
まあついでにわたしも話してもいいよ、ということになったからです。

駿河台の校舎で授業をするのは初めてでしたが、
今日の70人ほどの学生たちは、物珍しかったのか、
とてもよく聞いてくれていた感があります。
全体テーマは「翻訳」なのですが、
管さんが考えてきてくれた献立は;

1)われわれは世界を言語によって了解している、
  でも言語は非常に限られた有効性しか持たない。
2)われわれあの大部分はコトバの中で生きている、
  でもコトバは決して単数ではない。
  →オムニフォン、という考え方
3)ひとつのコトバは翻訳によって世界に目覚めてゆく。
  →コトバの姿を変え育ててゆく作業としての翻訳

う~ん、深い話です。
こうしたテーマに興味が湧くようでしたら、ぜひ管さんの本を。
特に「オムニフォン」については、
『オムニフォン』があります。
集中して読めば、必ず鱗が何枚も落ちます。

この授業の本来の担当は、
パウル・ツェランがご専門の関口先生です。
ツェランも、なかなか難解ですが、
これは本当に、いつかゆっくり読みたい詩人の一人です。
彼はユダヤ人として強制収容所を経験し、
最後はパリで暮らしました。
関口先生の本はこちら;

http://www.ikubundo.com/book/b51280.html

引き込まれます。

2010年10月17日日曜日

L'accro du shopping à Manhattan


ちょっと前に、
「10年前のイギリスのベストセラー、仏訳版面白し!」とご報告した、
ソフィー・キンセラの「レベッカのお買いもの日記」シリーズ、
一昨日「2」が終了しました。
以前通りのルールを守り、通勤中に朗読を聞き、
その続きを風呂で読む、という繰り返しです。

この「2」は、途中やや心配になりましたが、
後半はしっかり持ち直し、読後感は爽やか。
これはたしかに「お買いもの」がでてきますが、
やはり根本は若い女性の生活、仕事、そして恋愛です。
昨日今日は、用意してある「3」に入らず、
風呂で拾い読みして、余韻を楽しんでいます。
そんなことがしたくなる感じなんです。

話の本筋とは関係ありませんが、
主人公レベッカがある男友達に、
思いきって言う場面があります、その服はよくないよ、と。
彼女はNYに旅立つので、ここで言ってあげないと、という、
なんというか母親的な心情だったようです。
この場面、なぜか心に沁みました。
キーは、ポール・スミスのセーターです。

*念のために。
 CD(MP3 版)はAmazon France でも少し買えますが、
 全部揃うのはココです;

http://www.editionsvdb.fr/kinsella-sophie_m143.html

        ◇

10月も後半に入りますね。
実はこの2ヶ月、パリで調べたことをまとめていたんですが、
それも一段落したので、
そろそろ次の仕事に気持ちを切り替えようとしています。
これは大きい仕事なので、
来年の7 月くらいまではかかりそうです。
この仕事については、またご報告しますね。

というわけで今年もあと2.5 ヶ月、
第4 コーナーに差し掛かった感じでしょうか。
張り切っていきましょう!
(ま、足がもつれない程度に!)

*ちなみに、Manhattan の発音は、「マナタン」です。

2010年10月16日土曜日

Prix Nobel


金曜は、2年生のフランス語の授業があり、
あっちこっちの記事を読んでいます。
(先週は「ミニスカート事件」でした。)

で今日は、ノーベル平和賞をとった劉暁波氏の記事です。
フランス語を選択した学生は、当然ながら、
中国語やドイツ語は履修していません。
でもほんの少しでも、中国事情に触れたほうがいいと思っていたので、
今日はいい機会だと思ったわけです。
去年のオバマ受賞に劣らず、大きな話題ですものね。

天安門事件は89年だったと、これは火曜のイベントでも話題になりました。
でも一応学生に、この事件名だけでも聞いたことがあるか尋ねたところ、
約1割の学生が「初耳だし!」ということでした。
う~ん、そうなんですね。
たしかに、彼らが生まれる前のことではあるんですが。

学生たちの多くは、
民主化、というのが、そもそもピンと来ていないみたい。
以前、「市民革命」の前と後ろ、みたいな感じで話したはずなんですけど。
まあ、こちらがあまりうまく話せてないということもあるでしょう。
話し慣れない内容なので、ちょっとこなれてなかったかも。

天安門から20 年、天安門の英雄がノーベル賞を取る。
中国語の林先生の指摘通り、この数十年に中国は、
「どこも第3世界だった状態から、国の中に、
第1世界と第3世界が同居する状態にまで変化した」
のは確かでしょう。劉暁波氏の受賞は、
こうした変化とあるコントラストを見せているように感じられます。

