2011年2月22日火曜日

LA PETITE JERUSALEM (再)


1か月ほど前、
LA PETITE JERUSALEM 『リトル・エルサレム』のことを書きました。

http://tomo-524.blogspot.com/2011/01/la-petite-jerusalem.html

その時、字幕版がフィルムセンターで上映されるとも。
で、行ってきました、京橋まで。

ただ残念ながら、ヘブライ語だと思われる部分は、字幕なし! でした。
それでも、フランス語では分からなかった部分もはっきりしたし、
見るのは2回目なので考えながら見られたし、
やはり行ってよかったです。

(以下、ネタバレあります。)

この映画は、
もちろん「ユダヤ問題」を扱っていると言えるでしょう。
オーソドックスを、完全に内部から描いていて、
監督自身、宗教的場面などは「ドキュメンタリーだ」と言っているほどです。

そしてこの問題から離れることはできないにしても、
ちょっと視点をずらせば、
これを「3人の女性たち」の映画だということもできそうです。
3人とは、主人公のローラ(18歳)、姉のマチルド(子供3人)、
そして2人の母親です。

哲学に没頭し、「欲望」を恐れ、遠ざけてきたローラは、
湧きあがる生命力の中で、ムスリムのジャメルに恋します。
ジャメルは、アルジェリア出身の元新聞記者で、
サン・パピエ(滞在許可証なし=不法滞在)状態です。
とても誠実な人で、たしかにローラを愛しているのですが、
「彼女を改宗させろ」と迫る自分の家族を捨てることができません。
それが理由で2人は別れ、
ローラは自殺未遂を起こすのです。


マチルドもまた、「欲望」や「喜び」を恐れています。
そのため夫を拒否することもあり、結果夫は浮気することに。
夫を愛する彼女は、なんとかつなぎとめたいと思うのですが、
やはり「喜び」に身を投じる覚悟ができません。
そんな時、mikvah と呼ばれるユダヤの水浴場で、
彼女はアドヴァイザーからヒントをもらいます。
戒律に触れないような、「喜び」の与え方、そして得方。
マチルドは、夫婦関係を保持できそうです。


母親は、チュニジアで若くして結婚し、
フランスで娘を2人得ましたが、夫はすでに亡くなっています。
宗教とまじないに閉じこもり、出てこようとしません。
煙を焚き、魔よけに頼るのです。

物語の最後、一家はイスラエルに行く決心をします。
それは、街のシナゴーグが放火され、
マチルドの夫が、覆面の男たちに襲われたことの結果でもあります。
ただ、ローラ一人は、パリに残ることにします。
今度は、今住んでいるような郊外ではありません。
パリです。

この映画には、何かが漲っています。
それはおそらく、戒律という檻に入れられたエロスなのでしょう。
生であり性であるエロスです。
パリに着いてからのローラの生活を、撮って欲しいです。