2017年1月31日火曜日

Alyah

3週間ほど前、
『アナーキスト』という映画を見て、
ここでも書きました。

http://tomo-524.blogspot.jp/2017/01/blog-post_94.html

で、この映画の、
なんというか、問題意識の在り方が、
ちょっとそそられたわけです。
で、
同じ監督(脚本も)の、前作を見てみました。

Alyah (2012)

https://www.youtube.com/watch?v=mU5ucIgeOu0

この「アリーヤー」とは、ヘブライ語で、
「イスラエルの地への移民」
を意味しているそうです。

主人公のアレックスは、ユダヤ人。
麻薬のディーラーとして、
パリに生きていますが、
それでいいと思っているわけではありません。
(物語冒頭の売買は、シャトー・ドー駅のすぐ近く。)
また彼の兄は、いわば落伍者で、
アレックスのもとに現れては金の無心を繰り返し、
あげくは、商売物の麻薬を持ち逃げしたりもします。
そこでアレックスが考えたのが、
イスラエルへの移民です。
ユダヤ人である彼だからこそ可能なこの選択肢を、
今や具体的に考え始めるのです。
そんな時彼は、ユダヤ人ファミリーの集まりにおいて、
ジャンヌと出会い、恋に落ちます。
ジャンヌは訊きます、どうしてイスラエルへ?
「だって、誰もパリにいてって言わないから」
「……いてよ」
アレックスの心は揺れます。
テル・アヴィヴで心機一転を図るか、
パリで、麻薬を売りながら、
ジャンヌと付き合ってゆくか……

まず、いうまでもなく、「パリのユダヤ人」を描く映画です。
しかもその主人公が、犯罪者で、
それを清算するために、
イスラエル移民を考えるという、
今までにない展開です。
比較できるのは、これでしょう。

http://tomo-524.blogspot.jp/2011/02/la-petie-jerusalem.html

でもこの場合は、
反ユダヤ的活動に嫌気がさして、
イスラエルに向かうのでしたから、
今回とは意味合いがだいぶ違います。

監督は、さまざまなジャンルの要素を入れたかったと語っていて、
なるほどここでは、
犯罪映画、家族映画、恋愛映画、宗教映画、などの要素が、
混然一体となっています。
「パリ映画」を語る上では、
素通りできない作品だと思いました。
(Amazon USA では、
ヴィデオ視聴が購入できます。)

ジャンヌを演じたのは、
『黒いスーツを着た男』で、
R. ペルソナの婚約者を演じたアデル・エネル。
今回の彼女は、よかったです。
また、『アナーキスト』にも出ていた、
ギヨーム・グイも出ています。

音楽は、シェーンベルクの「浄められた夜」。
無論、「アリーヤー」が持つ意味と、
繋がっているのでしょう。

(備忘録として、これも。

http://tomo-524.blogspot.jp/2014/03/dans-la-vie.html )

2017年1月30日月曜日

Divines

強烈な映画と出会いました。

Divines (2016)

です。

https://www.youtube.com/watch?v=0VKNHB7WBHA

この映画、カンヌ映画祭でもかなり話題になり、
早く見たいとずっと思っていたのですが、
やっとDVD が発売になり、見ることができました。
(映画の話をよくするフランス人の先生とも、
見た? まだ? という会話が何度かありました。
彼女は先週見たそうです。)

パリ郊外のル=ブラン=メニル。
その、ロマ人キャンプで暮らすアラブ系の少女ドゥニアと、
彼女の親友、黒人でムスリマのマイムナ。
この二人の少女の前で、
(そして彼女らを取り巻くワカモノたち、
さらにはドゥニアの母親を含む大人たちの前でも)
未来は、暗く、固く閉ざされています。
ドゥニアたちにとって、ごくわずかな、
もうそこに賭けるしかない出口は、
麻薬の密売でした。
だからこそ彼女らは、
その地区を取り仕切る女性売人レベッカに近づき、
進んで彼女の手下になります。
そして……(とここまでで1/3 くらい。)

強く烈しい、と書いて「強烈」なわけですが、
この映画はまさにそれ。
まず、主人公であるドゥニアの強さ。(そして怖れ。)
そして登場人物たちの生き方の烈しさ。
そして、その描き方の烈しさ。
なんだか、ネタバレに注意すると、
どんどんあいまいな言い方になってゆきますが……。

