2010年12月11日土曜日

Mémoire d'Immigrés


学生の頃は、ビデオレンタルというものがなくて、
映画を見るなら映画館に行くしかありませんでした。
だから、見たい映画がある場合には、
どこかの映画館でかからないか注意して、
お、発見!
という場合には、おっとり刀で駆けつける、という具合でした。
だから、あちこちのミニシアターなんかにも、足を運びましたね。

それが今は!
ビデオレンタルの時代を通過した後、
ネットの時代が到来し、古い作品もマイナーな作品も、
もちろんタダではないけれど、
見ることができます。
こんな状況、学生時代には思いもよりませんでした。

で、今日見たのは、『移民の記憶』というドキュメンタリーです。
(なんとなんと、日本版がありました!)
「父」「母」「子供」(全部複数)という3部構成で、それぞれ1時間弱あります。
出だしは、ちょっと重たげです;

http://www.youtube.com/watch?v=c4uqC6TE-cI

「父」の世代、つまり戦後、
フランスの経済発展のための労働力として動員された男たち。
彼らの金言は、「黙って働け。目立っちゃだめだ」だったといいます。
そう、だから彼らの口は重く、今やっと開かれたという感じ。
厳しかった現実が語られます。

「母」は、70年内の石油ショックを経て、新規の移民が停止した後、
アルジェリアから呼び寄せられた女性たちが中心です。
屋根もないバラックに住み、HLMに申請しても、
移民枠は一杯だと断られ…… 
彼女らがフランス語の読み書きを勉強できたのは、ずっと後になってからです。

「子供」は、いわゆる「移民2世」たち。
彼らは「父」と違い、黙ってはいません。
フランス流に(とわたしには見えてしまいます)、権利を主張し、
83年の「ブールの行進」に代表されるデモを打ちます。
とはいえ、彼らに対する差別がなくなったわけではなく……

この作品を見ようと思ったのは、
以前ここでもご紹介した『アイシャ』という作品がきっかけです。
そうです、『移民の記憶』は、『アイシャ』と同じ女性監督、
Yamina Benbuibui の作品なのです。

それにしても驚いたのは、
『アイシャ』があんなに明るく、全体に軽快なトーンだったのに、
『移民の記憶』のほうは、ほんとに真正面から「歴史」と向き合い、
重くなることなどまったく気に留めていないことです。
このベンギギという監督、骨があるんですねえ。

最後に一言いうなら…… それは「子供」たちが魅力的なこと!
中学生になるかならないかの子供たちが、
時にフランスを憎んだり、ル・ペンを徹底的にこき下ろしたりしながら、
一方でおしゃれを語り、アイデンティティーを探ります。
新しい時代が来るんでしょうか……?

*この歌のクリップ、

http://www.youtube.com/watch?v=nYiNVtNUJrY

背後の画面に映し出されているのも、まさに『移民の記憶』です。