2011年6月5日日曜日

シリア


「ワールド映画」ゼミは、今年も開講中です。が、
まずは震災の影響で、授業数が減りそうなこと、
そしてなんといっても、現実の世界が、
特に北アフリカや中近東で、動き続けていることなどもあり、
いつもとやや違う順で見ています。
といってもまだ4本だけしか見ていないのですが。

1)『キャラメル』
2)『シリアの花嫁』
3)『扉をたたく人』
4)『イブラヒムとコーランの花たち』

つまり舞台は、

1)ベイルート(レバノン)
2)ゴラン高原(イスラエル/シリア)
   *http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20110605-00000066-mai-int
3)ニューヨーク(USA)
4)パリ(フランス)

というわけです。
この4本を並べたのは、
言ってしまえば、「シリアつながり」です。
(以下、ネタばれあり。)

ポイントは、3)でしょう。
9.11後の、アメリカの移民政策の激変を、
強制送還されるシリアからの移民青年を通して表現した映画です。
(といってもこの青年、子供時代からずっとアメリカ暮らしなんですが。)

送還される青年の母親は、パレスチナ移民で、シリア国籍です。
つまり彼女は、まずパレスチナから追放されるという経験をし、
シリアで受け入れてもらったものの、
その体制に嫌気がさして、アメリカに渡る、
けれども映画の最後では、
送還される息子を追って、シリアに帰るのです。
彼女もまた不法移民で、しかも何十年もアメリカに暮らしましたから、
現在のほうに照らすと、もう生きてアメリカに入国する可能性はありません。
つまり彼女はここで、2回目の追放を体験するわけです。

頑なになったアメリカに対し、彼女はつぶやきます、
「シリアみたい……」と。

そして今、シリアでは大規模な反政府運動が起こり、
これは「中東の春」の文脈で語られることが多いと思います。
わたしもまた、そう思っていたのですが……

先日の朝日新聞のコラムで、高橋源一郎氏が紹介していた文章があります。
それは、カマール・ハラフというパレスチナ人作家の、
「はっきりと、シリアの体制を支持する」というコラムです。

http://www.el.tufs.ac.jp/prmeis/src/read.php?ID=22531

ハラフ氏は、シリアを支持しています。
自分たち難民を受け入れてくれた恩義は、
たしかに忘れられるはずもありません。
(この点では、映画の「母親」の見方と違いがあります。)
ただもちろん、恩義だけではないのでしょう。
シリアでの反政府派は、新イスラエルであることと彼は書いています。
もし本当にそうなら、「中東の春」どころではありません。

それにしても、
サイクス・ピコ条約、バルフォア宣言、フサイン・マクマホン協定、
イギリスを中心とした「大国」の罪は重いです。