2010年12月29日水曜日

「これほど幸せ」


ちょっと書くのが遅くて申し訳なかったのですが、
雑誌「クーリエ・ジャポン」の1月号が、
「なぜフランス人は幸せなのか」
という特集を組んでいます。
独自取材も、いつもより多いようです。

たとえば世帯収入。フランスの世帯の、
90%が、5.8万 € 以下、
60%が 3.2 万 € 以下、
30%が1.9 万 € 以下、
だそうです。(表が出てます。)
日本の場合は、世帯収入の中央値からすると、
50%が 448万円以下、
ということになります。
もちろん、医療・教育費や福祉など、取り巻く環境の差は大きいですが。

最低労働賃金も、時給に換算すれば、
フランスの場合1050円くらい、
日本は、地域によっては700円くらいですから、
こちらはフランスのほうがだいぶ高いです。
(でもその分、この最低賃金で働く労働者が15%いて、
彼らの労働意欲の無さが問題になっているようです。)

それから、フランス人二人の、1週間の献立が紹介されています。
これは…… ちょっとできすぎの印象。
まあね、日本でも、これは個人差が大きいでしょうが。

ただ1つ付け足すなら、
(AYAという、コートディヴワールのBDの紹介はあるものの)
登場するフランス人はほぼ全員白人です。

もう売り切れてしまったようですが、古本は出回っています。
もし、ご興味があれば!

手帳


今日から、新しい手帳を使い始めました。
去年と同じもので、ただし色違いです。

使い終わった手帳をぱらぱらめくると、
ああこんなこともあったっけ、というようなことが、
ポツポツありますね。
これほんとに今年だった? というか。

大学の仕事以外で、
今年1番エネルギーを注いだのは、
これはもうまちがいなく「まいにちフランス語」でした。
15分とはいえ、全96 回ですから、延べ時間にすると…… 24 h.
長いような短いような。
でも、「完走できました」というお便りがいくつかNHKに届けられ、
とても嬉しかったです!
ラジオは、テレビの「視聴率」に当たるのものがないので、
やはり、こうした生の意見が貴重です。
聞いてくださった方は、ありがとうございました!

もう1つは、10数年ぶりのパリ訪問でしょうか。
この間、パリの変化はもちろんあったのでしょうが、
むしろこちらに、パリやフランスに対する感じ方の変化があり、
そのせいで、以前受けたパリとはまったく違う印象を持ちました。
(これは来年4 月以降、12回連載させてもらえることになっているので、
もしよろしければ、立ち読みでも SVP !)
それにしても、やっぱり、実際に足を運ぶっていうのは、
とても大事なことなんですね。
来年は、行けるかな~??

これから1年、この手帳を使っていくのかと思うと、
ワカモノのような希望が湧いてきます!(ということにしました!)

2010年12月27日月曜日

one by one


昨日、ここで書いた仕事、
おかげさまで午後6時には終わりました。
すぐにコンビニまで行って、白水社に発送。
ホッとしました!
(明日の午前に着きますよ~! 仕事納め直前ですみません!)

でその足で、ついでにインフルの予防接種に。
わかってます、たしかに遅いです!
でもまあ、打たないよりはましだと信じて。

そして帰ってみると、おや、このNHKからのメールは……
というわけで、
結局新たな仕事が年を越すことに。
これは、すご~~く急げば、まる2日あればできる量なのですが、
いかんせん、みんな休みに入るはずです。
OK、じゃあこの仕事については、抱いたまま年を越しましょう!
(といっても、締め切りは5日なので、わりとすぐですけど。)

2010年12月26日日曜日

クラウン


Boxing Day にあたる今日26日、
日本では最後のM-1 でした。
ただわたしは(以前も言い張った通り)、
東京ダイナマイトとタイムマシーン3号を応援しているので、
両コンビが準決勝で姿を消してから、
ちょっと、いや大いに残念だったのですが……

でも、やっぱりM-1は大したものですね!
色んな笑いが、「惜しげもなく」という感じで披露されていました。
個人的には、スリムクラブが1番よかったと感じました。
ただ、笑い飯の1回目はたしかに◎だったし、
この9年の「合わせ技」優勝ということでも、十分納得はできますね。
おめでとうございました!