そして、音楽の使い方も独特でした。
DVD を再生し始めると、まずメニュー画面になるわけですが、
その時流れてきたのが、
モーツァルトのレクイエムの、ラクリモーサ(涙の日)。
(この日本語タイトルは、larme(涙) との繋がりで、覚えやすいです。)
いわゆる「郊外映画」を見るとき、
クラシック音楽が流れるとは思っていないので、
ここでまず驚かされました。
そして劇中では、
ヒップホップももちろんかかるのですが、
モツレク同様目立った曲、
それはヴィヴァルディのニシ・ドミヌスでした。
この歌曲が、映像との強いコントラストを作り出しながら、
他にはない空気を醸成していました。
YouTube を探したら、なんと、
プレイ・セットがすでに上げられていました。

https://www.youtube.com/watch?v=zOjkdMJ9miI&list=RDzOjkdMJ9miI

監督は女性です。

http://www.lemonde.fr/festival/video/2016/08/31/houda-benyamina-je-suis-une-guerriere_4990425_4415198.html

女性戦士、ですね。

そして主演は監督の妹。
二人は、モロッコ系の家庭に育ったようです。

日本で公開されるでしょうか。
ぜひして欲しいです。

2017年1月29日日曜日

ジャレッド・クシュナー

トランプの娘イバンカ、
その夫であるジャレッド・クシュナーは、
大統領上級顧問(通商・中東政策担当)に就きました。

http://jp.reuters.com/article/usa-trump-kushner-idJPKBN14T2AM

彼はユダヤ人で、
妻のイヴァンカも、
彼と結婚するためなのでしょう、
ユダヤ教に改宗したと言います。

ユダヤ人・ジャレッド・クシュナーが、中東を担当する。
しかもワシントン・ポストによれば、
クシュナー家は、在米財団を通じて、
2011~13年、ヨルダン川西岸の入植地に、
5万8500ドルを寄付したそうです。

で、イスラエルのアメリカ大使館が、
エルサレムに移転する案が出ています。

http://www.tokyo-np.co.jp/article/world/list/201701/CK2017012302000110.html

もしこれが実現すると、
アメリカはエルサレムを、
「イスラエルの首都」と認めることになり、
これはオスロ合意を無視することになるので、
それはアラブ側も黙っているはずはなく、
「第3次世界大戦」の危機が、
とも言われるわけですね。

ユダヤ関連では、
しょーもない陰謀説がしばしば語られますが、
大統領上級顧問というのは、
権力の中枢。

オバマは、イスラエルの入植活動を、
厳しく批判していました。
でも、今その活動は復活し、
このまま行けば、
イスラエルは孤立するでしょう。
トランプのアメリカもまた、孤立するでしょう。
でも彼らは、それで構わないと思っているのでしょう。
(で、モンロー主義だと言われるわけですね。)

心配ですね。

音読つき

昨日、リバティー・アカデミーの講座に出てくれている、
Yuko さんから教わったインスタ。
フランス語のお勉強です。

https://www.instagram.com/talkinfrench/

音読してくれるのがいいですね!
「あの人たち、あんなに飲んだくれる必要があるわけ?」
(そうおっしゃる気持ちはよくわかりますが、
飲まなきゃならないんでしょうね、たぶん……)

2017年1月27日金曜日

一夫多妻

一夫多妻は、フランス語なら polygamie で、
英語なら polygamy で、
まあほとんど同じです。

フランスの場合、アフリカ系の移民の中には、
この制度を保っている人たちがいるようです。
(決して多くはないようですが。)

で、
今週はよく見ているMFFF でも、
これを扱った作品があります。
『ママたち』
です。

http://www.myfrenchfilmfestival.com/ja/movie?movie=40463

この作品を含めて、
短編はみんな無料で自由に見られます。
ここまでに、5,6本見ましたが、
みんな工夫がありました。
短編も、たまにはいいですね。

2017年1月26日木曜日

『サマー・フィーリング』

MFFFからまた一本。
ポスターには、
(申し訳ないけれど)
まったく興味を感じなかった、

『サマー・フィーリング』(Ce sentiment de l'été)

を見てみました。
結論から言うなら、とてもいい映画でした。
(もっといい日本語タイトル、あるはずだと思います。
単純に、『夏の思い』でも、これよりマシでは?)

