2017年3月4日土曜日

『海燕ジョーの奇跡』

かつて一世を風靡したドラマ、
『ふぞろいの林檎たち』。
そのパート1が始まったのは、1983年、
わたしが修士課程にいる頃でした。
そしてその「林檎」の一人に、
(わたしと同じ歳の)時任三郎がいました。
彼は翌84年、ある映画にも主演しました。
『海燕ジョーの奇跡』
です。
ただその頃わたしは、
日本映画を見る習慣がなかったのでスルーしてしまったのですが、
それを今日、見ることができました。

https://www.youtube.com/watch?v=NXrbcFrutMY

実は、
先日の『沖縄やくざ戦争』に続き、
「なにか離島ものを!」
というわがままな希望に対し、
倉石先生がDVDを貸しくれたのでした。

主人公ジョーは、日比の「ミックス」で、
沖縄でチンピラ稼業。
弟分を殺されて逆上し、
相手側の親分を射殺、
さらには大金も盗んで、
逃避行します。
その旅は、
宮古島~与那国島(=恋人の出身地)~台湾~フィリピン
と続くのですが、
この南へ向かう旅程は、
海のロードムーヴィーという感じで、
ちょっとうっとりします。
(闇の小舟の船頭が三船敏郎だったり。)

やがて、マニラに到着。
そこには、
ジョーを可愛がっていた「組長」の昔馴染み(=原田芳雄)がいて、
彼を頼って行ったわけです。
ただしそもそもそこは、
ジョーにとって(少なくとも半ばは)「おれの国」でもあるわけです。
実際、ずいぶん前に分かれた実父は、
今もマニラにいるはずです。
この父親からのエアメールを、
ジョーは手放すことはありません。
やがてそこに、
恋人の陽子も合流し、
彼の子を妊娠していることを告げます……

マニラの街は、
かなり克明に記録されています。が、
おそらくそれは、
細部が拡大されているのであって、
マニラ全体を映しているわけではないでしょう。
それでもやっぱり、
街中の風景はおもしろいです。

一般的に言って、
ヤクザ映画やギャング映画には、
命を捨てることを「美しい」とする倫理、
家父長的な家族主義の肯定、
新興勢力(≒グローバリスト)への抵抗、
などが見いだされるようです。
ただこうして書いてみると、
これらの要素は、
ヤクザ映画の専売ではないことにすぐ気づきます。
そしてこれらの要素の中には、
なかなかの危険なものも含まれていて、
たとえば、命に対する態度などは、
そのまま戦争へと突っ走る「勇気」に転換されることもあり得るわけです。
ただそれでも、こうした倫理がウケルのは、
わたしたちの中に、
そうしたオリエンテーションが残っているからなのでしょう。
いやそんなものはまったくない、
と言い切れる人は、
むしろ少数派なんじゃないでしょうしょうか。
だって、『ゴッドファーザー』は「おもしろい」と感じてしまいますからね。

……と話しが逸れてしまいましたが、
30数年遅れで見た『海燕ジョーの奇跡』、
なかなかおもしろかったです!