笑うことができるのは、(Cheshire Cat 以外では)人間だけ。
先日お話した「風」の女優・柴崎さんも、
メッセージを伝えるにはクラウンが必要、
とおっしゃってました。

そして今年もあと5日。
昨日から始めた仕事を、なんとか明日の夜には発送したいです。
締め切りは年明けなんですが、
年越しで持っていたくない!
がんばろー!(オー!)

Africain Revolution


書こう書こうと思いつつ、今日になってしまいましたが、
「今週の1曲」でもご紹介したTiken Jah Fakoly、
新譜が出ています。
(そういえば、この新譜のことを知ったのは、
パリ旅行中に見かけた、メトロのポスターででした。)

http://www.dailymotion.com/video/xez9w8_african-revolution-le-nouvel-album_music

何日か前、Abd al Malik の新譜について、
彼のスタイルに変化があったことを書きましたが、
こちらは変化なし。(いい意味で!)

小学校に行って勉強しろ、
そうすれば、
お前の国が直面している問題がわかるから

たしかに教育は、と~~っても大事ですよね。

なんだか話が行き来して申し訳ありませんが、
Abd al Malik の新譜の最後の曲、Château Rouge のことを、一言だけ。
この、アルバムのタイトル曲、実は10分以上ある、
なんというか、物語歌というか、叙事詩というか、
とにかく放送劇のような曲なんです。
で、おもしろいの!
(とてもシングルカットできるような作品じゃないので、
聞くにはアルバムを買うしかないんですが。)

勢いで、彼の書いた本を読み始めました!

2010年12月24日金曜日

このままでいいのか……


今日で、ついに今年の授業が終わりました。
学生のみなさんも、イヴまでお疲れさまでした!
(年明けには、まだ試験がありますけどね!)

今週はわたしも、イヴェントが2つとNHKの仕事があり、
あっという間の1週間でした。
で、イヴェント第1弾は『ハムレット』でした。

http://www.kaze-net.org/repertory/rep_hamlet

この芝居、ほぼ400年前の作品なわけですが、
まあこして見てみると、今でも上演される理由がわかります。
なにしろ、面白いんですね。
ただ、どこが面白いのかは、なかなか言いにくい。

今回は、小田島雄二訳だったので、あの有名なセリフは、

このままでいいのか、いけないのか……

となってます。
今回の演出では、
浴槽のような、水の入った透明なケースを押しながら、
ハムレットはこのセリフを se demander (自分に言う)します。
そして舞台の中央まで来ると……
いきなり水にザブン!!
しかもその後、水の中で見開かれたハムレットは目が、
観客を凝視してくるのです。

わたしたちは se demander します、ここはハムレットの内なる世界なのか、
それとも、
わたしたち自身の内のハムレットと、今対面しているのか、と。

このままでいいのか、いけないのか……

湧きあがるもつれた感情を、このまま押し込めておけばいいのか、
それとも何か行動に移るべきなのか。

終演後、ガートルード役の柴崎美納さんと、
お話しさせていただきました。
(左側の女性です。)

色々興味深い話を伺ったのですが、
なにしろ、ついさっきまで彼女は、
妖艶で不実で可憐で、成熟した子娘だったわけなので、
なかなか「現実」とピントが合いませんでした!

このままでいいのか、いけないのか……

素晴らしい公演でした。

            ◇

そして昨日は、Ayuo さんのレクチャー&パフォーマンスでした。

http://monpaysnatal.blogspot.com/

Ayuo さんとわたしは2歳ちがい。
で、打ち上げでお話をうかがっている時、
なぜかフェリーニの『サテリコン』に話題が及び、
2人とも小学生時代に見ていることが判明。
(Ayuo さんはNYで。
もちろん2人とも、親に連れて行かれたわけですが。)
でもAyuo さんのほうは、
先日映画で描かれた晩餐を再現する企画に、
音楽担当として参加なさったとか。
素晴らしいですねえ、ちゃんと経験が生きていて!
(それに引き換え……)

歌っているのがAyuo さんです;

http://www.youtube.com/watch?v=wlCTsJXvSK4

今週の2つのイヴェントは、
ちょうどいい2010の締めくくりになりました。
「風」さん、Ayuo さん、Merci beaucoup !

