2012年9月30日日曜日

Jaffa


テル・アヴィヴの南側に位置する港町、ヤッフォ。
この土地の名そのものをタイトルにした映画、
『ヤッフォ』
を見てみました。

DVD のパッケージ裏面には、
「中東のロミオとジュリエット」という宣伝文句が踊り、
さらには、
「今日のイスラエルで、
ユダヤ人女性はパレスチナ男性を愛することができるのか?」
とあります。
ただし、この現代版の「ロミオとジュリエット」は、
なかなかに悲痛な物語でした。

http://www.youtube.com/watch?v=bCKtnl5qG6c

ルーヴァン一家は、ヤッファで小さな自動車整備場を営んでいます。
父、母、息子メイール、そして娘のマリ。
ただこの25歳くらいに見える息子は、
働くのが嫌い。
だらしない、器の小さい男です。
彼はアラブ人差別主義者でもあります。

この整備場では、アラブ人親子、
ハッサンとトゥーフィクも働いていますが、
このトゥーフィクはとても働き者で、
いつかマリと恋仲に。

けれどもある日事件が起こります。
イラチのメイールがトゥーフィクに喧嘩を仕掛けます。
そしてメイールが倒れた拍子に、頭を強く打って……
トゥーフィクは可哀そうに殺人罪に問われ収監されますが、
実はこの時すでに、マリは妊娠していました。
もちろんトゥーフィクとの子供です。
彼女は、中絶の予約を取りますが、
結局、どうしてもそれはできません。

そして9 年後、
やっと出所できたトゥーフィクは、
マリに連絡を取ろうとします。
自分の子供が生まれていることなど、
まったく知らずに……

悲しい映画ですが、
胸に迫るものがあります。
先日の『ガザのブタ』もそうですが、
こういう作品がどんどん公開されると、
中東の理解も深まるのになあと思います。

ところでマリの母親役を演じているのは、
あのロニ・エルカベッツです。

http://tomo-524.blogspot.jp/2011/04/mariage-tardif.html

やはり、存在感は抜群でした。

Dans la vie

Dans la vie という映画を見てみました。
もちろん、In the life ということですね。

主役は、フランス南東部に暮らす2人の女性。
共通点は、おそらく60~70歳くらいであること、
そしてアルジェリア出身であること。
違いは、一人がユダヤ人(エステル)で、
一人がムスリム(アリマ)であることです。
エステルは車椅子生活で、看護を必要としていますが、
希望のなさからくるわがままのため、
介護するアシスタントが長続きしません。
そんなとき訪問看護に来たセリマは、
途方に暮れるエステルの息子に対し、
自分の母親、アリマを紹介するのです。
ここから、アリマがエステルを介護する日々が始まります。

http://www.allocine.fr/video/player_gen_cmedia=18798655&cfilm=127409.html

ユダヤ人とムスリム。
しかもテレビからは、ガザ地区での戦闘のニュースが流れ……
喧嘩もしますが、
結局二人は、人間的な深みのどこかで繋がることができます。

地味な映画です。
その最大の理由は、音楽が控えめなせいでしょう。
また画質も、2007制作にしては、明るさが足りない感じ。
しかも主演の二人は素人なのです。

でもトータルとして見れば、
悪くない作品だと思います。
なんといっても、アルジェリア出身の二人の女性、
ユダヤ人とムスリムを出会わせたという点が重要です。
そして、
アリマは年配なのに、
自分で働いてそのお金で巡礼に行きたい、
しかも目の前に困っている女性がいるんだから、
それを助けるのは当然のこと、
彼女がユダヤ人かどうかなんて、今は関係ない……
と主張します。
これは他の作品では、若い世代が言うセリフである気がします。
アリマが言うと、新鮮です。
たとえ近所のうるさがたが「ユダヤ人の金で巡礼かい?」と揶揄したり、
息子が「恥を知りなよ」なんて言っても、
堂々と自分の主張を展開します。

共生、と言ってしまえばそれまでですが、
「生活」のレベルで、それを体現する女性たちの話でした。

*小さなことですが、
映画冒頭、ある家庭を訪問したセリマは、
患者である白人男性から、
 « Je n’aime pas les gens comme vous »
と、「アラブ人」差別を露骨に表明されます。

また、セリマとエステルの会話の中で、
アルジェリアではユダヤ人とムスリムは仲良く暮らしていたことが確認されますが、
エステルは、
「でもわたしたちアルジェリアのユダヤ人は、
結婚だけは、自分たち同士でしかしなかった。
モロッコのユダヤ人とも、チュニジアのユダヤ人ともしなかった」
と発言します。
この点は、いつかどこかに繋がりそうな気がします。

