2018年3月16日金曜日

Pour une femme

ブノワ・マジメルとニコラ・デュヴォーシェル、
タイプの違う二枚目二人が共演する、

Pour une femme (2013)

を見てみました。

https://www.youtube.com/watch?v=AjKorgWU00Y

映画の中の「現在」は、1980年代。
タニアとアンヌの姉妹は、
3か月前に亡くなった母の形見分けをしています。
作家である妹のアンヌは、その遺品の中に気になるものを発見し、
両親(ミッシェルとレナ)の過去を調べ始めます。
一家はユダヤ人です。

ミッシェルとレナの出会い、それは第2次大戦中、
南仏の、あの悪名高きリヴザルト収容所でのことでした。

この収容所は、時代によって、
「望ましからぬものたち」を収容してきました。
スペイン内戦を逃れてきた人たち、
戦中は、外国から来たユダヤ人、ロマ人、
戦後はアルキ(=アルジェリア戦争時、対仏協力したアルジェリア人)、
そしてその後は不法移民も。

https://www.youtube.com/watch?v=EkHyxk6Bi6A

映画の冒頭の雰囲気は、
どことなくレトロなんですが、
そこがリヴザルトであると分かると、
単なる懐古趣味の映画じゃないことに気づかされます。

さて物語です。
まずミッシェルは、ウクライナのコーヴェリ生まれで、
1925年、ユダヤ人であった両親とともにパリにやってきます。
(彼は15歳でした。)
第2次大戦が始まると、ミッシェルは従軍するも、
両親は捕らえられ、ドランシーの収容所に送られ、
その後アウシュヴィッツへ。
一方ミッシェルは、41年に復員してフランスに送還され、
ユダヤ人であったため、リヴザルト収容所に送られます。
そしてそこで、レナを見初め、
(この部分は、映画内で曖昧にしか語られないのですが)
ミッシェルはレナを(またさらに他の人たちをも)助け、
収容所から脱走するのです。
それは大変な難事でしたが、なんとか成功させます。
そして、回想の最初の場面は、1945年のリヨンです。
ミッシェルとレナは、フランス国籍の取得申請に来ています。
(係官が質問することで、
上に書いた内容が示される仕掛けです。)
実はこの時、レナは妊娠中で、
とにかくミッシェルは、フランス人になることを望み、
その願いは叶うのです。
ミッシェル夫婦はフランス人になることができました。

そして戦後まもなくの1947年。
子供も育ち、平穏な暮らしをしていた二人のもとに、
ミッシェルの弟、ジャンが現れます、
お互い、兄弟はナチに殺されたものと思っていたのに。
2人は再会を喜びますが、
このジャン、どこか不審なのです。
コミュニストであるミッシェルは、仲間たちから、
ジャンはスパイじゃないのか? と疑われもします。
が、
(これはおいおい分かってくることなのですが)
実はジャンは、アメリカ大陸に逃亡しようとする元ナチを追い、
さらにはその協力者たちも抹殺する仕事を遂行する、
ユダヤ人組織の工作員で、
ある銃撃事件に関連してフランス警察に追われているのでした。
(この時点では、まだイスラエルは成立していませんが、
ジャンが最後に逃げ落ちてゆくのは、パレスチナです。)

コミュニストになった兄と、
元ナチを追い続ける弟。
そして、恩義から妻となることを承諾したレナは、
今、ジャンに惹かれ、その胸に飛び込みそうです。
兄弟の運命は、三角関係の行方は、
そしてアンヌの本当の父親は……
というお話。

戦前~戦後のフランスにおける、ユダヤ人の問題。
また、もっと広く、ヨーロッパにおけるユダヤ人の問題。
そこに、
兄弟、姉妹の愛憎と、
親子の葛藤と、
三角関係と、
コミュニズムとをからめ、
人生における選択について語った映画、
ということになるのでしょう。
ふつうはバラバラに散ってしまいそうなこれだけの要素を、
とてもうまく繋ぎとめていると感じました。

監督はディアーヌ・キュリス。
彼女の作品は、見なきゃ見なきゃと思いつつ、
まだほとんど見られてません。
見ていこうと思います。

*レナが、義弟ジャンのいるホテルに向かおうとする瞬間、
彼女は、やはり三角関係を生きている女友人に訊くのです。

Je fais une bêtise ?
Peut-être. Mais il y a des bêtises à regretter de ne pas avoir faites.

わたしバカなことしてるの?
多分ね。でも、やらなかったことを後悔するバカなこともあるのよ。

Peut-être...