2010年12月20日月曜日

『警察の誕生』


わたしの研究室のお隣は、中国語の清水さんで、
そのまたお隣が、MR.ハプスブルクの異名をとる、菊池さんです。
で、この隣組3 人でランチを食べることがままあり、
わたしは2 人から少なからず勉強させてもらっています。
そして!
菊池さんの待望の新刊が発売になりました。

『警察の誕生』  

です。

ここを読んでくださっている方は、
フランス関連に興味がある方も少なくないと思うのですが、
この本、第5章は、

<パリ「警察」の誕生>

なんです。
ああ、そうだったのねえ、と思わされる個所満載です。

そのほかにも、「まいフラ」でも登場したジャン・ニコや、


あのフィリップ・オーギュストPhilippe II Auguste(=フィリップⅡ世)、


そして映画にもなっているヴィドックまで顔を見せます。


これで735円ですから、お安いですねえ!

2010年12月19日日曜日

OFFSIDE


今朝は起きた時、
これが平日だったら休講しなきゃ、
というくらい体調が悪かったのですが、
その後薬飲んで昼過ぎまで寝たら、
まあなんとか「フツー」のゾーンに入ってきて、一安心でした。
みなさんも、お気をつけくださいませ!

というわけで、午後、
昨日に続いてのイラン映画で、『オフサイドガールズ』を見てみました。

舞台は、2006 年ワールドカップの最終予選、
イランVSバーレーンの試合会場です。
イランでは、男性のスポーツを女性が観戦することは禁止されています。
でも、見たい!
という女性たちはもちろんいて、
彼女らは、あの手この手で会場に入りこもうとしますが……
予告編はこちら;

http://www.youtube.com/watch?v=BCpvQyxXyW4

話は、これだけです!
でも、なぜかおもしろい。
まず、女性たちの果敢さそのものがなかなかだし、
当時の日本の「熱狂」と重ね合わせることもできるし、
徴兵のため仕事についている「兵隊さん」たちの人生も垣間見えるし。

監督は、当然、女性たちの家族を描きこむ可能性も考えたと思うんです。
でも、その選択肢はきっぱり捨てて、
90分の、ドキュメンタリー風の作品に仕上げました。
潔いよなあ、と思わざるを得ません。
広げたくなるのが人情ですからね。

サッカー・ファンなら、より一層楽しめるでしょう。
アリ・ダエイやザンディなどの名前も、繰り返し登場します。
(ダエイの名前は、トイレの落書きにもデカデカと。)

これは、明後日の「ワールド映画」ゼミで見せてもいいかな。

2010年12月18日土曜日

私が女になった日


今日の東京は、気持ちのいい天気でした。
そんな中、部屋の電気を消して、
イラン映画、『私が女になった日』、を見てみました。

この映画は3部構成で、それぞれ、
少女(ハッワ)、30台(?)の女性(アフー)、そしてかなり年配の女性(フーラ)、
が主人公です。

ハッワは今日 9 歳になり、それ以降、
もう男の子と遊ぶことは禁じられてしまいます。
宗教を背景にした幼い別れが、淡々と描かれます。

アフーは今、女子自転車レースの真っ最中。
黒いチャドルに身を包んだ女性たちが、海辺の道を疾走します。
そしてアフーのもとには、入れ替わり、馬に乗った男が追いついてきます。
レースをやめて、家に帰れ、というのです。
でもアフーは、離婚の意思を固めています。

飛行場に降り立ったフーラは、荷物運びの少年たちを従え、
バザーへと買い物に行きます。
彼女の指に巻かれた何本もの紐は、それぞれ、
買うべき商品と一致しているらしいのです。
冷蔵庫、洗濯機、鏡、ベッド…… 
これって、新婚さんの買うものじゃ……?

http://www.youtube.com/watch?v=194rTpQhQF0

静かな映画です。
ほとんど単調と言ってもいいくらい。
ただ単調さは、時に魅力的になることもありますね。
それが今回です。
フーラの話の終わり近くには、
予想しなかった演出が用意されていて、あっ! 
と思わされました。
そして一気に、監督のメッセージが迫ってきました。

面白おかしくはまったくないけれど、
いい映画だと思いました。

2010年12月16日木曜日

Malik


1週間ほど前に、ちらっと、Abd Al Malik の名前が出ました。
最近、彼のCDをよく聞くのですが、
1か月ほど前に、彼の新譜が発売されましたね。
タイトルは、Château Rouge ! これは期待していたのですが……