中国東北部に生まれ育ったわたしの父親が生きていたら、
なんていうでしょうか……

2010年10月14日木曜日

仮託する


火曜日の話の中で、75年生まれの2人から、
ティーンの頃、
「生きづらさ」があった、
というコメントがありました。
それはまた、「生きているという実感の無さ」にもつながるもののようです。
(そしてそれはやがて、「死」に触れることで「逆照射」されるという形でしか、
確かめられないものになると。)

もちろん、わかります。が、
それはあるいは、ワカモノがいつの時代も感じていたものでもあるでしょう。
90年代にしかなかったものではありません。

「でもね、」と、やはり75年生まれの中国語の同僚は言います、
「それはあるいは、その「生きづらさ」を実存的に仮託する対象がなかった、
ということかもしれません。
そういうことなら、実感として分かります」

おお、なるほど。そう考えるのね。
たしかにわたしたちの生きた70年代は、
そういう対象はいくらもあった気がします。
音楽はもちろん、文学だって、スポーツだって、硬派だって軟派だって、
なんなら優等生という道も。

「でもね、」と再び同僚、「それは時代だけじゃなく、
地域性も大いにあるわけですね。」

それはたしかですね。
でもそうだとすると、対象がなかった点では、
地方は90年代以前もそうだったはずで、
だとすればやっぱり、あの「生きづらさ」とは、
90年代的だった、というところに帰ってくる気もします。

……まあそれはともかく、同僚との昼ご飯はいつでも、
わたしには大事な勉強時間です!!

2010年10月13日水曜日

Merci !


というわけで、昨夜はABCでのトーク・イベントでした。
おかげさまで盛況のうちに終了。
来てくださったみなさま、ありがとうございました!

司会も兼ねてくださった中島さんが、
あまりに素晴らしい進行で、
雨宮さんや能町さんの話も面白かったので、
わたしはほとんど聞きいってしまい、
時に、3人の方とは違う世代として、
ちょっとピンぼけ、なコメントをするという流れでした!

『世はいかにして~』に、素晴らしい序文を寄せてくれた管さんが、
昨夜の様子を紹介してくれています。

http://monpaysnatal.blogspot.com/

管さんは、昨夜の会の締めくくりに発言してくれたのですが……
フツー「書き言葉」と「話し言葉」では語られる内容が違う、
でも今回の『世はいかにして~』は、イベントでの「語り」の内容と合致している――
なるほど! 
それは多分、個人史を語るという、
この本の性格から来ているんでしょうね。
言われて初めて気がつきました。

            ◇

そうなんです、実は昨日は、池上本門寺のお会式の日でした。
午前中の「東京詩」のゼミではその話になり、
本当は行ってくるのを宿題にしたいくらいだったのですが、
生田からだと、池上は遠いので、
そこまではしませんでした。が、
わたしも行きたい気持ちはバリバリあります!

来年、行きましょう!

2010年10月11日月曜日

じゃあ明日!


というわけで、3連休は終了。
みなさん、どんな休みを過ごされたのでしょう。
東京は、ちゃんと晴れたのが今日だけだったので、
やっぱり今日の人出が多いように思いました。
(ちなみに、わが明治大学は、今日は授業がありました!)

わたしは…… 特別なことはな~んにもありません。ただ、
そうです、明日はいよいよABCイベントですね。
昨日『世はいかにして~』を読み直し、
う~ん、そうだったか…… という感を新たにしました。
中島さんも雨宮さんも能町さんも、
やっぱり個性的な人ですね。
よく、本の惹区などに、「ぶつかりあう個性」なんてのを見かけますが、
実はこの本もそうです。(わたし以外)

静かな語り口調ですが、やはりそれはそう。
(でも待てよ。やっぱり世の中、みんな「個性的なのかも。
ただ3人は、それを言葉で表現する力があるので、
それがはっきりわかるけど。
無口な人が、何も考えていないから無口だなんて、
そんなことは全然ないわけだし。)

どんなイベントになるんでしょう!?
では、à demain !        

2010年10月10日日曜日

113


パリのメトロで見かけて、行けなくて残念だった「Rock Sana Papiers」。
これはつまり、「不法滞在者支援のためのコンサート」だったようです。

でそのコンサートに、ここで何度も触れているモコベも参加しています、
今回は、もともとの113(サントレーズ)のメンバーとして。

113は幼馴染の3人組みで、この113というのは、
彼らが住んだ「郊外」の団地の建物番号だそうです。

で、このロック・サン・パピエのHPに、113のVCがありました。
これが…… 笑えます!

http://www.113online.com/

こんなブレイク・ダンス、いいですね!