2012年9月28日金曜日

KUSAMA


NHKスペシャル、「草間彌生」を見ました。

http://www.nhk.or.jp/special/detail/2012/0928/

激しい、厳しい、たくましい、そしてかわいい。
見ていて、うなる場面が多い番組でした。

再放送は、10月3日 NHK総合/25:25~26:14

です。

Obama : musulman noir

マドンナ。
今度はオバマのことを、「黒人ムスリム」だと?

http://www.afpbb.com/article/entertainment/music/2903868/9582811

ただし 別のインタヴューを読むと、

「オバマがムスリムじゃないことは、もちろん知ってる。
それからこの国(アメリカ)には、彼のことをムスリムだと思ってる人が多いこともね。
でも、もし彼がほんとにムスリムだったらなんなの?
わたしが言いたいのは、いい人はいい人だってこと、
その人が誰のために祈っていようとね」

英語だと:

“Yes, I know Obama is not a Muslim -- though I know that plenty of people in this country think he is. And what if he were? The point I was making is that a good man is a good man, no matter who he prays to."

フランス語訳だと:

«Oui, bien sûr je sais qu'Obama n'est pas musulman, mais je sais que beaucoup de personnes dans ce pays croient qu'il l'est. Et qu'est-ce que ça ferait s'il était (musulman)? Ce que je voulais dire c'est qu'un homme bien est un homme bien, quel que soit son Dieu.........»

http://www.lefigaro.fr/musique/2012/09/27/03006-20120927ARTFIG00422-obama-musulman-noir-madonna-se-voulait-ironique.php

2012年9月27日木曜日

Le Cochon de Gaza


ガザ地区を舞台にしたコメディ、
『ガザのブタ』
を見てみました。

http://www.youtube.com/watch?v=vPEZUUQm6F0

ガザ地区は、パレスチナ人の土地であり、
アラブであるパレスチナ人が住んでいるわけですが、
ご存じのとおり、
イスラエルが入植していて、
高いフェンスでその土地を囲ったり、
あるいはパレスティニアンの家を武器によって接収したりしています。

そんな中、やはり2階をイスラエル側の兵士に使われている、
もう老年に差し掛かった夫婦がいます。
夫は漁師ですが、稼ぎが少なく、生活は苦しい。
そんな折、彼が釣り上げたのが、なんとブタだったのです。

これはまあ、おとぎ話なのか、リアルなのか。
(いや、リアルということはないんでしょうけど。)
で、彼を含むムスリムにとって、ブタは「不浄」。
そしてユダヤ人にとってもまた、事情は同じですね。
でも困窮している彼は、
なんとか少しでもこのブタでお金を作りたいと思うわけです。
そして最後に見つけ出したのが、
フェンスの向こうでブタを買う女性です。
彼は彼女にブタを売ろうとしますが、
彼女が欲しいの精子だけだと言います。
さあどうしましょう……
(ここまでで物語の25%くらい。)

この夫を演じるのは、『迷子の警察音楽隊』でも主演していた、
イスラエルの有名俳優、サッソン・ガーベイです。
彼はイラク生まれで、子供時代にイスラエルに移住したユダヤ人ですが、
この映画ではアラブ人を演じています。

コメディなんです。
でも最後には、やはり「平和」への祈りが込められていて、
「平和」というものが、抽象的な何かではなく、
今目の前で実現できる手応えのあるものとして意識されているのが、
よくわかりました。
ちょっと風変わりな、おもしろい映画でした。

2012年9月26日水曜日

芝生へ

授業も一周し、
早くもフツーの大学生活になってきました。

今わたしのいる建物の隣りの古い校舎を壊していて、
毎日見るたびに、少しずつ原形を失っていくのがわかります。
その2階建ての校舎では、授業をしたこともないので、
ほとんど思い入れはありません。
跡地はどうも緑地になるようなので、
そちらが待ち遠しい感じです。

そういえはMLBが大詰めで、
ヤンキースの試合もレンジャースの試合も、
いつの以上の緊迫感がみなぎっています。
そしてその球場の、芝生。
これは美しいですね。
街中で見かける小さな芝生の空間にも、
スタジアムのそれと繋がるものを感じます。

古いかもしれませんが、
やっぱりドームより屋根なし、
人工芝より自然の芝が好きです。

2012年9月24日月曜日

いい感じ

今日は久しぶりに新宿へ。
相変わらず、人は多く、うるさく、ごみごみしていて、
肌になじみ、ある種の深呼吸が可能な空間です。

で、目的は、打ち合わせ。
11月に予定している本の、
タイトルを考えたり、口絵写真を選んだり。
本文はもう(ゲラとして)印刷されているのに、
まだタイトルが決まらないのが、
わたしも少し不思議な気もしますが、
まあ考えてみるといつもこんな感じだった、かな?