この新譜、今までのマリックとはかなり異質。
以前の曲をご存知の方なら、
この1曲からだけでも、それは伺えると思います;

http://www.youtube.com/watch?v=lYO8NtVW4Q8

Mmmm
歌ってるんですね、マリック! でも……
わたしは以前の曲のほうが好きです。(マリック、ごめん!)
いい曲は多いけど、たとえばこれ;

http://www.youtube.com/watch?v=X8Q9tDkB7x8

これはアルバムDante に入ってます。

そして仕事がらみでも、マリックの曲は興味あります。
たとえばDante からなら、PARIS MAIS... 「でも、パリ……」とか。
マリックの歌詞はわたしには難しいんですが、それでも、
これはつかみたいと思ったら、やっぱり訳してみないとピンときません。
で、挑戦してみました。1部分だけご紹介させてください;

そしてパリよ、俺はおまえを抱く、俺の腕はあまりに弱々しいけれど。
HLMタンゴを踊るんだ、おまえが俺を愛してくれるように。
奇妙に似合いの俺たちカップルは、子供たちをビビらせる。
でもあいつらも分かるだろうさ、いつか大人になる日には。
色とりどりのおまえの美しさは、俺をくらくらさせる。
だから俺は、魅惑的な接続法をこねくり回すんだ。
おまえの郊外たちを、おれはマルコムXする、そこは俺の心が住む場所。
誰でも愛することにするさ、ワレ愛するゆえにワレ実存す、だからな。

http://www.youtube.com/watch?v=UMPKL_8KX8I

あんまりうまくないですけど、
いったん日本語にするほうが、やはりつかめる気はします。
(比べるのもおこがましいですが、堀口大學もそう書いてた記憶があります。)
ちなみに「HLMタンゴ」は、マリックの曲のタイトルです。

*Dante 、お買い得だと思います。
http://www.amazon.co.jp/Dante-Abd-Al-Malik/dp/B001GDJ934/ref=sr_1_1?ie=UTF8&s=music&qid=1292505569&sr=8-1

2010年12月15日水曜日

Citizen Dog


最近は、1日1本みたいな気分になっていて、
今日はちょっと気分を変えて、タイ映画、『シチズン・ドッグ』を見てみました。
舞台であるバンコクにも興味がありますが、
この作品、<タイ版『アメリ』>とも言われていて、
その辺も確認したいところです。
予告編はこちら;

http://www.youtube.com/watch?v=jn47ifAAOVw

いかがですか? 見たくなるでしょう?

わたしも個人的には、おもしろいと思ったんですが、
正直に言えば、やや物足りなさも残りました。
物語が、なんというか、どんどん横に滑って行き、
それはそれでおもしろいのですが、
どうしても垂直的なガツンという感じにはなりません。
でも、そういうものとして見れば、楽しめるとは思うし……

Mmm、こうして書いていても、我ながら中途半端な感想です。
ちょっと時間をおいて、もう1度見ます!

2010年12月14日火曜日

Femme d'Islam


今日はまたまた、Yamina Benbuibui の最初の作品、
Femme d'Islam『イスラムの女性』を見ました。
これも先日の『移民の記憶』同様ドキュメンタリーです。

内容は……
これは、例のヘジャブ問題で揺れた2つの意見が中心にあると言ってよさそうです。
つまり、
「ヘジャブは、イスラム的女性抑圧の象徴だ」
 と
「ヘジャブは、それを被る<わたし>の精神を解放し、自由にしてくれる」
という2つです。
もちろんそれ以外にも、いろんな具体例が出てきますが、
この2つの立場のせめぎ合いとみても、
そんなに的外れではないと思います。
そういえば、オムニバス映画『パリ・ジュテーム』の「セーヌ河岸」では、
ナンパされた(?)若い女子学生が、第2の立場を表明していました。


難しいですね、これは。
ただ中に一人、きっちりヘジャブを被った若い女性が登場するのですが、
(そして彼女もやはり第2の立場なのですが、)
「抑圧されたイスラムの女性なんてみたことない」と言い切る彼女に向かい、
インタヴュアーが、
じゃああなたはアフガニスタンやイランの状況をどう説明するのか、
とつっこむ場面があります。
ヘジャブの女性は、完全にシドロモドロになってしまうのです。

イスラムに、その教えに沿った生活に、まったく女性抑圧の要素がないと言うのは、
これはやはり無理でしょう。
『自由に生きる -フランスを揺るがすムスリムの女たち』
という手記の中でも、その辺のことは詳しく紹介されていました。


こうしたイスラムの現状を、
なんとか今の世界に合うように「近代化」しようという動きはもちろんあります。
ただ一方で、昔に戻ろうとする「原理主義」的な動きもあるわけです。
(「原理主義」=「過激派」ではありません。後者は前者のごく一部。)

……それにしても「フランス」は、
考えるタネをたくさん供給してくれること!

