2017年1月22日日曜日

『わたしはパリジェンヌ』

マイ・フレンチ・フィルム・フェスティヴァルから、

Peur de rien (『わたしはパリジェンヌ』)

を見てみました。

https://www.youtube.com/watch?v=3LYzkN98rcU

レバノンからパリに留学してきたリナ。
当初彼女は、裕福な叔母夫婦の家に住む予定でしたが、
義理の叔父に関係を迫られ、
その家を飛び出します。
その後は、あちこち転々としながら、
また何人かの男たちと仲良くなりながら、
パリで生活を続けます。
が、履修した科目に一貫性がなく、
就労時間も規定オーヴァーで、
国外退去を命じられ…… というお話。

一番のポイントは、
時間的舞台が1993年だということ。
つまり、移民に冷淡なことで名高い、
あのパスクワ法が成立した年なのです。
途中、
「パスクワは、ゲイとジャンキーとアル中を締め出したいんだ。
ミロシェヴィッチをやっつける代わりに」
と叫ぶ酔っ払いが出てきますが、
これが物語全体の背景にあります。
目の付け所としては、とてもいいんじゃないかと思います。
(そして、この93年というのは、
レバノン内戦が終わってから3年目。
そしてこの年に18歳だということは、
ヒロインは、まさにこの内戦が始まった75年頃に生まれたことになります。
彼女の人生は、まさに内戦の時代でした。
ただし彼女によれば、
死者を見たり爆撃にあったりはしていない、
ただ爆弾が落ちる音を聞いただけだ、
とのことですが。)

主演しているレバノン人女優 Manal Issa も、
なかなか魅力的。
特に、ちょっと微笑んだときの感じが。

さて、では作品自体はというと、
何かこう、ドライブするソウル、みたいなものが、
足りない気もします。
ブルジョワの、女好きな社長、
極右の学生たちなどは、
ややステレオタイプだし、
主人公の生き方そのものが、
グッと迫ってくるものが足りない気もします。

なかなかの意欲作だと思うのですが、
いわゆる「何か一つ足りない」感もまた、
残ってしまうのでした。