それにしても今回は、
写真もたくさん、地図もたくさん入れてもらえて、
とても感謝しています。
文章の部分はともかく(?)、
地図と写真はとてもいいです。
どうぞご期待ください!

無題

引っ越し以来、
東京新聞も読み始めました。
スポーツの写真にしても、
小さなコラムにしても、
もちろん大きな記事でも、
たとえば朝日とは、やはり違いがあります。
そして、

http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2012092290070744.html



2012年9月22日土曜日

夏の

というわけで始まりました、新学期。
でこの時期は、やれ申請書だ、やれ報告書だと、
書類仕事が多めです。
授業のような、ある種のパフォーマンスのようなものではなく、
決まったフォーマットにちゃんと書く、というものです。
得意だとは言えませんが、
まあ、たいていの仕事には付き物、かな?

昨日の3 4年生相手の授業では、
初回のガイダンス代わりに、
各自1分ずつ、「夏の思い出」を語ってもらいました。
国内旅行とバイトの話が多かったですが、
目立っていたのは、やはり少数の海外組。
ルート66をレンタカーで5000キロ走ってきたグループ。
ガンジス川で、小舟に乗って現地の人と食事をしていたら、
真横を遺体が流れてゆくのを目の当たりにした学生……。

でもぜひ、
おもしろかった、すごかった、
では終わらせないようにね、
とわたしは言ったのでした。

2012年9月20日木曜日

明日初日

ついに! 今日から後期の授業が始まりました。
わたしにとっては、明日が初日です。

今年の夏休みは、
引っ越しがあったおかげで、
青森合宿以外はどこへ旅行するでもなく、
ひと夏東京で過ごしました。が、
来年はまた、(あるいはできれば春にでも)
どこかに行きたいと思っています。
死ぬまでに行ってみたいところはいくつかありますが、
たとえばモーリシャスなんかも面白そう。
マダガスカルもいいですね。
でもいざどこかへ、となると、
ついパリに行きたくなってしまうのは、
なぜなんでしょう?

左右社全点フェア

東京堂書店、神保町店3 Fで、
「左右社全点フェア」を開催中です。

http://sayusha.com/sayusha/events.html

お近くをお通りの際は、覗いてみてください。
わたしも「パリ本」を選びました。

2012年9月19日水曜日

Vincent Lindon


95年に発表されたフランス映画『憎しみ』は、
その時点でもセンセーショナルでしたが、
2005年のパリ郊外の暴動の後、
10年も前に予言していたとして、
再び注目されました。
今でも、もちろん見る価値のある映画だと思います。
まあ、それはそうなんですが。

物語の本筋とはそれほど関係なく、
パリでクルマを盗もうとしていた主人公3 人の前に現れる1人の酔っ払い(画像)、
訳のわからないことを喚いた末に、
けれども彼らを追おうとする警察の邪魔をし、
彼は3 人を助けることになります。
そしてこの酔っ払いを演じていたのが、ヴァンサン・ランドン。
『女はみんな生きている』の中年オヤジ、
『君を想って海をゆく』のやはり中年オヤジ、などを演じた彼です。

その彼が、なんと「もうすぐ引退するよ」!

http://www.gala.fr/l_actu/news_de_stars/quelques_heures_de_printemps_vincent_lindon_veut_arreter_le_cinema_272030

単純に同世代の俳優だし、
中年オヤジ仲間として親近感を持って見ていた俳優なので、
ちょっとショックです。
なんというか、不屈のジジイとなって、
スクリーンに立っていてほしい気がします。

でも、(根拠はないんですが)撤回することもあるだろうと思っています。
少なくとも、そう希望しています。

2012年9月18日火曜日

「テレビでフランス語」10月号


今午後11時過ぎ。
外は土砂降り。雷鳴が轟いています。

明日の東京の天気予報は、
午後は晴れて30度を越えると。
で、ふとパリの明日はと見てみると、
最高気温は……17度!?
うらやましいような、そうでもないような。

そして本日、「テレビでフランス語」10月号、発売になりました★

http://sp.nhk-book.co.jp/text/detail/index.php?textCategoryCode=06485

去年の春の講座の再放送ですが、
「文化コーナー」は差し替えらている週もあります。
どうぞお楽しみに!
(放送は10月3日から。)

それにしても、
季節の変わり目に差し掛かり、
そろそろ夏バテが来るころですね。
ご自愛を!