2010年12月13日月曜日

10 ans en 1 minute 25


子供を持つと、多くの親は写真を撮りますね。
そしてたとえば、生まれたその日から毎日、
毎日1枚撮り続けたらどうだろう、なんて、
思う人もいるでしょう。でも、
いざそれを実行に移すとなると、これは膨大な他の問題が生じそうです。
にもかかわらず!
それを現実にした人がいるようです。
しかもその娘の10年の成長を、1分25秒にしたというんです;
(広告 15秒の後に)

http://www.zakstudio.com/2010/12/09/10-ans-en-1-minutes-25/

このあとも、続けるんでしょうか??

2010年12月11日土曜日

Mémoire d'Immigrés


学生の頃は、ビデオレンタルというものがなくて、
映画を見るなら映画館に行くしかありませんでした。
だから、見たい映画がある場合には、
どこかの映画館でかからないか注意して、
お、発見!
という場合には、おっとり刀で駆けつける、という具合でした。
だから、あちこちのミニシアターなんかにも、足を運びましたね。

それが今は!
ビデオレンタルの時代を通過した後、
ネットの時代が到来し、古い作品もマイナーな作品も、
もちろんタダではないけれど、
見ることができます。
こんな状況、学生時代には思いもよりませんでした。

で、今日見たのは、『移民の記憶』というドキュメンタリーです。
(なんとなんと、日本版がありました!)
「父」「母」「子供」(全部複数)という3部構成で、それぞれ1時間弱あります。
出だしは、ちょっと重たげです;

http://www.youtube.com/watch?v=c4uqC6TE-cI

「父」の世代、つまり戦後、
フランスの経済発展のための労働力として動員された男たち。
彼らの金言は、「黙って働け。目立っちゃだめだ」だったといいます。
そう、だから彼らの口は重く、今やっと開かれたという感じ。
厳しかった現実が語られます。

「母」は、70年内の石油ショックを経て、新規の移民が停止した後、
アルジェリアから呼び寄せられた女性たちが中心です。
屋根もないバラックに住み、HLMに申請しても、
移民枠は一杯だと断られ…… 
彼女らがフランス語の読み書きを勉強できたのは、ずっと後になってからです。

「子供」は、いわゆる「移民2世」たち。
彼らは「父」と違い、黙ってはいません。
フランス流に(とわたしには見えてしまいます)、権利を主張し、
83年の「ブールの行進」に代表されるデモを打ちます。
とはいえ、彼らに対する差別がなくなったわけではなく……

この作品を見ようと思ったのは、
以前ここでもご紹介した『アイシャ』という作品がきっかけです。
そうです、『移民の記憶』は、『アイシャ』と同じ女性監督、
Yamina Benbuibui の作品なのです。

それにしても驚いたのは、
『アイシャ』があんなに明るく、全体に軽快なトーンだったのに、
『移民の記憶』のほうは、ほんとに真正面から「歴史」と向き合い、
重くなることなどまったく気に留めていないことです。
このベンギギという監督、骨があるんですねえ。

最後に一言いうなら…… それは「子供」たちが魅力的なこと!
中学生になるかならないかの子供たちが、
時にフランスを憎んだり、ル・ペンを徹底的にこき下ろしたりしながら、
一方でおしゃれを語り、アイデンティティーを探ります。
新しい時代が来るんでしょうか……?

*この歌のクリップ、

http://www.youtube.com/watch?v=nYiNVtNUJrY

背後の画面に映し出されているのも、まさに『移民の記憶』です。

2010年12月9日木曜日

Franck Spadone


というわけで、今日見たのは、
『ストリッパー・パリ18区』
です。主役はモニカ・ベルッチ。
まあこのタイトルでこの主役なら、だいたいどんな映画か想像できる気がしますが、
実際その範囲にあると言えそうです。
ただ、一応ノワールな雰囲気を醸し出しているものの、
暴力も露出もかなり控え目。
ベルッチ・ファンには、物足りない、かな。

