2015年7月30日木曜日

pour Paris

さて、明日はパリへ出発の日です。
3週間ほどの予定なんですが、
調べてみると、このところパリの天気は不安定。
最高気温が33度の日があるかと思えば、
20度(!)なんていう日もあるようです。

あれこれ見ていたら、
パリのベスト・テラス席、
みたいな特集を発見しました。

http://quefaire.paris.fr/terrasses

この中の le café A は、
滞在先のアパルトマンから近いので、
寄ることができるかもしれません。
このカフェは、ヴィルマン公園内にあって、
背後をかつての修道院(couvent des Récollets)の城壁に守られ、
そのことによって、
通りの喧騒を逃れているようです。

では、行ってきます!

2015年7月29日水曜日

Halal police d'etat

随分前に見て、おもしろかったこの映画、

http://tomo-524.blogspot.jp/2011/04/il-reste-du-jambon.html

の主人公(男性のほう)が主演している映画、

Halal police d'etat

を見てみました。

https://www.youtube.com/watch?v=HP4REAu7VW0

バルベスで起こった殺人事件を解決すべく、
アルジェリアから2人の捜査員が派遣される、
というお話しなんですが、
これがまた、完全なドタバタ・コメディでした。
ほんとにくだらないんですが、
おもしろくないかと言えば、
そうでもないんですね。
とはいえ、消費されるタイプのフィルムではあるのでしょう。

2015年7月27日月曜日

Qu’est-ce qu’on a fait au bon Dieu ?

今日見たのは、
まあ軽めのコメディと言っていいフィルムです。

Qu’est-ce qu’on a fait au bon Dieu ?
(「わたしたちが神様に何したっていうの?」)
 
 
田舎のブルジョワ夫婦、
彼らの4人の娘たちは、
(親のブルジョワ的&保守的な願いとは遠く)
ユダヤ人(ヴェンチャー志向、家族はテル・アヴィヴ)、
アラブ人(ボビニーで公選弁護人、家族はアルジェ)、
アジア人(金融、家族は北京)、
と結婚してしまいます。
そして最後に残った末娘まで、
アフリカ系(舞台俳優、家族はアビジャン)、
と結婚したいと言い出すのです。
物語は、
この両親と、
婿たちの相克が中心ですが、
婿たち同士のそれもまた重要で、
さらに後半では、
両親と、
アフリカ系婿の両親との関係が、
中心的に扱われます。
コメディなのでハッピー・エンドですが、
さまざまなレベルでの「差別感情」を描き、
それをPC的に弾劾するわけではなく、
指摘しつつ、意識しつつ、
それでも手を取り合う道を探る、という、
好感が持てる演出です。
4人の娘たちは、婿たちよりも背景よりですが、
とはいえ彼女らも、ジェンダー問題には敏感です。
 
印象に残ったエピソードは、
たとえば両親が、バルベスを通りかかった時の話として、
「パスポートを持っててよかったよ、
だってフランス人なんて一人もいないんだから!」
と語ったのに対して、アラブ系婿が
「全員のパスポートを確認したんですか?」と応じた場面。
あるいは、
中国系は愛想が悪いけど、アラブ系は商才がある、
と言われたアジア系婿が、
「じゃあなんで、ユダヤ人はサンティエを、
アラブ系はベルヴィルを取り返さない?」
と言い返す場面、などなど。
 
それから、小さなことですが、
上に挙げたトレーラーの38秒あたりからの英語字幕、
奇妙に面白いです。
ここは、ヴァカンスに妻の実家に招かれた婿たちが、
あいつらも来るのか?
と訊く場面なんですが、
その「あいつら」の表し方が、コメディ的で、
まずユダヤ人婿は、
「ジャッキー・チェンとアラファトも来るのか?」
と言い、
次に中国系婿は、
「カダフィとエンリコ・マシアスも来るのか?」
そしてアラブ系婿は、
「ブルース・リーとポペックも来るのか?」
と訊いています。
でも英語字幕は、
エンリコ・マシアスは「ネタニアウ」になり、
ポペックは「ウディ・アレン」になっています。
ユダヤ人ユモリスト・ポペックは、
日本同様、英語圏でもあまり知られていないのでしょう。
で、有名なユダヤ系、W・アレンで置き換えたわけですね。
 
ポペックは、
以前書いた気もしますが、
あの『憎しみ』に登場する男、
トイレで、奇妙な話を長々とする男のモデルではないか、
とも指摘される人です。
強烈なイディッシュ訛りのフランス語、
それが彼の特徴です。
 
 
ついでに言えば、
ユダヤ人婿のスマホの着信音は、
この映画の主題歌です。

http://tomo-524.blogspot.jp/2015/04/les-aventures-de-rabbi-jacob.html

ただしルイ・ド・フュネス自身がユダヤ人でないことは、
ユダヤ人婿を交えた会話の中で明らかにされます。

また、アフリカ婿を演じたNoom Diawara は、
この映画でも主演の一人でした。

http://tomo-524.blogspot.jp/2015/06/amour-sur-place-ou-emporter.html

劇中で彼は、ジョルジュ・フェイドーのDindon に出演しています。
アフリカ系の俳優がこの芝居に出演するのは、
珍しいことのようです。

2015年7月26日日曜日

When children today grow up......

When children today grow up,
will they be (                            ) financially than their parents ?


