2016年12月26日月曜日

異界へ

今日はクリスマス、なんですが、
昼過ぎ、ふと思い立って、
立川の場外馬券場に向かいました。
有馬記念です。

競馬は、
もう30年以上前、
1,2 年けっこう集中的にやって、
それ以降は、完全に離れていましたが、
たしか一昨年の有馬記念のおり、
20数年ぶりに参加し、
競馬の世界の雰囲気が、
あまりに変わっていないことに衝撃を受けた記憶があります。
そして今日、一昨年の有馬記念以来2年ぶりに、
あの「異界」に参加してみたくなったわけです。

タナトス、というほどおおげさじゃないにしても、
場外馬券場には、
普段私たちが生きているのとは別の論理がみなぎっています。
9割以上が「オジサン」ですが、
女性たちの姿もちらほら見えます。
老女の姿もあります。

馬券を買ったら、
すぐに1階の、
大型モニターの前に向かいます。
すでに、100人以上の人たちが、
スクリーンを取り巻いています。
わたしも、その人ごみに加わります。
やがて、
GⅠレースのファンファーレが鳴り響こうとするとき、
集まった群衆たちは一斉に、
手拍子を打ち始めます。
ビル1階のホールは、異様な熱気に包まれます。
初めてここに来たらしい人たちは、
この手拍子の迫力に飲み込まれています。
画面の中では、
中山競馬場の群衆もまた、
そうしているのがわかります。

そしてスタート。
怒号に近い叫びが、
いくつもいくつも吐き出されます。

レース中盤、
ダイヤモンドが仕掛け始めると、
群衆は波のようにどよめきます。

そしてゴール前、
ダイヤモンドが差し切ると、
ついに歓声は弾け、
安堵とため息に変わってゆきます。
人々の表情はやわらぎ、
現実が帰ってきます……

だから、
馬券を買って、
家でテレビを見ているのでは、
ダメなのです。
場外馬券場という、
ごく身近にある異界に身を浸さなくては。
何年かに1度、
まだたしかに異界が失われていないことを確認するのは、
わるくないと思うのでした。

(もちろん、国家がカジノを運営し、
異界の論理を日常に持ち込み、
寺銭を巻き上げ、敗者の金を吸い上げ、
それを「経済政策の柱」に据えるなんていうのは、
まったく問題外だと思いますが。)