「18区」映画として見ていると、どうしても、
画面に現れる番地表示がとても気になるのですが、
この映画は、おそらく故意に、番地が分からないようにしてあるようです。
というのは、番地が入ったほうがむしろ自然なガカクのときでさえ、
あえて表示が見えないようにしているからです。
どこでもないどこか、ということにしたかったんでしょうね。

そして原題は、Franck Spadone なんですが、これは、
モニカ演じるワルモノの情婦に一目ぼれする青年の名前です。
(スタニスラス・メラールが演じています。)
日本題にある「18区」みたいなニュアンスは、まったくないんですね。

『チャオ・パンタン』、『パリ、18区、夜』、『ストリッパー・パリ18区』
と見てきましたが、共通点は、やはり「ノワール」的だということでしょう。
(でもこの結論は、見なくてもほとんど予想できるわけですが。
というのも、古いノワールにも、18区を舞台にしたものは少なくないので。)

いつかどこかで、この辺のことを書いてみたいです。

2010年12月8日水曜日

樹木 木と人の心


今、明治大学の生田キャンパス(ってわたしの勤め先ですけど)では、

「樹木  木と人の心」展

が開催されています。

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わたしたちの暮らしのすぐそばにある樹木。このたび理工学研究科ディジタルコンテンツ系に所属する学生が中心となって、樹木と人の関わりをテーマに掲げた作品展を開催します。


出品作品は写真、映像、絵画、詩、オブジェ、音響など幅広く、テーマに関連した200冊あまりの図書の展示も行います。また、ゲストアーティストとして、国内外の美術館やギャラリーで数多くの作品を発表し、近年、注目を集めている佐々木愛氏も参加します。

ぜひ、ご来場ください。

■会期 2010年12月5日(日)~2011年1月10日(月)

※12月28日(火)~1月4日(火)は休館

■時間 [平日・12月23日(木)] 9:00~19:00
[土] 9:00~18:30
[日・祝] 10:00~16:30
[12月25日(土)~27日(月)、1月5日(水)~7日(金)] 10:00~16:30

■会場 明治大学生田図書館 Gallery ZERO
川崎市多摩区東三田1-1-1(小田急線生田駅下車、南口から徒歩約10分)

TEL 044-934-7945

■主催 明治大学大学院理工学研究科ディジタルコンテンツ系管啓次郎研究室
■問合せ jyumoku2010@gmail.com(「樹木 木と人の心」展実行委員会)
■関連イベント 音楽家Ayuoによる特別講義「蛇と樹 音楽の歴史的・神話的起源」

[日時] 12月23日(木・祝) 15:30~17:30
[会場] 明治大学生田キャンパス中央校舎6Fメディアホール
予約不要・入場無料

※一般の方もご来場いただけます。

図書館入口ゲート横の呼出ボタンにて係の者をお呼びください。
※お車でのご来校はご遠慮下さい。

***********************************

これね、心が静まります……

眠くない


前回、『チャオ・パンタンTchao pantin』のことを書きましたが、
実は(ほぼ)同じタイトルの曲(Ciao pantin)があります。
あのAbd Al Malik をフィーチャーした、Wallen の曲です。

http://www.dailymotion.com/video/x89s5f_wallen-feat-abd-al-malik-ciao-panti_music

Wallen は、モロッコ系のスター歌手です。
hip-hop もありますが、R&B も得意。
「愛だの恋だの」派ではなく、むしろ社会的なメッセージというか、
若い子たちへの応援歌のような歌も多い印象です。
この Ciao pantin もやっぱり、若い子たちに向かって、
誰かの、あるいは何かの、操り人形になっちゃダメ!
と歌っています。

夫であるAbd Al Malik との共作としては、Adam et Eve もあり、
これもなかなかいい歌です。
まあね、Abd Al Malik と一緒なら、それだけで、
あるラインはクリアーすることが保証されたようなものですけど。

            ◇

18区つながりということで、今日は『パリ、18区、夜』という映画を見ました。
(原題は J'ai pas sommeil. 「おれは眠くない」)
これが…… イマイチ!
途中で止めようとまでは思わなかったけれど、
そしてストーリーは悪くないと思うけれど、
わたしには、編集がゆるすぎる&重い感じ。
(でも一方で、監督のクレール・ドニに熱心なファンがいるのも、
それはそれで分かる気はします。マジで。)

http://www.youtube.com/watch?v=Dr93gbX166Y

リトアニアから、ダンサーを夢見てパリにやってきた若い女性。
彼女はたまたま、老女連続殺人犯をつきとめてしまいます。
犯人はゲイで、彼の家族はマルチニック出身。
そして犯人の兄は、幼い娘を連れて、
マルチニックに帰る計画を立てています……
ね、おもしろくできそうでしょ?
惜しいなあ。

18区については、もう1本用意があります。
見ます!