 


http://www.pewglobal.org/2015/07/23/global-publics-economic-conditions-are-bad/

日本でも、
72%の人が「悪くなる」と思っているわけですね。
(ただ「悪くなる」と言っても、
それが幸福な縮小均衡であるなら、
歓迎すべきだと思いますが。
「成長神話」はもう蜃気楼でしょう。)

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retweet します。

*********************

東京都現代美術館は
会田家の作品への撤去要請を通じて
「美術であるもの」と「美術でないもの」の境界を明らかにしたわけで、
そういうふうに考えてみると
彼らは
「東京都現代美術館の考える美術の範囲」という
極めて現代的なアート作品を展示しているわけですね。

********************

https://twitter.com/tako_ashi/status/624936750561898497

2015年7月25日土曜日

Brick Lane

イギリス映画、

Brick Lane (2007)

を見てみました。
(日本版はないんですが、
日本のアマゾンでも、輸入盤が売られています。
英語字幕も付いている版です。)

https://www.youtube.com/watch?v=ApKTtTyp_k8

バングラディッシュのベンガル地方、
ムスリムの家庭に生まれ、
17歳になったナズリンは、
生まれた土地を離れる気は全然なかったのに、
親の決めたかなり年長の相手と結婚するため、
彼の住むロンドンに一人で赴きます。
そして着いたのが、
レンガ造りの建物の続く移民街、ブリック・レーンです。

映画はここで、16年飛びます。
ナズリンは今や2人の娘の母親となり、
(といってもまだ33歳ですが)
英語も話せるようになりました。
でっぷり太った夫は、
陽気で、楽天的に(少なくとも表面は)見えます。
けれど今日、彼は強く期待していた昇進を遂げられず、
それどころか解雇されて帰宅します。
その後も、夫の就職活動は難航し、
ナズリンは縫物の内職を始めます。
そして、その仕事を通して、
若きカリムと出会います。
2人は次第に惹かれあい、
ついには、ベッドを共にします。
そしてそんなとき、あの9.11 が起きるのです。

この時から、街の雰囲気は一変します。
ムスリムたちは、嫌悪と排斥の対象となり、
その結果彼らのコミュニティー意識も高まってゆきます。
そしてカリムは、
ムスリムの自衛集団、「ベンガルの虎」の活動にのめりこみ、
その容姿は、見る見るうちに変容してゆきます。
ジーンズを履いたふつうのお兄さんが、
濃いひげを蓄え、白い帽子を被るのです。
このブリック・レーンが故郷だ、と言っていた彼は、
こうして一層、その場所からそ疎外されます。

そしてある日の集会でのこと、
ナズリンは夫とそこに参加します。
夫は、そこでスピーチする予定だったのです。が、
その集会の雰囲気があまりに戦闘的だったため、
夫はとまどい、ついには立ち上がって叫ぶように話します。
それじゃだめなんだ、
もう忘れたのか、ムスリム同士でどれだけの血を流したのかを。
小さなコミュニティーが戦闘的になることの危険が、
あなたたちにはわからないのか。
イスラムの魂は、あくまで内面にあるのだ……。
たんなるデブおやじだったはずの彼の言葉は、
観客の胸に刺さります、が、
その集会に、彼の言葉を聞こうとするものはいませんでした。

借金がふくらみ、
仕事もうまくいかない夫は、
ついに、家族を連れてベンガルへ帰る決心をします。
これはいつかビッグになって、
故郷に錦を飾りたかった、
でも、それはもういい、
家族さえいれば、それでいい、
おれはもう、ここにはいられない……
しかし、ロンドンで生まれ育った娘たちは、
そんなことまったく受け入れられません。
そしてまたナスリンも、言うのです、
わたしがあなたを愛しているのは、
あなたがビッグだからじゃない、
でも、今は帰れない、
この土地を離れることはできないの、
でも、いつでもここで、
娘たちと待っているから……

前半は、むしろ淡々とした展開で、
やや単純すぎる気もしていましたが、
中盤に9.11 が起きたあたりから、
物語が加速し、
終わってみれば、なかなかいい映画でした。

ブリック・レーンは、今では、
なかなか「ファッショナブルな」通りになっているようですが、
それでも、そこが移民街なのは今も変わらないようです。
ちなみに、カリムの家族がいるブラッドフォードは、
バングラ系の人の多い地区として知られているようです。

*このフィルムは、公開当時、
ロンドンに住むバングラ系の人たちから、
大きな抗議が巻き起こったそうです。
彼らとイスラム過激派(や9.11)を結びつけたというわけです。
でもわたしが見た限りでは、
そんな風には思えませんでした。
YouTube のコメントに中には、
こんなものもあります。
(もちろん、なりすますのは簡単ですが。)

Im a bengali, from east london..
This is a great movie, i dont understand
why the elders didnt really like it...
i guess they were angry
because it put the British Bangladeshis out into the mainstream,
and they wanted us to just be silent people in the UK...
but the film very true though...

<戦争絶滅うけあい法案>

高橋哲哉東大教授
「<戦争絶滅うけあい法案>というのがあります。
戦争がはじまったら、10時間以内に、
以下の者を一兵卒として前線に送るというものです。
まずは国家元首、賛成した国会議員、宗教指導者」
 

2015年7月24日金曜日

Dirty pretty things 2

この映画(『堕天使のパスポート』)については、
以前書きました。

http://tomo-524.blogspot.jp/2014/03/dirty-pretty-things.html

で、映画の舞台だった移民街が気になって、
もう一度見てみました。

この映画、ストーリーを知っていて見たほうが、
ずっと良く感じられました。
dirty な部分があることを知っていれば、
そこに、必要以上に目を奪われなくて済む、
ということなんでしょう。

主人公たちが住んでいる部屋は、
ダルストン・キングスランド駅のようです。
近くには、リドリー・ロードのマーケットもあります。
この「エキゾチック」な界隈、惹かれます!

