2017年1月5日木曜日

Zaytoun

エラン・リクリス監督の作品は、
『シリアの花嫁』と Les citronniers しか見ていないのですが、
この2作はとても質が高く、
信用できる監督だと思っています。
で、彼の2013年の作品、

Zaytoun (『ゼロ タウン 始まりの地』)

を見てみました。

https://www.youtube.com/watch?v=IWypgQDfWz0

(日本語版があるのは、見終わってから知りました。
まさかあるとは思ってなかったので、
調べさえしてなくて。
時々、こういうことが起こります。)
フランス語版のタイトルの Zaytoun は、
(wiki によれば)アラビア語で「オリーヴの木」だそうです。

舞台は、1982年のレバノン。ベイルート近く。
その、パレスチナ人難民キャンプで暮らす少年ファヘッドと、
撃墜されたF16 から脱出し、捕虜となったイスラエル兵ヨニとの、
友愛の物語です。
ファヘッドの父親は、ほんの数週間前、
イスラエル軍の爆撃で死亡。
一方ヨニの父親も、六日間戦争(1967)のときに、
(当然アラブ側の攻撃によって)死亡しています。
となると二人は、
民族的にも個人的にも、
父親の敵同士、ということになります。

ファヘッドは、なんとしても、
捨ててきたパレスチナの故郷に戻り、
父親が「いつかは帰郷してこれを植えるんだ」と言っていたオリーブの木を、
植えたいと思い詰めています。
一方、捕虜になったリーは、とにかく逃げたい。
二人の利害が一応一致し、
危険に満ちた帰郷/脱出の旅が始まります。
ここからは、ロードムーヴィー的に展開します。
(決して気楽なものではありませんが。)

パレスチナ人とイスラエル人との間には、
さまざまな問題が、今も未解決のまま存在しています。
にもかからわず、リーとファヘッドの間には、
深い友愛が生まれるのです。
いい映画だと思いました。

*『シリアの花嫁』で、ヒロインたちの兄弟マルワンを演じたアシュラフ・バルフムが、
パレスチナの兵士として、
『キャラメル』(舞台はベイルート)で兵士を演じたアリ・スリマンが、
シリアの兵士として、出演していました。