2011年1月25日火曜日

L'AUBE DU MONDE 

今日は、好きな女優さんの一人であるヒアム・アッバス出演の、
L'AUBE DU MONDE (『世界の夜明け』)
という映画を見てみました。
結論:引き込まれました!
まずはトレーラーから;

http://www.youtube.com/watch?v=ok3G2uccTM0

この作品は、2008年に制作されたイラク映画で、
監督・脚本は、フランス系イラク人、アッバス・ファデルです。
彼にとっては、この『世界の夜明け』が、長編フィクション第1作です。

舞台は、1990年、イラク。
とくれば、これはもう湾岸戦争の時期で、
まさにこの戦争が、物語の背景にあります。

主人公は、まず若い二人の男女。
いとこ同士でもある2人が出あうのは、
チグリス川とユーフラテス川に挟まれたデルタ地帯です。


二人は、周囲の期待通り、やがて結婚。
でもそこに召集令状が届き、若い夫は戦場へ。
そして彼は、もう戻らないのです。
(ヒアム・アッバスは、この若者の母親役です。)

でも彼は、砂漠で死ぬ間際、親友のリアドに約束させます、
妻のザラの面倒をみてくれ、彼女と結婚してくれ……

バグダット子でありながら、天涯孤独の身であるリアドは、
あのデルタ地帯の村へ向かいます。
リアドはじっとザラを見つめ……

物語はシンプルで力強く、
映像は端正で、静かで、悠々としています。
役者たちもとてもいいし。


         「あなたは別の世界の人。いつかきっとそこが恋しくなる」

ところで今回は、フランス語字幕で見たのですが、
途中、Maadan という聞いたことのない単語が出てきました。
このDico にも Petit Royal にも出てない語は、
「イラク南部の沼地に住んでいるアラブ人」、
つまりこの映画の若い夫婦やその家族たちを含む人たちのことなんですね。

で途中、「バクダッド人はMaadans を馬鹿にしてる」なんていうセリフがあり、
またその沼地での厳しい生活ぶりからしても、
たしかに、バクダッドは「遠い」のだろうと感じられました。

そしてサブ・ストーリーには、戦争を忌避したMaadanが登場。
イラク兵に捉えられた彼は、「裏切り者!」と呼ばれると、
「裏切り者はおまえたちだ。アメリカ軍が来たらあっという間に逃げ出して、
またここに来ていばりくさって」と言い返す場面がありました。

もちろん、いわゆる「国際的」な立場から見れば、
この戦争に置いてイラクに正義はなく、
逃げ出そうが戦おうがそんなことは問題じゃない、
と言うこともできるでしょう。
ただ、貧しく、情報もない閉ざされた沼地で、
フセインの兵たちの銃口に脅かされ、
戦地に赴いたMaadans も多いわけなんですね……

しっとりした、とてもいい作品でした。