クレテイユ映画

クレテイユは狭い地域なので、
もちろん「クレテイユ映画」というのは大げさすぎますが、
とはいえ、この土地で撮られた映画は少なくありません。

ついこの前見た Tellement proches は、
代表作だといえるでしょう。

それから、La première étoile
http://tomo-524.blogspot.jp/2015/07/la-premiere-etoile.html

このフィルムのオープニング・クレジットでは、
背景として、カリブでの黒人たちの生活、飛行機、に続いて、
クレテイユの街の空撮が映し出されます。
そこには、Tellement proches で中心的場所となった、
カリフラワー型の建物も含まれています。

(ちなみに、この2作のテーマとしての共通点の1つは、
ずばり、「ダメ男」。
30代で子持ち、無職、夢を捨てられない……
絵にかいたような「ダメ」ぶりですが、
でも、人間的な魅力はあるわけです。
映画の終わりに、このダメ男たちは、
それぞれ成長するのですが、
La première étoile の場合、
その点は、ちょっと甘すぎると言えるでしょう。)

それから Série noire
http://tomo-524.blogspot.jp/2015/05/blog-post_6.html

この舞台となった空き地に建てられたモール、
クレテイユ・ソレイユで、
La première étoile のダメ男はバイトしていたわけです。

それから、Les Héritiers という、
クレテイユのリセ(レオン・ブルム高校)を舞台にした作品があります。
『パリ20区、ぼくたちのクラス』の高校版、
という印象です。
(ユダヤ人の生徒が前景化される点に、違いがあるでしょうけど。)
ここでは、歴史(もちろんユダヤ人生徒が関連します)
に関するプレゼン・コンクールが、物語の縦糸になります。
生徒それぞれにとって、「歴史」はあるわけです。
まじめな映画です。

また、これはまだ見てないのですが、
Dix jours en or(2012)
という作品にも出てくるようです。
これはロード・ムーヴィーなので、
いろんなところが出てくるわけですが。
この映画、とっても見たいのですが、
なぜか DVD が出ません。出して~!

https://www.youtube.com/watch?v=e7nRrPWXqVY

*追記 Mohamed Dubois もそうでした。

『北ホテル』

古いフランス映画のDVDが、
10枚セットで1700円で売られています。
2シリーズあるので、20タイトルになります。
(「フランス映画名作コレクション」)

で、学生時代以来、数十年ぶりに見たのは、
『北ホテル』(1938)です。

https://www.youtube.com/watch?v=WIQ_NQjDNa8

https://www.youtube.com/watch?v=VsH6iBThxR0  (全編版)

この北ホテルは、
今も、パリのサン・マルタン運河沿いにあります。
今回パリでの滞在場所が、
この運河のすぐ近くなので、
それなら、ということで、
見てみたわけです。

名優ルイ・ジューヴェは、
いつも通り十分な迫力だし、
アルレッティ(以前パリで見かけました)も「立って」います。
が、
全体としては、ぎこちない印象もあります。
とても現実的に見えて、
実はほとんどおとぎ話的構造なので、
その落差がそうした印象を生むのでしょうか?
また字幕が、思い入れ過剰な意訳の部分があました。
日本における、
「フランス映画」のイメージに合わせているのでしょうか?
(全編版の8分過ぎ、
アルレッティがガウンからワンピースに着替え、
Ça va ?  「変じゃない?」と訊くと、
ルイ・ジューヴェはちょっと投げやりな感じで、
Ça va. 「ああ」と答えていますが、
この部分、
「どう?」
「いい女だ」
となっています。)

マルセイユ映画

昨日、La French について書いていて、
つい、「マルセイユ映画」という書き方をしましたが、
まあこのところは、
意図的にマルセイユ関連の映画を見ようとしたということはあります。
ココで触れた「マルセイユ映画」を、
思い出すまま、順不同で挙げるなら;

La French   これは昨日。

Bye-Bye  
http://tomo-524.blogspot.jp/2015/07/bye-bye.html
 


 
Comme un aimant 
 

Mayrig / Rue Paradis 588       
http://tomo-524.blogspot.jp/2015/07/mayrig-588-rue-paradis.html


Les Mains armées の出発点も、マルセイユでした。
http://tomo-524.blogspot.jp/2013/02/blog-post_18.html
 

仁義  冒頭
http://tomo-524.blogspot.jp/2015/07/blog-post_3.html


Conte de la frustration
http://tomo-524.blogspot.jp/2014/01/conte-de-la-frustration.html
 
 
そして『アイシャ』のママ、マダム・ブアマザも、
マルセイユ生まれでした。
もちろん、まだまだあるでしょう。

これらの作品群から、共通の何かを引き出すことができるでしょう。
たとえば「アルメニア」なら、
La French や、Mayrig / Rue Paradis 588 、
そして Les Mains armées に出てきました。
もちろん、文脈は違いますが。
(『96時間』シリーズにも、アルメニアは登場しますが、
ここでは、単に「悪」をあらわしているだけ?)
もちろん、コルシカ、アルジェリア、イタリア、
などの要素もあるでしょう。

いつか、「マルセイユ映画」のことも、
書ければいいんですが。

2015年7月23日木曜日

La French


かつて1972年に、
『フレンチ・コネクション』というアメリカ映画が公開されました。
テレビでも何度も放映されたし、
よく知られた映画だと思います。
で、
今日見たのは、この「フレンチ・コネクション」と、
新任の判事が対決する、

La French

です。
(東京国際映画祭では、「マルセイユ・コネクション」として
紹介されたようです。)

コルシカ出身者が中心となったマフィアが、
マルセイユの親分であるトニー(ジル・ルルーシュ)にブツを卸し、
それは精製され、アメリカに出荷されるのです。
もともと未成年犯罪の判事を務めていたピエール(ジャン・デュジャルダン)は、
「フレンチ・コネクション」担当になると、
麻薬に手を染める子供たちを助けるためにも、
この組織犯罪を殲滅しようと奔走します。が、
壁はなかなか厚く……

2時間を超える長尺ですが、
まったく飽きるところがありませんでした。
登場人物も少なくないのですが、
出し方がうまくて、混乱しません。
ブノワ・マジメルは印象的だし、
マルセイユ出身のムサ・マースクリもいつも通りの強面。
そしてなんといっても、
背景であるマルセイユの風景の美しさ。迷路性。
嫌味のないユーモアもあり、
また逆に、無駄に派手な銃撃戦もなく、
フィルム・ノワールとして、
とても好感が持てたのでした。

これはまちがいなく、
「マルセイユ映画」です。

*監督インタヴューがありました。

2015年7月22日水曜日

そろそろ

今日も暑くて、
東京は35度だったそうですが、
建物の中などは冷房が効いているので、
今は体がまだ「夏」に慣れません。

あと10日ほどしたら、
パリに行く予定なので、
そろそろ具体的な準備を始めようかというところです。
パリの猛暑は一段落したようで、
それは一安心というところです。