https://www.youtube.com/watch?v=3N23H7Q-Img

<以下、ラストまでのあらすじです。
ただし、表面的には、「ドラマ」はほとんど起きないのです。>

最初の舞台はベルリン。
アメリカ人で翻訳家のロレンスは、
フランス人でアーティストのサシャと暮らしています。
が、ある日、何の前触れもなく、サシャが急死。
フランスから駆け付けたのは、サシャの両親、姉のゾエとその夫。
彼らはロレンスに、
二人で使っていたものは、全部君のものだ、サシャの貯金も、
と言います。
そして舞台は、観光地として名高いアヌシー湖に。
両親は、この湖畔に住んでいるのです。
ゾエは子供と、この美しい場所に、遊びに来ています。
そしてパリ。
ゾエと夫との間には、かわいい男の子がいます。
夫婦は別居中なんですが、
けっしてとげとげしい関係ではありません。
夫と子供が住んでいるのは、
レピュブリック広場の近く。
フォーブール=デュ=タンプル通りから少し入った
(13年のテロで襲われたピザ屋さんの隣の)建物です。
ゾエはと言えば、ナシオン広場近くの安ホテルで、
住み込みで働いています。
その後、一年ほどたち、また夏が来て、
ロレンスがパリにやってきます。
彼はゾエに、サシャの面影を見ます。
次の舞台は、さらに一年後、夏のニューヨーク。
ロレンスは、時に姉が経営するアンティーク・ショップを手伝いながら、
なんとか笑顔で暮らしています。
そんなころ、夫と別れたゾエがニューヨークに。
テネシーの友人を訪ねる途中に立ち寄ったのです。
一方ロレンスは、
姉の店で働く移民の女性と仲良くなり、
その関係を深めてゆきます……

前回見た『モカ色のクルマ』に少し似て、
全編を「不在」が覆っています。
そして抒情的で、静謐で、
かといって重すぎない、
見ていていい感じがする映画でした。
景色もきれいだし。

印象に残ったのは、ゾエを演じたジュディット・シュムラ。
「ジュディット」(=「ユダヤ人女性」)という名前ですから、
おそらくはユダヤ人なのでしょう。
そうそう、以前この映画でも、
ユダヤ人3姉妹の次女を演じていました。

http://tomo-524.blogspot.jp/2016/10/rendez-vous-atlit.html

父親がチュニジア系フランス人で、
母親はヨーロッパ系フランス人のようです。

構図は大きくて、描写は繊細。
女性監督の作品に多く感じられる、
細やかな表現に、驚かされたり。
Mikhael Hers監督は1975年生まれですから、
今後の作品が楽しみです。

2017年1月25日水曜日

「いま 肖像写真を撮るということ」

同僚で写真評論家の倉石信乃さんと、
写真家田代一倫さんの対談です。

http://webneo.org/archives/41493

(写真は、スライドショーになってます。)

アジェがパリ郊外を撮った写真と比較しているあたり、
特に興味深く読みました。
また、田代さんの、
「東京は記憶の連続性を絶たれてきた、不幸な都市だと思う。」
という発言も、
そういう見方もあるのかと新鮮でした。
ナンシーからの引用も、
はまってますね。



『モカ色のクルマ』『転校生』

MFFFから、
今日は2本見ました。

『モカ色のクルマ』 (2016)
『転校生』 (2014)

前者は、
エマニュエル・ドゥヴォスとナタリー・バイという、
大物女優二人が主演。
抒情的で、静謐で、ミステリアス。
いい映画だと思いました。
舞台はスイスのエヴィアン。
(あの水の街ですね。)
ディアンヌ(=エマニュエル)は、一人息子を奪った7か月前の轢き逃げ事件の犯人を捜しています。
(警察にまかせろという夫とは、6か月前に離婚。)
探偵の協力もあり、
対象者はかなり狭まっています。
そしてもっとも疑わしいのが、
マルレーヌ(=ナタリー)です。
ディアンヌは、マルレーヌに接近しますが……

エマニュエル・ドゥヴォスは、
こういう役を演じるのはほんとにうまい。
存在感があるというか。
表面上は、それほどのことは起こらないのに、
彼女の内面のドラマが、
その張り詰め方が、
映画を支えているように感じました。

そしてもう一本の『転校生』。
ル・アーヴルからパリ15区に越してきた中学生。
彼はなかなか新しい級友になじめません。
そんな時仲良くなったのが、
スウェーデン人のかわいい同級生。
ここから、恋と青春の物語が始まる、というわけです。
嫌味のない、素直な映画ですが、
舞台となった中学校の生徒たちは、
裕福なのね、という感じ。
アラブ系、アフリカ系の生徒は、ごく少ない学校でした。

2017年1月23日月曜日

「フランソワが、また一人」

「映画の向こうにパリが見える」の第11回目が、
時事.com にアップされました。

http://www.jiji.com/jc/v4?id=hssfranse-011-17020001

今回取り上げたのは、
『アンタッチャブルズ』。
この連載で、オマール・スィーが登場するのは2回目です。
まあ、彼が注目の俳優であるのは、
まちがいないところでしょう。
(去年、来日がキャンセルされたのは、
残念でした。)

よろしければ、お読みくださいませ。

『正しい人間』

MFFF の第2弾。
ニコラ・デュヴォーシェル主演の、

『正しい人間』 (Je ne suis pas un salaud.)