2010年12月6日月曜日

TCHAO PANTIN


今日は、買っておいたDVD、『チャオ・パンタン』を見ました。

この映画については、以前少しここでも触れましたが、
こうしてじ~っと見るのは、そう、かれこれ20数年ぶりでしょうか。
日本公開は1986年で、その後何度か授業で見せたりしました。
(舞台のほとんどが夜なので、
ちゃんとしたAVルームがある大学でだけ、見せました。
カメラマンは、ブルーノ・ニュイッテンです。)

http://www.youtube.com/watch?v=GlfbpZ0Q8tk

この予告の冒頭のシーン、
(そして上のジャケ写も)
これは、バルベス近くのシャルトル通りですね。
背景にメトロが見えますが、
左はラ・シャペル、右はバルベスです。
ちなみに主人公が働くガス・スタンドは、
ラ・シャペル駅前の、ラ・シャペル広場がある位置ですね。

大作でも、名作でもないけれど、ちょっといいです。
ああ、フィルム・ノワールだなあ、という感じ。
夜の、濡れた石畳。そんなイメージ。

この映画が、単なるフィルム・ノワールと違うのは,
アンコニナ演じる青年が、アラブ系ユダヤ人だということ。
ベルヴィルあたりが物語の中心なんですが、
だからこそ、この手の映画であっても、
白人ばかりとはいかなわけですね。
(監督のクロード・ベリ自身もまた、ポーランド系ユダヤ人です。)
ちなみに彼の部屋の本棚には、
恐るべき数のクセジュ文庫が詰め込まれていました。

それからタイトルのパンタンですが、
これはまず「操り人形;道化」みたいな意味があります。
(ゴッドファーザーのポスター、思い出しますね。)


それから地名として、パリのPorte de Pantin があります。
ベルヴィルの近くです。
原作小説のタイトルが、 pantin と小文字で始まってるので、
やはり第1義的には「操り人形」でいいのでしょうが、
地名のことも、さらには、Pantin を Paris の別名だという見方もあるようです。

ただ、久しぶりに見て思うのは……
かつて、主人公はだいぶ年上に見えたのに、
今は明らかに年下!
う~ん、そうかそうか。そう思ってるのか。
そんなに思いつめなくても、なんて言いたくなる場面もあって……

18区を舞台にしたノワール系の作品、
もう少し見てみるつもりです。

*追記:
2012年11月発売の『エキゾチック・パリ案内』(平凡社新書)の中で、
この映画の舞台について、詳しく書きました。
よろしければ!

TRES FROID


Bonjour !
東京は今日も暖かですが、
世界の天気予報を見ると、

パリ          5          1
NY             3      -1
ロンドン  1      -2

となっています。
ちなみに札幌の今日は  9       3      です。

パリは、だいたい札幌の緯度ですが、
ここんとこパリのほうが寒いですね。

2010年12月5日日曜日

ZZ


先日、2022年ワールド・カップの開催地が、カタールに決まりました。
ご存知のように、日本も立候補していたわけですが、
はっきり言って、日本国内が、
それに向けて盛り上がっていたという印象は持っていませんでした。
まあそれはともかく。

アメリカの応援には、クリントン氏や、
モーガン・フリーマンの顔が見えました。
ベッカムや、パク・チソンの顔も見えましたね。
まあそれもともかく。

ところでみなさん、カタールの招致大使していた大物、ご存知ですか?
そうです、ZZ こと、ジダンその人です。
彼はこの招致大使役を務めることで、
かなりの大金を手にした模様だと、
オーストラリア・ヘラルド・トリビューンが伝えているそうです。
でも、なんだか変な感じがしますか?
ジダンがカタールの招致大使って?

http://www.eurosport.fr/football/coupe-du-monde/2022/15-millions-pour-zidane_sto2568304/story.shtml

事情は明白です。
カタールでの開催が決まった後、ジダンは、
初めて「アラブの国」で開催されることを幸せに思う、
というコメントを出しているのですから。
カタールは小国だけど、アラブ世界を代表している、とも。

ZZ はフランスでは「神」だと言われますが、
アラブ世界でもそうなんでしょうか?