2012年9月16日日曜日

Délice Paloma


『アイシャ』の叔母さん役で、
抜群に目立っていたビウーナ。
とりわけその迫力のダミ声ときたら!

で彼女のことが気になっていたので、
見てみました、ビウーナ主演の作品、
Délice Paloma
です。
このタイトルは、劇中に登場するおしゃれなカフェのスペシャリテの名前ですが、
その店で彼女がスカウトした若い女性にも、パロマと名乗らせます。

舞台はアルジェ。
ビウーナが刑務所から出所する場面から始まります。
かつて悪徳弁護士としてのし上がったビウーナは、
子供時代に過ごした大ホテル、「カラカラ浴場」を買い取り、
そして甦らせようとしたんですが……

http://www.youtube.com/watch?v=jzUT5UgwkpA

まあ言ってしまえば、B級なのかもしれません。
(パリ・マッチは、アルモドヴァル監督と比較していますが。)
ビウーナが元気なので見ていられますが、
それでも2時間9分はやや長いかも。
もう少し編集できたかもしれませんし、
物語の90%以上が回想ですから、
これはちょっと安易な構成と言わざるを得ないですね。

それにしても、フランスにいるビウーナしか知らなかったので、
高層マンションの最上階から、
港町アルジェを見下ろしている彼女の姿は、印象的でした。
彼女は、アルジェの出身なんですね。

2012年9月15日土曜日

Comme les autres


 いわゆる「homo 映画」を見る機会は、
そんなに多くありませんが、
今日見た Comme les autres (Like the others)はまさにそうした1本でした。

http://www.youtube.com/watch?v=I5nBNa8IMAo

主人公は40歳代の小児科医、マニュ。
彼はもう15年、カレシである弁護士フィリップと暮らしています。
もちろん周囲も、そういう彼を受け入れています。
というかマニュは、とても感じのいい、優しい人なので、
周りの人は彼が大好きです。
(マニュを演じるランベール・ウィルソンは、
その後『神々と男たち』で主演することになります。
http://tomo-524.blogspot.jp/2011/04/des-hommes-et-des-dieux.html

そしてマニュの最大の望みは、子供を持つこと。
でもフィリップは、そんな気がなく、
結局2人は別れざるを得ません。
でマニュは養子の道を探しますが、ゲイであることがばれて失敗。
(ゲイじゃなぜいけないのか、という根本的な問題も問いかけます。)

するとあろうことか、
交通事故を通して知り合った、アルゼンチンから出身の若い女性フィナに、
「白い結婚」を申し出ます。
不法滞在中の彼女にはフランス国籍を、
自分には子供を、というわけです。
もちろんフィナは怒り出します。
でも……

その後フィナがマニュのおかげで送還を逃れられたり、
彼の家の居候となったりする過程で、
フィナはあの申し出を引き受けることにします。
それはパスポートのためじゃありません。
彼女はマニュを愛し始めていたのです。

けれどここでまた問題が。
検査の結果、マニュは無精子症であることが発覚したのです。
落ち込むマニュ……
そしてフィナが提案したのは、
誰かに精子の提供を受ければ? ということでした。

マニュは考えます。
そしてたどり着いた結論は、
フィリップに頼む、ということでした。
フィリップもまた、最初は怒り出します。が、
マニュが子供を欲しがっていることを、
1番知っているのはフィリップなのです。
彼は結局OKします。
そして本当に、フィナは妊娠したのです。

やがて、マニュとフィナは結婚。
アルゼンチンから両親も駆けつけます。
でも、フィナの愛に応えられないマニュ。
僕はホモで、これからもずっとそうなんだ……
フィリップとよりを戻したマニュ。
フィナは姿を消します。