を見てみました。

https://www.youtube.com/watch?v=zz-inuB6G_E

これは、か~な~り重い。
風が抜ける人物を(おそらく敢えて)設定しておらず、
閉塞感は「パナイ」感じです。

飲んだくれで、仕事にもつかないエディーは、
妻と幼い子供がありながら、
家から追い出されています。
でも彼が、盗みをとがめた暴漢たちに逆に襲われ、
大怪我を負ったのがきっかけで、
妻は彼を再び家に迎え入れます。
そしてさらに、勤め先の家具センターの上司に話し、
エディーもそこで働かせてもらえることに。
(ただ、給料はほとんどSMIC=最低賃金、ですが。)
またエディーは、警察に協力し、
犯人を特定します。
でも、このとき指名されたアラブ系の青年アハメッドは、
まったくの無実でした……

ニコラ・デュヴォーシェルは好きな俳優です。
今回も、彼自身は悪くなかったです。
でも、映画自体は、
あまりに破滅的すぎる、という印象を持ちました。

H

たまたま YouTube で見つけた H。
「字幕」のところで、日本語字幕を出せます。

https://www.youtube.com/watch?v=DJu2m0Fqdv0

ジャメル・ドゥブーズ + エリック&ラムジーですから、
主役級が3人。
豪華ですね!

フランス語版はこれ。

https://www.amazon.fr/LInt%C3%A9grale-saison-Coffret-DVD/dp/B000BG0ED6/ref=sr_1_4?ie=UTF8&qid=1485133575&sr=8-4&keywords=h+eric+judor

2017年1月22日日曜日

『わたしはパリジェンヌ』

マイ・フレンチ・フィルム・フェスティヴァルから、

Peur de rien (『わたしはパリジェンヌ』)

を見てみました。

https://www.youtube.com/watch?v=3LYzkN98rcU

レバノンからパリに留学してきたリナ。
当初彼女は、裕福な叔母夫婦の家に住む予定でしたが、
義理の叔父に関係を迫られ、
その家を飛び出します。
その後は、あちこち転々としながら、
また何人かの男たちと仲良くなりながら、
パリで生活を続けます。
が、履修した科目に一貫性がなく、
就労時間も規定オーヴァーで、
国外退去を命じられ…… というお話。

一番のポイントは、
時間的舞台が1993年だということ。
つまり、移民に冷淡なことで名高い、
あのパスクワ法が成立した年なのです。
途中、
「パスクワは、ゲイとジャンキーとアル中を締め出したいんだ。
ミロシェヴィッチをやっつける代わりに」
と叫ぶ酔っ払いが出てきますが、
これが物語全体の背景にあります。
目の付け所としては、とてもいいんじゃないかと思います。
(そして、この93年というのは、
レバノン内戦が終わってから3年目。
そしてこの年に18歳だということは、
ヒロインは、まさにこの内戦が始まった75年頃に生まれたことになります。
彼女の人生は、まさに内戦の時代でした。
ただし彼女によれば、
死者を見たり爆撃にあったりはしていない、
ただ爆弾が落ちる音を聞いただけだ、
とのことですが。)

主演しているレバノン人女優 Manal Issa も、
なかなか魅力的。
特に、ちょっと微笑んだときの感じが。

さて、では作品自体はというと、
何かこう、ドライブするソウル、みたいなものが、
足りない気もします。
ブルジョワの、女好きな社長、
極右の学生たちなどは、
ややステレオタイプだし、
主人公の生き方そのものが、
グッと迫ってくるものが足りない気もします。

なかなかの意欲作だと思うのですが、
いわゆる「何か一つ足りない」感もまた、
残ってしまうのでした。

2017年1月19日木曜日

「映画都市パリ」(渡辺芳敬)

今日、たまたまネット上で見つけた論文。

https://dspace.wul.waseda.ac.jp/dspace/bitstream/2065/48749/1/GakujutsuKenkyu_Jinbun_64_Watanabe.pdf#search=%27%E6%98%A0%E7%94%BB%E3%81%AE%E5%90%91%E3%81%93%E3%81%86%E3%81%AB%E3%83%91%E3%83%AA%E3%81%8C%E8%A6%8B%E3%81%88%E3%82%8B%27

おもしろかったです。

今、手元に論文の校正刷りがあって、
あちこち直してるんですが、
書いた時からもう1年くらい経っているので、
今ならこういう構成にはしないんだけど、
と思ってしまいます。
まあ、構成まで直すことはできないので、
とりあえず、少しでもマシなものになるように、
直すことにします。

Manon est en forme.