2015年7月19日日曜日

Rue Mandar

3人のベテラン俳優、
サンドリーヌ・キベルラン、
リシャール・ベリ、
エマニュエル・ドゥヴォス、
を揃えた映画、

Rue Mandar (2013)

を見てみました。

https://www.youtube.com/watch?v=gCckThSCLmo

監督は、女優としての活動がメインである、イディット・セブラ。
(ふつうに発音すれば、「スビュラ」ですが、
日本での表記にならいます。)
彼女の両親は、ポーランド系ユダヤ人で、
wiki によれば、1950年にフランスにやってきたとなっています。
そしてこの映画は、
まさに、そうしてフランスに移民してきた母親が、
パリ2区のマンダール通りで亡くなるところから始まります。
このユダヤ式のお葬式のために、
3兄弟が久しぶりに集まるのです。

主人公と言えるのは、末妹のエマ。
彼女は今、イスラエルに住んで、翻訳業をしています。
「イスラエルにいると、ちょうどいい靴を履いているような気がする」
と彼女は言うのです。
で、3人の間の大きな問題は、
母が住んでいたそのアパルトを、
売るのか売らないのか、ということです。
思い出もあり、ある種の故郷でもある13番地のアパルトは、
今はなかなかいい値で売れそうなのです……

素材はおもしろいし、
途中からは、13番地のかつての住人の息子が現れ、
そのスペイン系移民の家族とのつながりあたりは、
興味深いのです、が、
なんというか、演出が全体にゆるい感じ。
わたしが特にマイナスだと感じるのは、
長女を精神科医に設定した点。
彼女のセリフは型通りで、今更感があります。
またヒロインも、
大事なポイントは実質モノローグで語られ、
行動によって示されることはありません。

いい俳優たちを使ったのに、やや残念でした。

*サンドリーヌ・キベルタンも、ポーランド系ユダヤ人の家系です。
リシャール・ベリは、アルジェリア系ユダヤ人。

2015年7月17日金曜日

Tellement proches

『最強のふたり』の監督である、
オリヴィエ・ナカシュとエリック・トレダノ。
この二人が『最強』の2年前に発表した、

Tellement proches  (『こんなに仲良し』)2009

を見てみました。
これで見るのは2回目ですが、
やっぱりととってもおもしろい!

https://www.youtube.com/watch?v=7l5rRjTyV8k

まず、3兄弟がいます。
長男のジャン=ピエールは弁護士ですが、
大事件を裁くという彼の夢からは遠く、
「郊外のチンピラ」の国選弁護人です。
奥さんは、幼い二人の娘の英才教育に夢中で、
特にお姉ちゃんには、いくつもの習い事をさせ、
彼女の学校も、
バカロレアの取得率が高いユダヤ人学校(!)を選びます。
(もちろん一家はユダヤ人ではありません。
ただし監督のオリヴィエはユダヤ人です。)
彼らはパリ郊外のクレテイユの、
通称「カリフラワー」と呼ばれる団地に住んでいます。
長女のナタリーはスーパーで働き、
夫と幼い息子が二人。
上の子のリュシアンはなかなかの暴れん坊で、
夫のアランは求職中。
彼はかつて、地中海クラブのGO(イベントの司会など)をつとめ、
いつかは大劇場の舞台に「ピン芸人」として立つのが夢です。
つまり一言で言えば、「夢を追い続ける中年男」で、
まあ、イケメンのいい人ではあるんですが、
残念なピーターパンでもあります。
次女のロクサーヌもまた、ナタリーと同じスーパーで働いています。
(二人とも、レジ係ではなく、
それなりに責任あるポジションです。)
彼女はカレシ募集中で、そろそろ結婚を焦ってきています。

こうした状況の中、
実は兄弟それぞれにとって、
状況を撹拌する出来事が起こります。
長男は、ワルの親分に気に入られ、
その一味のお抱え弁護士になります。
また奥さんのカトリーヌは、
娘のユダヤ人学校のお手伝いをするうち、
その慣習にどんどんはまっていきます。
ナタリーとアランに関しては、
息子のリュシアンが撹拌役です。
息子への対応で意見が分かれ、二人は大喧嘩。
もちろん背景には、
夫のピーターパン状態に対する妻の大きな不満があるのです。
そしてロクサーヌのもとには、
ご存知オマール・シー演じるブルーノが現れます。
二人は偶然出会い、すぐに付き合い(と言えるか?)始めます。
医師になるためのインターン期間中である彼は、
その肌の色ゆえ、
いろんな場面で、配達人、ヘルパー、土産物売り、
などに間違われます。
(映画の中には、彼以外もう一人黒人が登場します。
ジャン=ピエールの子供たちのベビーシッター、ファトゥーです。
彼女はコート・ドィヴワール系です。)

こうした3つのレベルでの物語が、
からみあい、複雑に反応し合いながら、
最後はうまくオチがつきます。
これは、ぜひ日本版DVDをお願いしたいです。
一つ一つのセリフも気が利いていて、
とてもいい映画でした。