それから数か月後、
あらたな代理母を探しているマニュたちのもとに、
電話がかかってきます。
フィナは言います、生まれそうなの……

最後はハッピー・エンディングなので、
それほど驚いたりはしませんが、
そこに至る過程こそがこの作品だと考えれば、
これはとても魅力ある映画です。

そしてもう1つ興味を惹かれるのが、
マニュが住んでいるアパルトマンが、
ベルヴィル公園のすぐ北側にあること。
映画の冒頭も、ベルヴィルの多民族的な雰囲気が映し出されます。
マニュは、「だからベルヴィルで子供を育てるのは、いいことなのさ」
と言ったりもします。

homo 映画であることは確かですが、
彼らの存在が、まったく自然。
ベルヴィルという街が舞台に選ばれたのは、
偶然ではないですね。

Clean


東京では、オリヴィエ・アサイヤス監督の新作、
『カルロス』の上映が始まっています。

http://www.carlos-movie.com/theater.html

見る気はあるんですが、
いかんせんちょっと長い。
DVDまで待つか迷うことろです。

アサイヤスと言って思い出されるのは、
わたしの場合は『クリーン』です。
主演のマギー・チャンはジャンキーで、
自分が調達したクスリでロック・スターの夫を死なせ、
幼い子供にも会えなくなり……
なんとか「クリーン」になろうとするわけです。
舞台も、カナダのハミルトン、パリ、ロンドン、サン・フランシスコと、
自然に移動していくのがなかなかよかったです。

http://www.youtube.com/watch?v=FP_4aIenueM

ただ『クリーン』の場合は、
撮影監督のエリック・ゴーティエのカメラの動きが個性的で、
それが印象に残ったという面もありました。
技術的なことはよくわかりませんが、
なんというか、「フツー」よりも近すぎるか遠すぎる、という感じ。
パンの仕方も荒々しいし。
最近では、彼は『ミラル』を撮ってましたね。

http://tomo-524.blogspot.jp/2011/08/miral.html

海でおぼれかかるシーンなどは、
オオ、という感じでした。

2012年9月14日金曜日

Emotifs Anonymes


ローレンス・ブロックのマット・スカダー・シリーズには、
アルコール中毒から立ち直るための匿名の告白会が描かれています。
主人公マットその人が、まさにアル中だからです。

フランス(だけではないでしょう)には、
それと似たものとして、Emotifs Anonymes という会があります。
直訳すると、「匿名の気の弱い人たち」とでもなるでしょうか。
極端に気が弱い、臆病だ、などなど、
感情にかかわる悩みを持った人が、
その会合に匿名で参加し、自分の体験を話す、ということのようです。

フランスでヒットしたラブ・コメに、
この会の名前そのものがタイトルになっている映画があります。
(フランス映画祭では、『匿名レンアイ相談所』と訳されていました。)
気の弱い男女人の恋愛を描いたコメディーで、
男は小さなチョコレート工房のオーナー、
女性はそこに働きに来た才能あるチョコレート職人です。
(でも彼女は、そのことを隠しているため、
外回りの営業を担当することになるのですが。)

http://www.youtube.com/watch?v=oT2C2w_w6UI&feature=fvst

そして日本語字幕付きの監督インタヴューも。
これ、親しみが湧きます。

http://www.youtube.com/watch?v=jrAfzd_JHUw&feature=fvst

75分と、最近では短い映画で、
内容的にもかわいらしい作品です。
フランス人というと、一般的には、
おしゃべりで自己主張が強くて(失礼!)というイメージが、
ないとは言い切れませんが、
ここに登場する2人はほんとに気が弱くて、ハラハラします。
(まあコメディーなので、ハッピー・エンディングではありますけど。)

たまには、こんな映画もいいですね。

2012年9月12日水曜日

Les invités de mon père


『最強のふたり』の中で、
フィリップのアシスタント(?)として活躍していたイヴォンヌ。
彼女を演じた Anne Le Ny は、女優であり監督でもあります。
そして監督としての彼女の最新作が、
Les invités de mon père (『わたしの父の招待客たち』)です。

http://www.youtube.com/watch?v=lN1tyZS1qVc

引退した医者で、人道的活動を続けてきた「パパ」。
80歳になる彼が、ある移民女性を国外追放から逃れさせるため、
彼女と「白い結婚」をすると言い出します。
けれどもその女性、モルドヴァ出身の奔放な彼女に、
どうも「パパ」は本気で惚れているらしい……
という物語です。

「パパ」の子供たちは2 人。
弁護士の息子と、医者の娘。
それぞれ既婚の2 人は、最初は戸惑いながらも様子を見ますが、
「パパ」が遺産を放棄してくれと言ってきたり、
部屋の様子がどんどん変わっていくあたりから、
悩み始めます。