こたつを出してから、
ほんとに「丸くなる」時間が増えたManon ですが、
時々ふらりと出てきて、家中を散歩します。

まずは友達に挨拶(?)。


こんな狭いところ、わざわざ乗らなくても……


これ、押さえ込んでるつもりのようです。
(このあとしばらく押さえてました。)



広田湾から

あの、「奇跡の一本松」が立つ、広田湾。
そこで採れた牡蠣をいただきました。


Mmm...
素晴らしい味。
今まで牡蠣は、まあふつうに食べてきましたが、
その中でも、
たとえばオイスター・バーで食べたものに比べても、
こちらのほうがおいしい気がしました。
シルキー、と言いたくなるような舌触りも。
そして「陸前高田」というもの、
響きのいい名前ですね。

2017年1月17日火曜日

授業終了

今年度の後期授業、
今日で無事終了することができました。
ちょっとほっとしました。が、
まだこれから入試や修士論文の審査が控えているので、
あと1か月は、
微妙に緊張しっぱなしの時期で続きます。

そして、トランプの就任日も近づいてきて、
なんだか不穏な雰囲気もありますし、
そもそもこの大統領、
4年続くのだろうか? と思っていると、
そんなこと、ずっと前から言われているわけなんですね。

retweet ***********************

9月のブックフェアのトークショーで
西川賢先生が
「全国レベルでは無名だったペンスが副大統領を受けたのは、
当然トランプが任期中に死ぬ、弾劾される、飽きて政権を投げ出す、
という可能性を見込んでの動きだろう」
と語っていたのが
いまさらながら思い起こされるところ。

******************************


2017年1月14日土曜日

マイ・フレンチ・フィルム・フェスティバル

ついに、
今年の作品が発表されました。

http://www.myfrenchfilmfestival.com/ja/

この中では、
『アイム・オール・ユアーズ』と(なぜか英語で)題された作品、
これは面白かったです。

http://tomo-524.blogspot.jp/2016/08/je-suis-vous-tout-de-suite.html

なんだか、
例年にも増して、
面白そうなものが多いですね。



2017年1月12日木曜日

静かな店

仲良しの同僚の中には、

「スタバ? もう何年も行ってないな」

という人もいるんですが、
わたしの場合、今年になってからだけでも、
今日でもう5回目? くらいです。
といっても、
スタバならなんでもいいわけではなく、
自宅近くの駅前の店ではなく、
クルマで5,6分行った街道沿いにある店が好きです。
そこは、最寄りの駅からも少し遠く、
クルマのお客さんがほとんど。
そこそこ近くに大学もあるため、
学生客が多く、つまり、勉強しているお客さんが多いので、
静かなんです。
この前などは、
あまりに静かなので、
ぐるりと店内を見まわしてみると、
18人いたお客さんの全員が一人客で、
つまりおしゃべりをしている人がゼロ!
そりゃあ静かです。

わたしは、タバコも吸わないし、
飲みに行く機会もごく少ないので、
その代わりと言ってはなんですが、
ゆずシトラス・ティーは許すことにしています!

2017年1月10日火曜日

リリー


お正月に訪ねた家の、
子ネコちゃん、リリーです。
とても人懐っこくて、かわいかったです。
この家には、ネコが3匹いて、にぎやかでした。

ついでに、Manon も。


1913-1915: Views of Tokyo

https://www.youtube.com/watch?v=BYOGClmmeao
(音声は単なる後付けのようです。)

浅草、賑わってますね。

啄木の、

浅草の凌雲閣のいただきに
腕組みし日の
長き日記(にき)かな

が含まれる『一握の砂』は、
1910年の刊行です。

2017年1月9日月曜日

『妻への家路』

チャン・イーモウ&コン・リー、とくれば、
わたしは、『秋菊の物語』を思い出しますが、
このコンビによる新作、

『妻への家路』(2015)

を見てみました。

http://cominghome.gaga.ne.jp/

映画の始まりは、1976年頃。
ぎりぎり、まだ文化大革命が終わっていない、
その年の前半なのでしょう。
そして中盤は、1979年。
つまり、文革も終わり、
かつての反右派闘争のとき逮捕された人たちが、
(生きていれば)
次々に解放されていく時代です。
主人公のルーも、そんな一人。
劇中で彼は「教授」と呼ばれていて、
フランス語もできることになっているので、
1957年頃に中国でそういう立場にあったとなると、
これは相当なインテリ層ということになるのでしょう。
(1949年の中国建国当時、
識字率は20%程度だったようです。)

でも、20年間彼の帰りを待っていた妻は、
ルーを見分けることができません。
心因性の、記憶喪失に陥っていたのです。
(その直接の引き金は、
物語の中で明かされます。)

ラヴ・ストーリーです。
でも背後には、もちろん、
中国の現代史があります。
それは、具体的に細かく説明されはしませんが。
(そしてもう少し、説明が欲しい気もしますが。)

建国、百家争鳴、反右派闘争、大躍進、文革……
これをざっと説明して、
明日、今年最初の「ワールド映画ゼミ」で、
この映画を見ることにします。

2017年1月8日日曜日

これはおめでたい!!

