2017年1月31日火曜日

Alyah

3週間ほど前、
『アナーキスト』という映画を見て、
ここでも書きました。

http://tomo-524.blogspot.jp/2017/01/blog-post_94.html

で、この映画の、
なんというか、問題意識の在り方が、
ちょっとそそられたわけです。
で、
同じ監督(脚本も)の、前作を見てみました。

Alyah (2012)

https://www.youtube.com/watch?v=mU5ucIgeOu0

この「アリーヤー」とは、ヘブライ語で、
「イスラエルの地への移民」
を意味しているそうです。

主人公のアレックスは、ユダヤ人。
麻薬のディーラーとして、
パリに生きていますが、
それでいいと思っているわけではありません。
(物語冒頭の売買は、シャトー・ドー駅のすぐ近く。)
また彼の兄は、いわば落伍者で、
アレックスのもとに現れては金の無心を繰り返し、
あげくは、商売物の麻薬を持ち逃げしたりもします。
そこでアレックスが考えたのが、
イスラエルへの移民です。
ユダヤ人である彼だからこそ可能なこの選択肢を、
今や具体的に考え始めるのです。
そんな時彼は、ユダヤ人ファミリーの集まりにおいて、
ジャンヌと出会い、恋に落ちます。
ジャンヌは訊きます、どうしてイスラエルへ?
「だって、誰もパリにいてって言わないから」
「……いてよ」
アレックスの心は揺れます。
テル・アヴィヴで心機一転を図るか、
パリで、麻薬を売りながら、
ジャンヌと付き合ってゆくか……

まず、いうまでもなく、「パリのユダヤ人」を描く映画です。
しかもその主人公が、犯罪者で、
それを清算するために、
イスラエル移民を考えるという、
今までにない展開です。
比較できるのは、これでしょう。

http://tomo-524.blogspot.jp/2011/02/la-petie-jerusalem.html

でもこの場合は、
反ユダヤ的活動に嫌気がさして、
イスラエルに向かうのでしたから、
今回とは意味合いがだいぶ違います。

監督は、さまざまなジャンルの要素を入れたかったと語っていて、
なるほどここでは、
犯罪映画、家族映画、恋愛映画、宗教映画、などの要素が、
混然一体となっています。
「パリ映画」を語る上では、
素通りできない作品だと思いました。
(Amazon USA では、
ヴィデオ視聴が購入できます。)

ジャンヌを演じたのは、
『黒いスーツを着た男』で、
R. ペルソナの婚約者を演じたアデル・エネル。
今回の彼女は、よかったです。
また、『アナーキスト』にも出ていた、
ギヨーム・グイも出ています。

音楽は、シェーンベルクの「浄められた夜」。
無論、「アリーヤー」が持つ意味と、
繋がっているのでしょう。

(備忘録として、これも。

http://tomo-524.blogspot.jp/2014/03/dans-la-vie.html )