2015年2月5日木曜日

『愛について、ある土曜日の面会室』

まだ20代だったというレア・フェネール監督のデビュー作、

『愛について、ある土曜日の面会室』

を見てみました。

https://www.youtube.com/watch?v=g_jrRoHc5E8

そう、ここで紹介されている通り、
映画では、3つの別々の物語が、
「面会室」という場所で交差します。
その3つの流れは、
(ミステリー小説のように)1つになるわけではありません。
でも、
その場所で交差することには、
ある種の必然めいたものがあるようにも感じられます。

だめな男(彼はよかった)も、だめな女も、
若い女も、若い男も、
年配の女性も、ゲイの青年も、
ステレオタイプではなく、
描けていると思いました。
恐るべき20代です。

タイトルですが、オリジナルは、

Qu'un seul tienne et les autres suivront

これ、なかなか訳しにくいですが、
「たった一人でもいいから、持ちこたえられますように。
そうすれば、ほかの者たちはついてゆくでしょう」
くらいでしょうか。
動詞 tenir は「保つ」ですが、
ここでは目的語のない、いわゆる絶対用法で、
「(なんらかの問題に対して)持ちこたえる」ことなのでしょう。
これは、「あるラップの歌詞からとった」のだと、
監督がインタヴューで言っていたので、
探してみたら、ありました。これです。

http://www.rap2france.com/paroles/kery-james-post-scriptum.html

YouTube : https://www.youtube.com/watch?v=L-OR7UGkCb0

ケリー・ジェイムズ(でいいんでしょうか?)は、
ハイチ人の両親の元、
グアドループで生まれています。

で、やっぱりこのタイトルはフランス語話者にも気になるらしく、
監督は、よくそれについての質問をされていました。
監督自身も、
このタイトルには思い入れがあるようで、
冒頭のシークエンスは、
「ほかの者たち」がついてこない例なのだ、
とコメントしています。
となると、この邦題、
ちょっとポエティックで、好きですが、
まあもう少し、
オリジナルのニュアンスを残してもよかったかなと感じました。
でもとにかく、
映画は◎でした。