アディーチェの『アメリカーナ』、
くぼたのぞみさんが訳されたこの本のことは、
ずっと紹介したいと思っていて、
どういったら言いか、と考えてきたのですが、
とにかく……

ここ数年でわたしが読んだ小説では、
1番おもしろい!!!

これが結論です。

で、ちゃんとした紹介もしないまま、
とにかく急いで紹介したくなったのは、
今ふとアマゾンを見たら、なんと、

265位!!!

https://www.amazon.co.jp/%E3%82%A2%E3%83%A1%E3%83%AA%E3%82%AB%E3%83%BC%E3%83%8A-%E3%83%81%E3%83%9E%E3%83%9E%E3%83%B3%E3%83%80-%E3%83%B3%E3%82%B4%E3%82%BA%E3%82%A3-%E3%82%A2%E3%83%87%E3%82%A3%E3%83%BC%E3%83%81%E3%82%A7/dp/4309207189/ref=sr_1_1?s=books&ie=UTF8&qid=1483884706&sr=1-1&keywords=%E3%82%A2%E3%83%A1%E3%83%AA%E3%82%AB%E3%83%BC%E3%83%8A

朝日新聞(だけじゃありません。たくさん出ました。)の書評も、
効いたのでしょうが、
それにしてもうれしい!
この本がたくさんの人に読まれるのが、
ほんとにうれしくて、
とにかく急いで紹介することにしました。
訳も、ほんとにいい感じ。
とても優秀な騎手が、
力強く生きのいい駿馬と一体になり、
のびのびと走っているよう。

くぼたさん、
訳してくださって、ほんとにありがとうございました!

『アナーキスト』

タハール・ラヒム、
アデル・エグザルコプロス主演の映画、

『アナーキスト』(Les anarchistes  2015)

を見てみました。

https://www.youtube.com/watch?v=efwyVIwXENc

舞台は、1899年のパリ。
(パリ・コミュ―ンから約30年、
バンド・ノワールから約15年、ということですね。)
孤児院で育った貧しい青年ジャンは、
警察にスカウトされ、
アナーキストを監視するスパイとなります。
ジャンにとってこれは、
ひとつの「出世」であり、社会への参加であり、
思想的な事件ではなかったといえるでしょう。
彼は順調に(?)スパイの仕事をこなしますが、
社会正義を説き、真摯な彼らと接するうち、
彼も次第に、アナーキスムに共感を抱くようになってゆきます。
しかも、アナーキストのグループにいたジュディットに魅かれるようになり、
その傾向は強まるように見えます。
ただ、そうした中で、
アナーキストたちの行為は過激化し、
それは社会変革への意思というより、
ルサンチマンの発散に近づいてゆきます。
ジャンは、違和感を感じ始めます……

地味ですが、
いい映画だと思いました。
まず、今、この19世紀末を舞台にした映画を撮ることの必然性が、
始まってすぐに伝わってきます。
それは、ジャンたちが働く工場の描写です。
耳をつんざく騒音の中、
彼らは早朝から夕方まで働きづめで、
巨大な搾取の対象なのです。
「自分を虐げる者たちのために働く」ことを、
彼らは余儀なくされており、
産業革命以来の機械化が、
彼らの生活をより過酷なものにしているようにも見えるのです。
つまり、今、と似ているわけです。

ただ監督は、アナーキスムを美化してはいません。
その美質や可能性は認めつつも、
アナーキストという人間の限界も見つめています。
(だから今も、極論すれば、
イデオロギーはさておき(!)、
人間として信用できる人に政治をやってほしいと思うわけです。)

主演の二人、よかったです。
アナーキスト仲間を演じるギヨーム・グイは、
この頃よく顔を見る俳優で、
今回が一番よかったかな?
やさしそうな風貌と違う役どころだったのが、よかったのかも。
もう一人、スワン・アルノーのよかった。

というわけで、なかなかよかったです!

スタジアムに


スタジアムに現れた巨大ネコ!


2017年1月6日金曜日

Mon fils

昨日に続いて、エラン・リクリス監督の最新作、

Mon fils(2014)

を見てみました。

始まりの舞台は、テルアヴィヴ近郊のティーラ。
そしてエルサレムへと移ってゆきます。
時代は、まず、1982年。
(映画の冒頭、ラジオから、
イスラエルが南レバノンを占領した、という放送も流れます。
シャロンが国防大臣だった1982年の事件です。
つまり、昨日見たZaytoun と同じ時代です。
主人公の家には、
「ベギン、シャロン、戦争は止めろ」
と書かれたプラカードがあります。)
そしてその後時代は6年後、1988年に飛び、
その後、湾岸戦争の91年などを経過し、92年までが描かれます。

https://www.youtube.com/watch?v=vPDKh-b3xPE

100分の作品なんですが、
ずっしり内容が詰まっています。
複数のストーリーラインが並行し、
主人公はそのすべてに関係しますが、
すべてが一点に収斂する、というのではなく、
ずっと並行してゆく感じです。