Tiken Jah Facoly は新譜が出るし、

http://www.amazon.co.jp/%E3%82%A2%E3%83%95%E3%83%AA%E3%82%AB%E3%83%B3%E3%83%BB%E3%83%AC%E3%83%9C%E3%83%AA%E3%83%A5%E3%83%BC%E3%82%B7%E3%83%A7%E3%83%B3-%E3%83%86%E3%82%A3%E3%82%B1%E3%83%B3%E3%83%BB%E3%82%B8%E3%83%A3%E3%83%BC%E3%83%BB%E3%83%95%E3%82%A1%E3%82%B3%E3%83%AA%E3%83%BC/dp/B0042FD1I2/ref=sr_1_fkmr0_1?ie=UTF8&qid=1286679868&sr=8-1-fkmr0

Abd Al Malick も11月に新譜発表です。
楽しみですね~❤

2010年10月9日土曜日

ミニ・スカート


今日の東京は1日雨で、
さすがに夏は遠くなった感じです。
昼間に久々に行ったラーメン屋さんも、思いのほか混んでました。
みんな考えることは同じ、かな?

さて、昨日触れた「ミニ・スカート事件」です。
日本での報道は目にしたことがないんですが、
ワイド・ショーなんかにはよさそうです。

去年ブラジルで、1人の女子学生がミニ・スカートで大学に行きました。
(見たところ、まあフツーのミニ・ワンピです。)
するとそれを見た学生たち数百人が、
一斉に「売春婦!」という叫びを繰り返し、校内は騒然。
女子学生はある部屋に避難し、結局警察に守られて学校を出る羽目に。
しかもその後、大学側が、彼女を退学にしたのです!
なんでも、アカデミスムに対する敬意の欠如、とかいう理由で。

それは当初、ブラジルの田舎の小さな事件だったのですが、
You Tube やニュースで動画が紹介されると、俄然大騒ぎに。

人権大臣は、「退学処分など、時代錯誤で受け入れがたい」と発表し、
他の議員もそれに続きました。
もちろんフェミニスト団体も黙っちゃいません。

ビビった大学は、退学を取り消すことに。
ただ女子学生はそれでもおさまらず、大学を提訴。
でその判決が先週あって、もちろん大学の負けでした。が、
賠償金額に納得しない学生は、控訴する予定とか……

このニュース、フランスの新聞の中には、
「マイクロ・ビキニの王国で、ミニ・スカートがスキャンダルに」
というタイトルで報じられていました。
ほんとにね、あのリオのカーニヴァルのことを思うと、
なんでミニ・スカートくらいで……
と思っちゃいますよね、もちろん。

ブラジルも、やっぱり都会と田舎ではその辺の基準がちがうんでしょうか?
それとも、ネット上の記事では触れられていなかったけれど、
なにか宗教的な戒律でもある大学なんでしょうか?

ここまで書いたら、やっぱり動画も付けますね;

http://www.youtube.com/watch?v=u0jFvqAasBY&feature=related

集団て、こわいですね~

2010年10月8日金曜日

嬉しかったこと



一昨日、白水社のカンケさんとお目にかかり、
色々新しい情報を教わったんですが、その中に、
このところ最も気にかかっていたことのに関するものも含まれていました。
それは、『世はいかにして~』の売れ行きです。
結果は…… 
「予想よりいいみたいです」
OK! 
これは、白水社の営業や宣伝の方たちのおかげですね。
ああいう本をせっかく出してもらったので、
なんとか白水社に恩返ししたいという気持ちは強いんです。
もちろん、読んでくださった方にも、なにかのヒントになってくれれば、
1番いいんですけど。
来週のイベントに向けて、わたしもまた読み始めました!

          ◇

そういえば昨日、NHK出版のアキ子さんから厚い封筒が届きました。
なになに? と思って開けてみると、
これがラジオ・リスナーの方からのハガキの束でした。
一枚一枚、丁寧に読ませてもらいました。
ほんとにね、テキスト作ってるときも、収録中も、
いつでも聞いてくださるみなさんのことを忘れたことはありません。
それはほんとう。
でもやっぱり、こうしてほんとに聞いてくださったからのハガキを頂くと、
感激もひとしおです。
特に、「今週の一曲」や、
連載の「フラ語ワールドへの招待」に関する感想が多いのに、
少し驚きました。
今回の「曲」や「招待」は、「シャンゼリゼでカフェオレ」という感じでは
まったくなかったので、
はじめてフランス語に接するかたは面食らってしまうかも、
という心配もあったからです。
でも、意図を汲んでくださる方がたくさんいらして、
ほんとにホッとしました。
嬉しかったです!