*このコンビの監督の作品としては、
『最強のふたり』以外に、

http://tomo-524.blogspot.jp/2013/04/nos-jours-heureux.html

http://tomo-524.blogspot.jp/2015/01/blog-post_22.html

もあります。

2015年7月15日水曜日

un jugement téméraire

憲法学者・小林節氏の発言から。

「今回、強行採決をされても、諦めないで下さい。(……)
違憲訴訟も準備しています。(……)
たくさんの人が集団訴訟を起こすでしょう。
今日も弁護士会でお願いをしてきました。
『何百人という話も出ていますが、1000人の弁護団を作りませんか』と。
そうすると、地裁の裁判官も『違憲』の判決を出しやすくなる。
私は死ぬまで諦めません」

http://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/161755/1

2015年7月13日月曜日

サミアとマリアム

2週間ほど前に、Bande de filles のことを書きました。

http://tomo-524.blogspot.jp/2015/06/bande-de-filles.html

これはとってもよかったのですが、
これを見たとき、ある映画を思い出しました。
で、今日また見てみました。
これです。

http://tomo-524.blogspot.jp/2013/10/samia.html

まず、両者の冒頭に、
ヒロインが学校の女性の先生と面接する場面があり、
そこでヒロインたちは、
この成績では、レジ係か店員として生きていくしかないわね、
という内容の宣告を受け、
それが二人のその後の行動に影響を与えることになる、
という要素があります。
そしてもう一点、
Bande de filles では、
あのリアーナのDiamonds に合わせて少女たちが踊る場面が
とりわけよかったのですが、
実はSamia のほうでも、それに似た場面があります。
ただこちらは、時間も短く、ちょっと遠慮がち。
しかも曲目はドナ・サマーのShe works hard for the money (!)。
これでは、
"We're beautiful like diamonds in the sky"
と歌うのとはずいぶん違いますが。
とはいえ、雰囲気はとても近いものがあるとは思うのです。

またさらに言えば、
背景にあるのが、
一方はアラブ社会であり、
他方は黒人社会であるわけですが、
少なくとも少女たちにとってそれは、
男性中心主義的暴力、として立ち現れます。
だからヒロインたちの道行きは、必然的に、
こうした厚い壁との対決を余儀なくされます。

Samia という作品は、
アラブ社会の日常を描こうとしている点などは、
『アイシャ』に通じるものもあります。
マルセイユを舞台とした映画としては、
忘れられないものの1つです。

2015年7月12日日曜日

『テロルと映画』

四方田犬彦さんの新刊、

『テロルと映画 ―スペクタクルとしての暴力』(中公新書)

を読みました。
映画が、これまでどうテロリスムを描いてきたか、
という点から出発して、
その点に関してとりわけとりわけ重要な監督たちの作品について、
スリリングに論じています。
あくまで映画論なんですが、
いわば、映画論と「現代」が出会う地点に焦点を合わせている感じです。
おもしろいし、
教えられるところも多い本です。

この本を読んだ後、
なぜか、去年見たこの映画をまた見てみました。

http://tomo-524.blogspot.jp/2014/04/london-river.html

これは、そのまま『ロンドン・リバー』というタイトルで、
日本版も出ているのですね。
やはり、とてもいい映画だと思いました。

2015年7月11日土曜日

図書新聞

今日発売された「図書新聞」(7月18日号)の、
「上半期読書アンケート」において、
澤田直さんが、『パリ移民映画』を挙げてくださっています。
先日の、読書人における宮島喬先生の書評も、
ほんとうに(ほんとうに)ありがたかったのですが、
今回の澤田さんのコメントも、
ほんとうに(ほんとうに)ありがたいものです。

あれは2010年、
わたしがレナさんと「まいにちフランス語・入門編」を担当していたとき、
「応用編」を担当なさっていたのが澤田さんで、
たまたま収録日が重なり、
隣同士のスタジオで収録したこともあります。
(もちろん、途中でのぞきに行きました!)

Omar Sharif

オマー・シャリフが亡くなりました。

https://fr.news.yahoo.com/l%C3%A9gende-cin%C3%A9ma-omar-sharif-meurt-%C3%A0-83-ans-141900533.html?vp=1

彼は、有名作品への出演も多いですが、
わたしにとっては、
なんといってもイブラヒムです。

また、つい二日前見た2本の映画、

Mayrig / 588 rue Paradis

でも、故郷アルメニアへの思いを抱き、
地に足の着いた生活をする父親を演じていましたが、
そうした彼も、よかったです。

長く語られる俳優となるのでしょう。

Monsieur taxi

ミッシェル・シモン主演のコメディ、

Monsieur taxi  (1952)

を見てみました。

https://www.youtube.com/watch?v=ucYkEC3V7ek

(この画家は、ルイ・ド・フュネスです。)

主人公は、タクシー運転手のピエール。
彼は、妻、新聞社で働く息子、そして娘と一緒に、
パリで暮らしています。
暮らし向きは、決して贅沢ではありませんが、
とても困っているというほどでもありません。
いつも、愛犬ギャングスターと仕事をしているピエールは、
仕事柄当然ですが、
パリのあちらこちらを走り回ります。

スターリングラード駅
ホテル・プラザ・アテネ
テルトル広場
オルフェーヴル河岸
etc.

ピエールはある日、タクシーの後部座席に、
大金の入ったハンドバッグの忘れ物を見つけます。
それをもらってしまう誘惑にかられながらも、
彼は持ち主を捜し歩くのですが、
ある誤解から、彼は警察に連れて行かれ……
ただ、もちろん最後は、ハッピーエンドです。

でもこの映画を見ると、
モータリゼーションの波は、
明らかに東京より早い段階でパリに押し寄せていたのが感じられます。
パリ好きには、
おもしろい映画ではないでしょうか?

2015年7月10日金曜日

Rengaine

今日の東京は、
ほんとに久しぶりに晴れて、
やっぱり晴れるといいですね。

で今日見たのは、

Rengaine  (『いつもの決まり文句、聞き古された歌』)

です。

https://www.youtube.com/watch?v=83Q1COSEnUg

黒人で、キリスト教徒で、
役者志望だけどほとんど仕事がないドルシーと、
アルジェリア系で、ムスリムで、
40人もの frères がいるサブリナは、
もう1年付き合っていて、
ついに二人は結婚しようということになります。
が、
二人それぞれが属しているコミュニティーには、
「黒人とアラブは結婚しない」
という鉄の掟があり、
それが二人の前に立ちふさがります。
この映画は、
そうした周囲の守旧派たちと、
若い二人の相克を描いているわけですが、
それはいわばエピソードの連なりとして在って、
いわゆるストーリーを形成してはいません。
もちろん周囲の反応と言っても、
そこにはさまざまな温度差があり、
そのへんが見どころと言えるでしょう。
特にサブリナ側では、
長兄のスリマンが、もうどうしようもなく反対するのですが、
実は彼には秘密の恋人ニナがいて、
彼女はユダヤ人なのです。
彼はそれをみんなに隠したまま、
サブリナの結婚を止めさせようと動くのですが、
やっぱりニナを前にすると、
自分の自己矛盾に苦しむのです。
しかも、黒人でゲイの友人は、
ニナがユダヤ人であることをどこからか知り、
スリマンの矛盾をなじるのです。