イアドは、イスラエル内で暮らすパレスチナ家庭の三男。
とても優秀で、イスラエルの最難関高校に入学を許可されます。
(開校以来初のアラブ系の生徒です。)
彼はそこで、快活で美しい少女ナオミと出会い、恋に落ちます。
(「ナオミ」というのは、
ユダヤ系の代表的なファーストネームの1つです。)
またイアドは、学校のボランティア活動を通して、
筋ジストロフィーのユダヤ人少年、ヨナタンとも出会い、
二人の間には、深い友情が生まれます。
家族の期待を背負ったイアドは、勉強も怠らず、
すべては順調に見えました。
でも、ナオミが、イアドとの付き合いを親に禁じられたあたりから、
だんだん歯車が狂い始め……

イスラエル人はユダヤ人、と思いがちですが、
イスラエル人の20%はアラブ系です。
ただ彼らは、社会的に下層に押し込められがちで、
その意味でイアドは、家族の期待の星でした。
実は彼の父親(アリ・スリマン)も優秀だったのですが、
反政府運動にかかわったため2年間投獄され、
将来を断たれました。
ただ、時代は変わり、
父親もまた、今はもうイスラエルの絶滅を望みはせず、
アラブ系にも平等な機会が与えられることを望んでいるようです。

映画の中には、
イスラエル人がアラブ系をいじめる場面も、
そしてその逆のケースも、きっちり描かれています。
だからこそ、イアドとナオミの恋は美しく見えます。
イアドとヨナタンの友情も。

そして映画は、思いもよらない結末を迎えます。
エラン・リクリス監督らしいオープン・エンドです。
それにしても、
こんなに濃い映画は久しぶりに見ました。
いい映画でした。

*イアドの中学の校長が、
『シリアの花嫁』でシリアの兵士を演じていたNorman Issaでした。

2017年1月5日木曜日

Zaytoun

エラン・リクリス監督の作品は、
『シリアの花嫁』と Les citronniers しか見ていないのですが、
この2作はとても質が高く、
信用できる監督だと思っています。
で、彼の2013年の作品、

Zaytoun (『ゼロ タウン 始まりの地』)

を見てみました。

https://www.youtube.com/watch?v=IWypgQDfWz0

(日本語版があるのは、見終わってから知りました。
まさかあるとは思ってなかったので、
調べさえしてなくて。
時々、こういうことが起こります。)
フランス語版のタイトルの Zaytoun は、
(wiki によれば)アラビア語で「オリーヴの木」だそうです。

舞台は、1982年のレバノン。ベイルート近く。
その、パレスチナ人難民キャンプで暮らす少年ファヘッドと、
撃墜されたF16 から脱出し、捕虜となったイスラエル兵ヨニとの、
友愛の物語です。
ファヘッドの父親は、ほんの数週間前、
イスラエル軍の爆撃で死亡。
一方ヨニの父親も、六日間戦争(1967)のときに、
(当然アラブ側の攻撃によって)死亡しています。
となると二人は、
民族的にも個人的にも、
父親の敵同士、ということになります。

ファヘッドは、なんとしても、
捨ててきたパレスチナの故郷に戻り、
父親が「いつかは帰郷してこれを植えるんだ」と言っていたオリーブの木を、
植えたいと思い詰めています。
一方、捕虜になったリーは、とにかく逃げたい。
二人の利害が一応一致し、
危険に満ちた帰郷/脱出の旅が始まります。
ここからは、ロードムーヴィー的に展開します。
(決して気楽なものではありませんが。)

パレスチナ人とイスラエル人との間には、
さまざまな問題が、今も未解決のまま存在しています。
にもかからわず、リーとファヘッドの間には、
深い友愛が生まれるのです。
いい映画だと思いました。

*『シリアの花嫁』で、ヒロインたちの兄弟マルワンを演じたアシュラフ・バルフムが、
パレスチナの兵士として、
『キャラメル』(舞台はベイルート)で兵士を演じたアリ・スリマンが、
シリアの兵士として、出演していました。

2017年1月4日水曜日

『マネーモンスター』

ジョディ・フォスター監督、
ジョージ・クルーニー&ジュリア・ロバーツ主演の映画、

『マネーモンスター』

を見てみました。

http://bd-dvd.sonypictures.jp/moneymonster/

リアル・タイム・サスペンスと言うだけあって、
始まって数分で画面に緊張が満ち、
その緊張は終盤まで保たれています。
エンターテイメントととしては、
よくできていると言っていいのでしょう。