アキ子さん、先日ここでご紹介した、
ほんとにくだらなくて面白い、
あのお買いもの狂いのレベッカの本をお読みになったそうです。
感想は、「痛快!」。
そうなんですよね。
ちなみにわたしは、シリーズの2に入っています。
今も、通勤の行き帰りと風呂限定なんですけどね。
          ◇

今日の2年生の授業では、
ブラジルのミニ・スカート事件のニュースを読みました。
その話は、明日に!

2010年10月6日水曜日

あと1週間です!



今日は水曜日、ということは……
ABCでのイベントまで、あと1週間になりました。

http://www.aoyamabc.co.jp/10/10_201010/1012.html

「一期一会」、なんていいますが、今回はまさにそれ。
(でも理屈を言うなら、すべては「一期一会」とも言えそうですが。)
よろしければ、青山でお目にかかりましょう!

         ◇

大学では、そろそろ来年度の時間割作成の季節です。
変更がなければどうってことはないのですが、
そういう年ってあまりないかもしれません。

あしたは白水社のカンケさんにお目にかかり、
ちょっと打ち合わせです。
(カンケさんは、『フラ語ボキャブラ』の中の、
「カレー日和」にも登場しています。)

でそれを含めて、気にしなきゃいけないことが……
いや、数えないでおきましょう!

2010年10月4日月曜日

Goutte-d'Or


もう10年も前のことですが、
その年フランスで1番売れた作家は? という記事があり、
なんと1位は、ゾラだったのを覚えています。

ゾラが活躍したのは19世紀後半、というか、
いわゆる第2帝政期だったわけですから、
もう100年以上たっているわけです。

だから意外と言えば意外ですが、
まあゾラは作品数が多いし、どれも文庫化されているし、
どこの本屋にもあるし、たしかに部数でいえば、
相当上位だろうとは想像できます。

それに考えてみれば日本でも、
漱石はまだまだ読まれています。
きっとそんな感じなんでしょう。
ちょっとノスタルジックでもあり。

なぜゾラの話かと言えば、実はあのバルベス駅のすぐ近くに、
グット・ドール通り(画像)というのがあり、
そこからほんの数メートル小道を入ったところが、
『居酒屋』の主人公が新居を構えたところだと分かったからなんです。

新潮文庫の訳では、ここは「グート・ドル新町」となっていて、
この「新町」がよく分からなかったので原文を見ると、
la rue Neuve de la Goutte-d'Or
となっていました。
これはフツーに考えれば、「グット・ドールのヌーヴ通り」ですね?
ところが!

この前パリで買った細かい案内書にも、
例の2巻本のパリ歴史通り辞典にも、「ヌーヴ通り」はないんです。
う~ん、これはもしかして……

そうでした、やはり通りの名前が変わっていました。
しかも、『居酒屋』の連載が終わったまさにその年に!(1877年です。)
今は、イスレット通りと呼ばれ、これがバルベス駅のほんとに近くなんです。

モンマルトル生まれのゾラは、『居酒屋』を書くにあたって、
この界隈のことをずいぶん調べたようです。
(それが彼のやり方ですね。)

バルベスもグット・ドールも、日本ではそれほど耳にしませんが、
行けばやっぱり面白いです!

2010年10月2日土曜日

Rocé


サヴァ?

今日はとっておきのミュージシャンをご紹介しましょう。
その名は、Rocé です。

彼のことは、もともとは中村さんから教わったのですが、
これがなかなか面白いんです。
Rocé の父親は、ロシア系ユダヤ人で、国籍はアルゼンチン、
で、フランスに住んで、アルジェリア独立戦争の時は、
解放戦線に加わり、そこで恋人、つまりRocé の母親と知り合います。
彼女はアルジェリア人で、黒人で、ムスリム。
でその2人の子が、Rocé なわけですね。

Rocé 自身はフランス人のようですが、
彼のアイデンティティーは、Mmmm... 複雑です。
単に白人と黒人の両親というだけではなく、
ユダヤとイスラム、
ロシア、アルゼンチンとアルジェリア(アフリカ)、
それらがすべてRocé の中に流れ込んでいるわけです。

やっぱりこの曲でしょうか。Je chante la France です;

http://www.youtube.com/watch?v=b8VPe0y_jmA&feature=related

いいでしょ?
歌詞もね、なかなか深い感じ。

ちょっと驚きなのが、彼の CD が、日本のアマゾンにあること;

http://www.amazon.co.jp/Identite-En-Crescendo-Roce/dp/B000F39MEW/ref=sr_1_3?s=gateway&ie=UTF8&qid=1286016955&sr=8-3

実はこれ以外にもアルバムはあるんですが、
いまのところこれだけですね、日本のアマゾンでは。
でもこのアルバムは、とてもいいと思います。
(画像は新譜のジャケットです。)