ハンドカメラを多用し、
またクロースアップも多い作りで、
それは、見ているわたしたちを、
当事者として巻き込む効果があるようです。

先日見たL'amour sur place ou a emporter も、
黒人男性とアラブ系女性のカップルが描かれていました。
共通する部分ももちろんありますが、
とにかく全体のトーンはずいぶん違います。
それは、主人公たちの属しているコミュニティーの違いから来るのか、
それとも、彼らの階層の差そのものから来るのでしょうか?

*ドルシーの自宅:23 rue André Barsacq

『ロベール・デスノス――ラジオの詩人』

たしかに日本ではマイナーではあるけれど、
シュルレアリスム詩を語るときには決して欠かせない存在である、
ロベール・デスノス。

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%AD%E3%83%99%E3%83%BC%E3%83%AB%E3%83%BB%E3%83%87%E3%82%B9%E3%83%8E%E3%82%B9

実は、もうずいぶん古い話になりますが、
大学の卒業論文では、この詩人のことを研究しました。
(「研究」というほどではないですが。)
そしてその後も何本か、
彼の詩について論文らしきものを書き、
ユリイカでも一度、デスノスについて書かせてもらったことがあります。
(ユリイカに書いたのは、それが初めてでした。)
つまりデスノスは、
わたしにとってはとても親しい詩人です。
なんといっても、詩がいいですし。

J'ai tant rêvé de toi
Que tu perds ta réalité…

そんなデスノスについての、評伝が出ました。

『ロベール・デスノス――ラジオの詩人』(水声社)小高正行
http://www.suiseisha.net/blog/?p=4444

この詩人の日本での本格的な紹介は、
これが初めてでしょう。
とても読みやすく、いい本だと思います。

ほんとに不思議なんですが、
デスノスのとてつもなく長い詩に、

The night of loveless nights   (中身はフランス語です)

というのがあるんですが、
かつてこれをがんばって訳したので、
それをどこかに発表できるかなと、
最近、ふと思ったりしていたのでした。
(デスノスのことを考えたのは、久しぶりなんですが。)

デスノスが日本でも読まれるようになれば、
わたしも嬉しいです。
この本は、きっとそのきっかけになってくれるでしょう!

2015年7月9日木曜日

Mayrig / 588 rue Paradis

マルセイユ繋がりで何か、
と思って探していて、
そういえばこの2作をまだ見てなかったことを思い出しました。

Mayrig (1991)

と、その続編である

588 rue Paradis (1992)

です。
アンリ・ヴェルヌイユ監督の自伝的要素も強いこの連作は、
それぞれ2時間を超える長尺です。
第一次大戦中(だけではありませんが)にオスマン帝国で発生した、
いわゆる「アルメニア人虐殺」。
これをかろうじて生き延びたアルメニア人家族が、
1921年、マルセイユにたどり着き、
そこから新生活を築いていくという、
まさに移民映画そのものです。

物語は、一家の子供であるアザッドの目を通して語られます。
(監督自身なんでしょう。)
俳優陣は豪華で、
少年の父がオマー・シャリフ、
母がクラウディア・カルディナーレ。
(なんて響きのいい名前なんでしょう。)
成長する少年は、何人かによって演じ分けられますが、
大人になってからは、リシャール・ベリが、
いつもの厚みのある演技を見せてくれます。
ちなみに、Mayrig というのは、
アルメニア語で「母」のこと。
少年の名の「アザッド」は、「自由」のことです。

Mayrig のほうでは、
マルセイユの名所的なところがいくつも映し出されますが、
印象的なのは、
初めてマルセイユに着いたときの背景に見える、
大聖堂でしょう。

そして映画の「場所」について言うなら、その
中心はもちろん rue Paradis(天国通り)です。

トータル4時間を超える大河的物語の中で、
まず一家が最初に住みつくのが、
この通りの109番地。
小さな仕立て屋を出すのが、168番地。
金持ちの同級生は412番地の豪邸に住み、
最後、アザッドが母にプレゼントする家が、588番地にあるのです。
一家の物語は、
この通りでの移動のそれであり、
また、
この通りの変化そのものでもあります。
現代のマルセイユを描く作品とは、
ずいぶん雰囲気が違いますが、
それは、部分的には、
移民一世と、二世・三世の違いでもあるのでしょう。

両作品は、YouTube で見ました。
これ、DVD は品薄で各1万円以上するので、
とても助かりました。

https://www.youtube.com/watch?v=kaVc_XVDk18

https://www.youtube.com/watch?v=5ZaJ5oHADIY (英語字幕付き)

2015年7月7日火曜日

辺境ラジオ

毎回、通勤時に愛聴している「辺境ラジオ」。
今回もおもしろいです。
無料です。

http://www.mbs1179.com/henkyo/

「外務省側の説明が虚偽だった可能性」

http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-245319-storytopic-3.html

多くの方が指摘していますが、
これでは、「属国」根性と言われても、
仕方ないですね。

2015年7月6日月曜日

Krystian Zimerman

11月に来日予定の、クリスチャン・ツィメルマン。
実はチケットを買っていて、
ただし買った時点では「曲目未定」だったんですが、
さっき久しぶりに確認したら、
なんと、
シューベルトのピアノ・ソナタ20&21 etc.
となっていました。
まいりました、この21番、
すべてのピアノ・ソナタの中で1番好きな曲です!