ジョージ演じるリー・ゲイツは、
財テクTV番組「マネーモンスター」の司会者で、
ジュリアが演じるのはその番組のチーフディレクターです。
ある日の生放送中、その番組の男が乱入。
彼は拳銃をリー突き付け、
さらに、リーの体に爆弾を巻き付けます。
起爆装置は、犯人が握っていて、
もし彼を射殺して彼が手を開くと、
その爆弾が爆発することになります。
だから、手を出せません。
犯人は、数週間前にこの番組が推奨した株を買い、
大損していました。
そしてその会社の社長も、番組も、
許せないというのです……

わりと始まり近く、犯人が、
「本当の敵は中国でもイスラムでもない」
と言う場面があります。
なるほどそうでしょう。
じゃあ、本当の敵とは?
ふつうに考えれば、
拝金主義、強欲グローバル資本主義だ、ということにもなるでしょう。
そういうニュアンスが、
この映画にまったくないわけではありません。
でも……

<以下ネタバレます>

物語の結末において、
「悪」を一身に背負うのは、
いかさまをした社長一人なのです。
番組は(おそらく)明日も続き、
そこでは「財テク」情報が熱く語られ、
タイム・イズ・マネー的な獰猛さが「善」とされます。
なにも、なにも変わっていない……

エンターテイメントととしての文法は守られ、
その点では素晴らしいとも言えるでしょう。
でも、映画としては、ほとんど nul だと思いました。

2017年1月3日火曜日

Mustang

気になっていたトルコ映画、

Mustang(2015)

を見てみました。
(日本題は『素足の季節』。

http://www.bitters.co.jp/hadashi/

この、デヴィッド・ハミルトンを彷彿とさせるポスター、
そしてこの邦題。
そんな、鈍感で「甘美」な物語じゃありません。
mustang(野生馬)の話なんですから。

ちなみに、フランス語版DVDのジャケットはこれ;


彼女らの目。
そこには少なくとも、
日本のオフィシャル・サイトのような、
眠たげな「甘美」さはありません。
はっきり Mustang と書かれているし。

イスタンブールから1000キロ離れた、小さな村。
両親を亡くし、寡婦である祖母と暮らす五人姉妹。
この、若く生気にあふれた少女たちそれぞれの運命を描いています。

「運命」、という言い方をすると、
やや受身的な印象があります。
そしてそう言うしかないケースもあるのです。
でも、自分で「運命」を切り開こうとするケースもあります。
いずれの場合も、わたしたち観客は、
少女たちを応援したくなります。

舞台となったトルコの田舎には、
旧い慣習が色濃く残っています。
この隔絶された世界で、
少女が新しい世界を作り出すのはほとんど不可能でしょう。
そんなとき「希望」として立ち現れるのは、
イスタンブールなのです。
この街は、これまでもさまざまな象徴として描出されてきましたが、
この映画におけるイスタンブールは、
まさに「都会」です。
東京が、パリが、そうであったような。
そうであり続けているような、都会。

旧いもの、は、もちろん、トルコにだけにあるわけではありません。
少女たちの未来が、
可能性にあふれたものであることを願わずにいられません。
いい映画でした。

2017年1月2日月曜日

de la part de Manon


オメデトウゴロニャイマス!

2017年1月1日日曜日

おめでとうございます


ふと、「ゆく年くる年」で、
知恩院の鐘でも聞こうかなと思ったら、
今回は平等院(など)でした。
で、
ふとBSを見ると、『ゴッドファーザー』。
中学生時代にロードショーで見て、
ほとんどストーリーがわからなかった初体験から始まって、
もう10回は見たと思うんですが、
この映画、ほんとに、
ちょっと見るとやめられなくなるという中毒性があり……

でも今回見て、
やっと少しわかったような気がしました。
たとえば、
イタリア系移民の話であるのはもちろん頭ではわかっていたわけですが、
それがどれほど濃く表現されているか、とか、
コルレオーネ・ファミリーの中で、
養子であるトム・ヘイゲンだけはドイツ系だとか、
ドンに利用される議員の中には、
はっきりユダヤ系が混じっているとか……。
でもこれじゃあ、
中学生にはわからなかったはずです。
そもそも、中学生(というか実質的にはその後も)には、
舞台が1945年で、
マイケルが参加していたのがW.W.Ⅱであったことさえ、
よくわかってなかった(ないし意識できていなかった)でしょうから。
また、ソロッツォが、
大麻をトルコで栽培させ、シチリアで精製していたというけれど、
その空間的感覚もまるでなかっただろうし。
となると、
1972年にこうした旧い家族観を描く意味とは?
というような問題までは、
到達できるはずもありません。

やっぱり、映画を見るのって、
簡単じゃありません。
(でも、やめられないですね!)