Miss France 2011


Miss France 2011 の紹介ヴィデオです。
聞き取りの練習によさそうです。

http://tele.premiere.fr/News-Videos/VIDEO-Miss-France-2011-Qui-est-Laury-Thilleman/(gid)/2466211

それにしても、わたしが学生の頃は、
「ミス・コン」なんて女性に失礼!
なんて言われてましたが、
最近では、「ミス・コン」に出場する女性の意思を尊重すべき、
なんて声も聞こえてきます。

ヘジャブは、女性蔑視の象徴なのか、
それとも、女性たちの自由意志の表現なのか。

似てるような、似てないような。

2010年12月4日土曜日

C'est le burger qui triomphe.


パリのカフェやビストロでの plat du jour (本日の定食)と言えば、
これはもう steak frites(ステーキのフライドポテト添え)だと思ってきましたが、
ちがうみたいなんです、どうやら。

http://fr.news.yahoo.com/2/20101203/tcu-le-burger-envahit-cafes-parisiens-et-0b4785e.html

Mmm, それにしても、バーガーだとは!

でもこの記事、ちょっとおもしろいですね。
パリのアメリカ料理の1番の老舗(?)の店主によれば、
バーガーを食べる時、
フランス人はパンにこだわり過ぎると。
「だってアメリカ人とって、パンは手を汚さないためのものなんだから!」
ああ、そうだったんだ!

でも記事の締めくくりには、この流行は「はかない」かもしれないとも。
まあこれはね、東京だってほんとにそう。
ついこの前、大行列ができていたあのドーナツ屋さんも、今はガラガラ。
ちょっとブレイクしかけているプレッツェルも、
仮にほんとにブレイクしたとしても、
人気が長く続くとは思えません、申し訳ないですけど。
(でも経営者たちは、
さっさと儲けて次に行く気なんでしょうけどね。)

steak frites, 単純で、わかりやすくて……
わたしはこっちのほうがいいです!

2010年12月3日金曜日

J'arrive !


今朝の東京は、なんとも不穏な空でした。
起床した途端に聞こえた雷、
そして激しい雨、
濁流になった近所の川。

きっと電車が遅れて、学生たちも遅れるんだろうなあ、
と思いつつ家を出ましたが、それどころか、
わたし自身が大遅刻!
いつもは大学まで45分ほどで行くんですが、
今日はいつもより1時間! も余計にかかっちまいました。
なにしろ、交差点によっては、
5回くらい信号が変わっているのに、1ミリも進みません!
路肩には水道局のクルマが止まり、救急車も駆けつけ……

でも事務の方に連絡して、黒板に、
「Patientez ! J'arrive ! 」
と書いておいてもらったので、
学生たちは待っていてくれました。
(40分遅刻したわたしの後からも、10人ほど学生が来ました。)
今の大学に勤め始めてから、最大の渋滞でした。

          ◇

今日、大学の会議で、いくつか仕事の分担を決めたのですが、
わたしが担当する仕事の中に、来年9月の出前授業、というのが含まれています。
9月ねえ……
これじゃあ、鬼は大笑いですね!

それにしても今週は、会議が多かったせいか、
やたら背中が凝ります。
今日はいつもの入浴剤「きき湯」、ちょっと増量しようかな!?
(「きき湯」、凝りに効きますよ。)

明日


明日、みなさんおなじみの杉山利恵子先生も所属する、
明治大学文学部(フランス文学専攻)によるイベントがあります;

http://www.kisc.meiji.ac.jp/~futsubun/

明日の午後2時、お茶の水ですね。
お近くを通る場合は、どうぞのぞいてみてください。
一般の方も大歓迎だそうです!

(画像は、明日出演のマイア・バルーさん)

2010年12月1日水曜日

やわやわ


ついに、師も走る12月となりました。
はやい! 特に今年の後半は、ほんとにはやかった。
(歳のせい? まあ、それもあるかな。)

そしてもう恒例と言える、堀江さんのイベントです。

http://www.aoyamabc.co.jp/10/10_201012/vol127.html

これ、無料なんですね!
残念ながら、わたしは会議で行けないんですが(涙)、
まずまちがいなく楽しいと思います。
文章だけじゃなく、堀江さんは話もすごく上手。
堀江さんの話が未体験の方は、この機会に。