おもしろいと思ったのは、
「パパ」の行動をどう受け止めようか考える過程で、
特に娘のほうは、
「パパ」が自分に課してきた「教育」と、
モルドヴァ女性が身に着けているものが、
似ても似つかないことを発見するくだりです。
娘の悩みは、自分のアイデンティティーに移ってゆきます。
そして古いアイデンティティーを壊す第1歩として、
とりあえず同僚と浮気したりします。
この娘を演じるのカラン・ヴィアールは、
いわゆる等身大な感じで感情移入してしまいます。


また小さくて意味のあるエピソードとして、
モルドヴァ女性の小学生の娘と、
「パパ」の小学生の孫との、
淡い恋があります。
この恋が、エンディングに切ない影を落とします。

ただ結末は、ちょっと不満。
ブニュエルなら、「ブルジュア的」と言ったのではないでしょうか。

2012年9月11日火曜日

Intouchables


『最強のふたり』、
フランスで大ヒットしたこの作品、日本でもまたヒット中のようですね。
とても面白い映画ですから、当然でしょう。
まったく飽きないし、
スピードも明暗も遊びも深みもあって、
ここまで緻密な作品は少ないだろうという気がします。

ただいつものことながら、この日本語タイトルって??
原題は Intouchables ですから、
言うまでもなく、in  toucher  able 「不 触る できる」、
つまり「触れない」ですね。
わたしたちの世代だと、
アル・カポネと戦った「アンタッチャブル」を思い出します。
こちらも本当は複数形でしたが、
(誰も手を出せないほど恐ろしい)捜査チームの人たち、ということだったんでしょう。
「不可触民」と意味でも使われますね。

じゃあ今回はというと、やはりポイントは複数形でしょうか。
このタイトルについては、こんな解説があります。

http://pepecastor.blogspot.jp/2011/11/blog-post_10.html

なるほど。
触れない者たち、が複数になって、お互いに、というニュアンスが生まれるのでしょう。
だからこんなパロディもあったわけですね。


ということは、このタイトル、
どこか逆説めいた感じになりますね。
実際にはあんなに深く触れ合っているのに、
このタイトルなんですから。
たとえばWelcome(『君を想って海をゆく』)の場合も、
全然welcome じゃないのにこのタイトル。
肯定と否定の方向は逆ですが、
こういうタイトルのつけ方なんですね。
Intouchables を日本語にするのはたしかに難しそうですが……

わたしはDVDで見たので、
どんな字幕が付いているのか知らないのですが、
(だからトンチンカンなことを書くかもしれないのですが)
会話に登場したいくつかの固有名詞は、どんな風に扱われていたのでしょうか。
思い出すままに挙げるなら、
終盤、ドリスが就職の面接を受けているシークエンスで、
画家の「ゴヤ」を Chantal Goya に取り違えてみせる ところ。
彼女のヒット曲がオチのポイントでした。

http://www.youtube.com/watch?v=SrBQSFMA-Sw

それから、ドリスがオバマに似てると言われるあたりなどで、
何人かフランスの政治家の名が挙がりました。

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B8%E3%83%A3%E3%83%B3%EF%BC%9D%E3%83%94%E3%82%A8%E3%83%BC%E3%83%AB%E3%83%BB%E3%83%A9%E3%83%95%E3%82%A1%E3%83%A9%E3%83%B3

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B8%E3%83%A7%E3%83%AB%E3%82%B8%E3%83%A5%E3%83%BB%E3%83%9E%E3%83%AB%E3%82%B7%E3%82%A7

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B8%E3%83%A7%E3%82%BC%E3%83%BB%E3%83%9C%E3%83%B4%E3%82%A7

日本ではそれほど知られていない人たちでしょうから、
字幕が気になります。
(そして実際似てる! ので、
きっとフランスでは受けたのでしょう。)

また「受けた」という点では、
ポップスもクラシックも絵も文学者の名前も、
それぞれの世界では有名なものでしたね。
これはきっと、観客に疎外感を味わわせないための工夫なんでしょう。
ああいう場面でひねった選曲をするのは、プロっぽくないというか。
またドリスの語彙には、chelou やら pecho やら chier やら、
郊外言葉(?)が満載で、これも親しみが湧きます。

ただ敢えて言うなら、いわゆる「郊外問題」の解決にはつながらない、
むしろそういう問題を隠してしまいかねない、
という危惧もあります。
こんなパロディもありました。