ツィメルマンと言えば、
ルトスワフスキが、
彼のためにピアノ協奏曲を作り、
実際彼が初演したことも知られていますが、
その、20年ぶりの新録音が、
7月初めに発売される予定でした。が、
こちらは、1か月半ほど、発売が遅れるようです。
いいです、待ちましょう、
何しろ今度は、
ラトル&BPOですから。
彼の代表作の1つになる可能性も十分あると期待しています。

YouTube には、
ツィメルマンによるこのピアノ協奏曲があがっています。
これは、気に入って、
何度も聞いている演奏です。

https://www.youtube.com/watch?v=eLLS0oatUEA

2015年7月5日日曜日

La première étoile

3週間ほど前に、ここで

http://tomo-524.blogspot.jp/2015/06/amour-sur-place-ou-emporter.html

について触れました。
アラブ系の女性と、アフリカ系の男性の、
ベルシーのスタバを舞台にした恋愛映画でした。
で、
今日見たのは、

La première étoile

ヨーロッパ系白人女性と、
アフリカ系(というかカリブ海系)男性の、
恋愛ものでした。
といっても今回、二人は夫婦であり、
3人の子供がいます。
住まいはクレテイユのHLMで、
経済事情はよくありません。
とはいえコメディーなので、
全体のトーンは明るいです。

https://www.youtube.com/watch?v=2z6sFnnLZ84  全篇版

ストーリーの中心にあるのは、スキー旅行です。
お金がないのに、子供たちに安請け合いした父親ジジェ。
でも今回は、もし約束を守らなければ、
わたしは出ていくと妻が宣言し、
なにがなんでもお金が必要になります。
そしてなんとか、旅行には行けるのですが……というお話。

この映画の根本的な「違和感」は、
黒人がスキーをする、という点です。
これは Amour sur place ou à emporter でも出てきたんですが、
「黒人は水泳とスキーはしないよね」
という、ある種の決まり文句があります。
これは、なにも「人種差別」ということではないようで、
それが証拠に、今回の映画でも、
ジジェの子供が、黒人の友だちに「スキーに行く」と話したところ、
彼らは大爆笑するのです。
また、ジジェの母親
(『ロミュアルドとジュリエット』のジュリエット役の女優による)
も、行きつけの美容室で同様の展開に立ち会います。
(ただこちらでは、「何が悪いの?」という女性もいますが。)
この決まり文句を前提にして、
それをいわば反転させるように作られたのが、
この映画ということになるのでしょう。

そして1つ、とても印象的だったエピソード。
旅先の雪山で、「スター誕生」的なイベントがあり、
そこにジジェの娘が出場したのですが、
彼女の歌う La montagne(1964) が、泣かせます。
(1  07  15秒あたりから)

このJean Ferrat の歌は、
単に山は素晴らしい、と言っているのではありません。
歌の冒頭は

「ひとり、またひとり、彼らは故郷を後にする、
生活費を稼ぎにゆくのだ、
生まれた土地を遠く離れて。

彼らはずっと夢見ていたのだ、
都会を、その秘密を、
フォーマイカを、映画館を」

そして、警官や公務員なんかになり、
HLMに住み、ホルモン漬けの鶏を食べ、
自分の選んだ人生を生きてゆくのだ、退職の日まで……

でも、とジャン・フェラは言うのです、
やっぱり山は素晴らしい、と。

https://www.youtube.com/watch?v=-RijiCk9H5k

この歌を、
カリブ出身の家系の少女が、
雪山で歌うこと。
ここに、この映画の1つのハイライトがあるのは間違いないでしょう。

ジャン・フェラの父親は、ロシア系のユダヤ人だったそうです。
ジジェたちとは違う道程ですが、
「生まれた土地を遠く離れ」た点は、
共通しているわけですね。

主役のジジェを演じたリュシアン・ジャン=バチストは、
監督でもあります。

2015年7月3日金曜日

『仁義』

ジャン=ピエール・メルヴィルの、1970年の作品、

『仁義』

を、30年ぶりくらいに見てみました。

https://www.youtube.com/watch?v=WPUaXBnqXpI  全篇版

原題は Le Cercle Rouge(赤い環)。
これは冒頭の、仏陀の言葉とされるこれ、

Quand les hommes, même s’ils s’ignorent, doivent se retrouver un jour,
tout peut arriver à chacun d’entre eux,
et ils peuvent suivre des chemins divergents ;
au jour dit, inexorablement, ils seront réunis dans le cercle rouge.

人は、それとは知らずにいつか出会うものだ。
とはいえ彼らの一人一人の身の上には、
どんなことでも起こりうるし、
だから彼らの道はバラバラなものになるのだろう。
しかし、その日が来たなら、
彼らは容赦なく再び一つになるのだ、赤い環の中で。

の最後の「赤い環」から。
まあ、日本語で言う「赤い糸」のニュアンスに近い感じもあります。
あえて言うなら、「宿命」でしょうか。
脱獄した男と、刑期を終えた男と、
汚職と酒で人生をダメにした元刑事と。
赤い環は彼らを繋いで見せます。
(とりあえず、「仁義」とは関係ないですね。)

2時間以上の大作で、
中盤、ヴァンドーム広場のモーブッサンを襲うシークエンスでは、
なんと30分近く会話がありません。
また冒頭の7分も会話なしです。

そしてその冒頭ですが、
これは、マルセイユ・ブロンカルド駅です。
今は、メトロやトラムが通る駅ですが、
70年には、まさに「フツー」の田舎駅です。
もちろん、それはそれでいい感じです。

