2015年7月17日金曜日

Tellement proches

『最強のふたり』の監督である、
オリヴィエ・ナカシュとエリック・トレダノ。
この二人が『最強』の2年前に発表した、

Tellement proches  (『こんなに仲良し』)2009

を見てみました。
これで見るのは2回目ですが、
やっぱりととってもおもしろい!

https://www.youtube.com/watch?v=7l5rRjTyV8k

まず、3兄弟がいます。
長男のジャン=ピエールは弁護士ですが、
大事件を裁くという彼の夢からは遠く、
「郊外のチンピラ」の国選弁護人です。
奥さんは、幼い二人の娘の英才教育に夢中で、
特にお姉ちゃんには、いくつもの習い事をさせ、
彼女の学校も、
バカロレアの取得率が高いユダヤ人学校(!)を選びます。
(もちろん一家はユダヤ人ではありません。
ただし監督のオリヴィエはユダヤ人です。)
彼らはパリ郊外のクレテイユの、
通称「カリフラワー」と呼ばれる団地に住んでいます。
長女のナタリーはスーパーで働き、
夫と幼い息子が二人。
上の子のリュシアンはなかなかの暴れん坊で、
夫のアランは求職中。
彼はかつて、地中海クラブのGO(イベントの司会など)をつとめ、
いつかは大劇場の舞台に「ピン芸人」として立つのが夢です。
つまり一言で言えば、「夢を追い続ける中年男」で、
まあ、イケメンのいい人ではあるんですが、
残念なピーターパンでもあります。
次女のロクサーヌもまた、ナタリーと同じスーパーで働いています。
(二人とも、レジ係ではなく、
それなりに責任あるポジションです。)
彼女はカレシ募集中で、そろそろ結婚を焦ってきています。

こうした状況の中、
実は兄弟それぞれにとって、
状況を撹拌する出来事が起こります。
長男は、ワルの親分に気に入られ、
その一味のお抱え弁護士になります。
また奥さんのカトリーヌは、
娘のユダヤ人学校のお手伝いをするうち、
その慣習にどんどんはまっていきます。
ナタリーとアランに関しては、
息子のリュシアンが撹拌役です。
息子への対応で意見が分かれ、二人は大喧嘩。
もちろん背景には、
夫のピーターパン状態に対する妻の大きな不満があるのです。
そしてロクサーヌのもとには、
ご存知オマール・シー演じるブルーノが現れます。
二人は偶然出会い、すぐに付き合い(と言えるか?)始めます。
医師になるためのインターン期間中である彼は、
その肌の色ゆえ、
いろんな場面で、配達人、ヘルパー、土産物売り、
などに間違われます。
(映画の中には、彼以外もう一人黒人が登場します。
ジャン=ピエールの子供たちのベビーシッター、ファトゥーです。
彼女はコート・ドィヴワール系です。)

こうした3つのレベルでの物語が、
からみあい、複雑に反応し合いながら、
最後はうまくオチがつきます。
これは、ぜひ日本版DVDをお願いしたいです。
一つ一つのセリフも気が利いていて、
とてもいい映画でした。

*このコンビの監督の作品としては、
『最強のふたり』以外に、

http://tomo-524.blogspot.jp/2013/04/nos-jours-heureux.html

http://tomo-524.blogspot.jp/2015/01/blog-post_22.html

もあります。