とてもよくできた映画だけに、かえって、そうなるわけです。
とはいえ、おもしろくて好きな作品であるのは、
まちがいありません。

2012年9月10日月曜日

Inch'Allah Dimanche


シリーズ4作目のDVDが出た『アイシャ』シリーズ。
その監督であるヤミナ・ベンギギは、
それ以前社会派的なドキュメンタリーなどを中心に撮っていましたが、
フィクションも1本だけ発表していました。
それがこの『インシャラー・ディマンシュ』です。

http://www.youtube.com/watch?v=OWaJpEs4sWg

1976年、フランスはそれまで働く男性のみに限っていた移民たちに、
家族の呼び寄せを認めました。
物語は、この呼び寄せに応じてフランスに向かう、
母、妻、子供たちが、
アルジェリアの港を出発するところから始まります。
主人公である妻、ズイナは、
年老いた実母一人を置いてゆくことに、
心が引き裂かれる思いです。
でも知り合いたちから、子供のためにフランスへ、と諭され、
船に乗り込むわけです。

着いたのは、パリの北百数十キロ、サン・カンタンです。
彼女はここで、意地悪な姑、冷たいDV夫と一緒に、
しかも誰一人の知り合いもいない街で、
声も立てずに暮らします。が、いろいろ経験が積み重なるうち、
彼女の中の何かが、おずおずと目を覚ますのです。

思うのは、なんといっても『アイシャ』との落差です。
もちろん『アイシャ』にも、さまざまな宗教的、家族的、文化的束縛がありました。
が、それが比較にならないくらい、すさまじい状況なのです。
子供たちは父親から、
ここは他人の国だ、だからおとなしく、目立たないようにしていろ、
と命じられたり。
また妻も、口紅を持っていたというだけで、殴られたり。
一人で外出することさえままならないのです。
フランスでは「68年」より後ですから、
これはずいぶん差があるでしょう。

そして作品として見ると、
やっぱりきちんとしていると思います。
つらい話なのに、やめたくなるようなことは全然ないし。
さすがベンギギ、というところでしょうか。

最後に俳優たちですが、
母=『アイシャ』でのアイシャの母親
夫=『戦争より愛のカンケイ』でのヒロインの父親
妻=『きらきらしてる』での、リラの母親
です。
なじみの人ばかりです!



2012年9月9日日曜日

祖国は「国語」?

つい先日、朝日の天声人語で、
「祖国は国語である」というシオランCioran の言葉が引用されていました。
これはしばしば引用される部分ですがオリジナルはこうです。

« On n’habite pas un pays, on habite une langue.
Une patrie, c’est cela et rien d’autre. »

「人は国に住むのではない、一つの言葉に住むのだ。
祖国とはその言葉であり、それ以外ではない」

une langue を「国語」と言ったり、「母語」と訳したり。
(まあ「国語」じゃないのは確かな気がしますが。)
訳語が変わると、連想的意味が大きく変わる例ですね。
(そもそも、「祖国」って何? という問題もありますけど。)

Et maintenant on va où ?


ベイルートの美容室を舞台にした『キャラメル』は、
繰り返し見てもあきない魅力的な作品でしたが、
その監督・主演を努めた美しきナディヌ・ラバキの新作が、これ、
『で、どこに行く?』です。

http://www.youtube.com/watch?v=OoV84m9qXdM&feature=player_detailpage

架空の場所、架空の時代の、
地雷に囲まれた小さな村。
そこにはクリスチャンとムスリムが、仲良く住んでいます。
けれども村の、その両者による戦争は、
村にも薄暗い雲を生み始めます。
そこが物語の出発点です。

活躍するのは女たちです。
息子を、夫を、兄弟を、「他所」の戦争で失った彼女らは、
この村が戦いに巻き込まれるのだけは、
何に変えても避けようとします。
たとえ息子の死であっても、
それが村での戦闘の引き金になりそうなら、
誰にも言いはしないのです。
たとえ自分の息子であっても、
武器を持ち出そうとしたなら、
銃で撃ってでも止めるのです。

『キャラメル』でも、背後には、
2つの宗教世界がはっきりありました。
今回の作品では、そのテーマがより前面にせり出しているわけです。
ただそこはラバキらしく、
「お楽しみ」な要素も取り入れています。


おとぎ話のようなところもある、いい映画だと思います。
音楽もいいし。
ただ作品の構成とか、複数あるストーリー・ラインの交わり具合とか、
人物たちの立ち上がり具合とか、
個人的にはまだ未完成な部分もある気もしましたが。
いずれにせよ、注目の監督であるのは間違いないので、
今後も見ていくことにしましょう。