2015年7月2日木曜日

Comme un aimant


マルセイユと言えば、
この映画がありました。

Comme un aimant   (『磁石のように』) 2000

この映画は、カメル・サレの監督・脚本で、
脚本にはマルセイユのラッパー、アケナトンも加わり、
二人はまた出演もしています。
マルセイユでなければならない映画です。

https://www.youtube.com/watch?v=zBz-LUtC990

8人の移民系のワカモノたち。(画像)
彼らはマルセイユで、
仕事もなく、ブラブラし、
時にチンケな犯罪で小銭を稼ぐ日々です。
彼らの、社会に対する恨みは深く、
また、自分のふがいなさそのものも嫌悪しています。
でも、彼らは若い。
集まれば騒ぎ、飲み、ナンパし、泳ぎに行き……
未来に希望はないけれど、
刹那的には、 joie de vivre 生きる喜びに満ちることもあります。
申請すれば、RMI(社会参入最低所得手当)がもらえるのですが、
それは彼らのプライドが許しません。
(「ムッシュRMIst なんて呼ばれてたまるかよ!」16分30秒)

そして後半、映画は徐々にトーンが変わってゆきます。
8人の1人、また1人と、
逮捕されたり、ほんもののギャングに追われたり、
最愛の母を失ったショックで、
訳が分からないまま強盗に入り、撃たれたり……

『憎しみ』に似ているところもありますし、
意識しているんだろうな、と思う個所もあります。
(特に、エンディング近く、1.22.45秒あたりからのシークエンス。
仲間を失ったカウエットが、
ガソリン運搬車を盗むのですが、
ここは、ヴィンスが、
拾った拳銃で警察官を撃つ場面ととても似ています。
両方とも、印象的。)

音楽は、
もちろんアケナトンのものが多いのですが、
マリーナ・ショウの曲をサンプリングしたものもあります。
たとえば、

https://www.youtube.com/watch?v=0oRZcAwlcx0

マルセイユについて言えば、
passage de Lorette や、
montées du Saint Esprit などが出てくるのですが、
これって観光では行きにくいかもしれません。
42分あたりから5分ほど、
エピソードを挟みつつ進む
夜のマルセイユを車で流すシークエンスは、
とても「街」の感じが伝わってきます。
(ナンパされた女の子たちが、
Merci, on est attendues.
と言って断るのですが、
この受動態もいい感じ。)

いい映画って、たくさんあるものですね。

2015年7月1日水曜日

retweet

retweet します。

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下品で攻撃的で
「政治的に正しくない」発言をする方がポピュラリティが高まり、
政治家としてのキャリアが開けるということを
自民党の若手たちは学習したのでしょう。

https://twitter.com/levinassien
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なるほど。
そしてこれも。

http://sun.ap.teacup.com/souun/17747.html

Bye-Bye


『マルセイユの決着』を見たときには、
舞台となったいくつかの通りをストリート・ヴューで確認したのですが、
そうすると、もっとマルセイユが見たくなってきて、
以前見て、
マルセイユの街並みが、
映画そのものの印象に強く影響していると感じられた映画、

Bye-Bye   (1995)

を、久しぶりに見てみました。
これ、やっぱりいい映画です。
20年も前の映画ですが、
まったく古びていませんでした。
やさしさも、人生の疲れも、暴力も、悲しみも、エロスもあります。

上の画像は、DVDもジャケ写なんですが、
これだけ見ると、あまりそそられません。が、
実はこれ、麻薬のディーラーの手伝いを始めようとしていた弟を、
兄がアジトに取り込んで奪還し、
その後二人で逃げいていく場面なんです。
画像だけでは、考えもしない状況ですが、
そう思って見ると、ちょっと違って見えてきます。

https://www.youtube.com/watch?v=uK5vI7npgjs

イスマエルとムルードの兄弟は、
パリからマルセイユに、
オンボロ車に乗って引っ越してきます。
行く先は、伯父さんのアパルト。
12歳のムルードは、近々チュニジアに帰ることになっていますが、
本人は、ゼッタイ行きたくない、と思っています。
伯父さんのアパルトは狭いけれど、
伯母さんはやさしいし、意地悪したりはしません。
でも、兄弟にとって、
生きていくのは簡単じゃありません。
イスマエルは、
伯父さんに紹介してもらった工事現場の仕事を失い、
弟は、いとこと一緒に、
麻薬を売りさばこうとします。
まだ中学生くらいなのに。

でもこうして書こうとすると、
この映画が、
とりわけストーリーがあるわけじゃないことに(やっと)気づきます。
見ているときは、
引き付けられていて、
そんなことにさえ気づきませんでした。

ひとつ、明確には示されない重要な要素があります。
それは、両親がチュニジアへ帰り、
兄弟がパリを離れるきっかけとなった火事についてです。
不注意からこの火事を起こしてしまったのはイスマエルなんですが、
実は彼のもう一人の障害がある弟が、
この火事で亡くなってしまったのです。
イスマエルは、このことの罪悪感に、
絶えず責められています。

また、麻薬ディーラーたちの縄張り争いに関して言うと、
そこには、ヨーロッパ―系白人と、アラブ系の対立があります。
この前者は人種差別的で、
ブルキナ出身の男性と白人女性の野外結婚式に押しかけ、
新郎を愚弄したりもします。
(英語で bobo と言うと、
ブルキナ系の人を指すことがあるようですが、
映画内では、この同じ bobo という語が使われていました。)

ちなみに、イスマエルは、
ヤスミンという、やはりアラブ系の女の子と関係を持つのですが、
それは、ヤスミンを、
彼女のカレシであるヨーロッパ系男性から奪う結果になります。

マルセイユについて言えば、
坂が多く、しかも細い路地の多いこの街の雰囲気が、
やはりよく出ていました。
そしてイスマエルが仕事に行くとき乗るバスは、
海沿いを走るのでした。

久しぶりに見て、
こんなに良かったっけ?
と思ったのでした。

*イスマエルを演じた、チュニジア系のサミ・ブアジラと、
ヤスミンを演じたノザ・クアドラは、
↓ でも、夫婦を演じていました。

http://tomo-524.blogspot.jp/2013/10/omar-ma-tuer.html

こちらは2011です。
二人とも、大人になっていました。

@一橋

これは、映画も見られて、
勉強にもなりそう。

http://kaken-eurs.jimdo.com/in-%E6%9D%B1%E4%BA%AC/

http://pratiquestheoriques.blogspot.jp/

わたしも行くつもりです!