2012年9月8日土曜日

Notre Etrangère

日本では、ブルキナ・ファソが話題になることって、
多くはないですね。
先日中古DVDを買って見てみたのが、
Notre Etrangère という映画です。
(直訳は「わたしたちの見知らぬ女性」でしょうけれど、
必ずしも人間とも限らないですねえ……)

http://www.youtube.com/watch?v=oRk_AgMBaO0

これはブルキナ出身の母と娘の物語で、
パリで暮らす娘が、8歳の時に分かれた母親に会いに、
ブルキナ行くところから、話が動き始めます。
母親は、でもブルキナにはいませんでした。
ただ(アル中気味の)叔母さんがいて、
久しぶりの姪をとても可愛がります。

一方母親は、パリで暮らしています。
(もちろん娘はそれを知らないわけです。)
ビルの掃除をし、そこで仲良くなった白人女性に、
ブルキナの言葉をレッスンしたりして。
でも、孤独なんです。

印象的なのは、ブルキナの街、Bobo-Dioulasso の景色です。
パリジェンヌとなった娘は、変貌する街をまぶしそうに眺めます。
もちろん、パリのようではありませんが。

母は、「休日には18区に行く」と言っています。
パリと言っても、RERが走るような郊外に住んでいるのです。

言うまでもなくパリには、たくさんのアフリカ系の人がいます。
言うまでもなくその背後には、それぞれの物語があるんですね。

2012年9月6日木曜日

稼働中

大学の授業開始はまだもう少し先ですが、
今週は火曜、水曜と会議などもあったし、
来年度のカリキュラムの組み立ても始まったし、
当然それ関連の締切もあるし、
ぐずぐずしてたら申請書類2つ締切が近いし、
事務の方はもうとっくに仕事を開始してるし、
実は大学は授業がないだけで、めちゃめちゃ稼働してます!

そして仕事のほうでは、
2つの本がほぼ同時に進行していて、なんだか不思議。
ただ両方とも完成原稿を渡した、つまり峠は越えたので、
ちょっとだけ安心したのですが、
まだまだ校正などもあり、気を抜くことはできません。
なんだか落ち着かない日々です。

そんな中、今日寄った本屋さんで、
こんな新書を買ってみました。

http://www.amazon.co.jp/%E5%BF%98%E3%82%8C%E3%82%89%E3%82%8C%E3%81%9F%E4%BF%B3%E4%BA%BA-%E6%B2%B3%E6%9D%B1%E7%A2%A7%E6%A2%A7%E6%A1%90-%E5%B9%B3%E5%87%A1%E7%A4%BE%E6%96%B0%E6%9B%B8-%E6%AD%A3%E6%B4%A5-%E5%8B%89/dp/4582856497/ref=sr_1_1?s=books&ie=UTF8&qid=1346938038&sr=1-1

これから風呂で読みます!

2012年9月5日水曜日

22度

今日は会議のために大学に行き、
昼にはY君が研究室に、上海土産を持ってきてくれました。

Y君は、「混成世界のポルトラーノ」にも、
中国・大連出身の学生、として登場しています。
そんな彼も今は修士2 年となり、
就職もきまったそうです。
オメデトウゴザイマス!

最近彼は、シンガポールに行ったそうです。
あちらでは基本、冷房が効き過ぎだとか。
あるときはバスで、み~んな寒いというので、
見てみると設定が22度。
運転手さんに設定温度を上げてくれというと、
彼はにこやかにほほ笑み、
これが一番高いのよ!
どうやらそのエアコンは、
最弱が22度らしいのです!

これって、アメリカのステーキハウスで、
1番小さいのが300グラム、と言われた時に似てるかな!?

2012年9月2日日曜日

サン=テグジュペリのラヴ・レター



サン=テグジュペリが、20歳も年下の、
しかも既婚の女性に当てたラヴ・レター……、
と聞いただけで、興味が湧きますね。
実は翻訳が出ました。
(画像にはありませんが、わたしも帯を書かせていただきました。)

http://ishigai.blog.fc2.com/blog-date-201208.html

そしてつい一昨日、毎日新聞でも紹介が。

http://mainichi.jp/feature/news/20120829ddn012040054000c.html

おもしろそうでしょ!

サン=テグジュペリに興味があれば、必読です。
大判の、美しい本です。