2013年5月31日金曜日

ジェヴォーダンの

2001年と言いますから、
もう10年以上前ですが、
『ジェヴォーダンの獣』
という映画がありました。
フランスのジェヴォーダン地方に伝わる、
女性や子供ばかりを襲う獣の伝説。
この伝説をもとにしたフィクション、というところです。

時は1765年、ルイ15世の時代です。
で、主人公フロンサックは、「セント・ローレンス川」で戦ったことがある、
というのですが、これはもちろん、
フレンチ・インディアン戦争(1755 - 1763)のこと。
そして彼の頼りになる友人は、
この戦いのとき彼を助けてくれたインディアン、マニです。
この2人が、王の命を受けて、獣退治にやってくるわけです。

http://www.youtube.com/watch?v=RQ-oWOKbpIY

フロンサックは、獣なんているわけない、という態度。
けれど地元は、あんな獣は見たことない、絶対オオカミじゃない、
と口を揃えます。
マニは……彼は超自然的な力を備え、
オオカミたちと心を通わせ……

この映画、今回6, 7年ぶりに見たんですが、
これは図式化すれば、
フロンサックが体現する合理主義、ないし啓蒙思想、
と、
地元の神父らが体現する旧来の、いわば非合理な思想、
の対決なんですね。
獣はその戦いの象徴で。

ただ気になるのは、マニの存在です。
フロンサックとマニは、ほとんど一心同体。
お互い認め合って。
でも、マニの背負っているのは、
フロンサックの見ているものとはだいぶ隔たりがあり……

このへんに、考えるべき点があるのでしょう。

2013年5月29日水曜日

Fela Kuti

関東も梅雨入り、だそうですね。
例年より10日も早いとか。
その分早く「夏」がくるんでしょうか。
(I hope so ! )

さて、4月に始まった授業も、今日で8回目。
前期の授業は15回ですから、
今日はちょうど折り返しです。
今年の1年生たち(フランス語)は、概して授業での声も大きくて、
授業はしやすいのですが、
小テストの出来は、必ずしも素晴らしいとは言えない気がしないでもない、
というところでしょうか。
でもまあ、試験前には、踏ん張ってくれることを期待しています。

ゼミでは、毎回そこそこ重い課題を課しているのですが、
こちらは20人のほとんどが、
がんばってトライしてくれています。
先日は、『扉をたたく人』に関連して、
映画内で名前の出るミュージシャン、
Fela Kuti の曲をなにかYouTube で聞いて、
その感想を書く、という課題を出しました。
(1回分の課題の、これはごく1部です。)

みんな見てくれて、
まあ希望的観測としては、
映画内で言及されたアーティストについては、
こうして確認することで、
より映画(ないし登場人物)に近づけるということを、
感じでもらえたと思います。
単純なことですが、
これ、言われないとなかなかそこまでしないものです。

http://www.youtube.com/watch?v=RK4zBRkog8o

2013年5月26日日曜日

エメ・セゼール 生誕100年


白水社の雑誌「ふらんす」、
6 月号の特集は、

「エメ・セゼール 生誕100年」

です。
筆頭に掲載されているのは、
仲良しの若手研究者、中村さんの文章、

「エメ・セゼールを読む3 つの理由
共和主義・ディアスポラ・第三世界」

です。

文章中、
セゼールに触れたアブダル・マリックのあの曲への言及もあります。

この曲の入ったアルバムについて、
アブダルはこう言っています。

"Je suis très attaché à ce disque.
J'y mets toute ma personne, j'y parle avec mon coeur et mes tripes.
 C'est une façon d'exprimer mon rapport au monde, à l'art et aux autres.
Il y a, par exemple, la chanson Césaire (Brazzaville-Oujda)
  : Aimé Césaire est mort pendant que je travaillais sur l'album.
 Comme Rimbaud, il m'a beaucoup inspiré,
a façonné mon rapport à la France et à la diversité."

2013年5月23日木曜日

陣野さん

今、「文芸批評」とは何でありえるのか、
何でありえないのか、
というような、「真面目な」連ツイートです。

書いているのは、
ラップ・フランセを語り、
サッカーを語り、
バリバリの現役文芸批評家である、
陣野俊史さん。

https://twitter.com/jinnotoshifumi

たしかに、わたしが東京新聞の「大波小波」を読んでいるのも、
陣野さんの指摘する意味においてです。

考えさせられます。

2013年5月22日水曜日

パリのジュンク堂

パリのジュンク堂、
その店員さんたちが作ったリストだそうです。
(重いので、開くのに少し時間がかかります。)

http://www.junku.fr/upload/junkuclub/JUNKUCLUB.pdf#search='%E3%83%91%E3%83%AA+%E3%82%B8%E3%83%A5%E3%83%B3%E3%82%AF+%E3%82%AF%E3%83%A9%E3%83%96'

値段がユーロ表示で、おもしろいですね。

2013年5月20日月曜日

ドランシー収容所

『アイシャ』の舞台となったボビニー。
ボビニー・パブロ・ピカソ駅から、ためしに北に歩いてゆくと、
10分ほどでボビニーを離れ、
となりのドランシーに入ります。
そしてさらに10分ほど歩くと、
あのドランシー収容所があった場所に到着します。

ドランシー収容所、ご存じでしょうか。
大戦中、フランスでナチによって「逮捕」されたユダヤ人の多くは、
まずこの収容所に送られました。
そしてそうした10万ほどの人のうち、
7万人ほどがアウシュビッツに送られました。
そしてこの移送には、フランス側の明確な協力がありました。
つまりこのドランシー収容所は、
フランスのユダヤ人に対する罪の、
象徴的場所ともいえるわけです。

http://www.youtube.com/watch?v=Yoy1lT294Ns

またgoogle map  https://maps.google.co.jp/  で、


と入れると、そこがそうです。

この建物は、もちろんもとは団地(ensemble)。
1930年代のもののようです。
また建物近くには、線路と貨車が見えますが、
これはダミー。
実際は、この収容所から、近くの駅までバスで連れていかれました、
もちろん、フランス側の協力のもと、です。
で、
近くの駅は2つあり、
その1つはブルジェ=ドランシー駅、
そしてもう1つが、(旧)ボビニー駅なのです。




Ancien bâtiment voyageurs de la gare de Bobigny, en juillet 2012.












1943から1944にかけて、2万人以上のユダヤ人が、
この駅からポーランドを目指しました。

こうした記憶を排除することで、
パリは「パリ」として成立するのですね。

授業は英語で?

最近は日本の大学でも、
英語で授業を、
という方向が示されています。
明治大学でも、
英語で行った授業については、
成績表にもそれを明記する、という新ルールが生まれます。

で、
フランスでは(一部を除き)フランス語で授業してたわけですが、
どうも変わってきたようです。

http://www.franceculture.fr/emission-du-grain-a-moudre-reforme-de-l-enseignement-superieur-le-francais-va-t-il-filer-a-l-anglais

たしかに、フランス語だけで授業していたら、
たとえばアジアからの留学生は、
イギリスやアメリカに向かう確率が上がるでしょう。
ただ、「グロビッシュ」は思考そのものを劣化させてしまう……?
教える側も、教わる側も……?
これは議論になりそうですね。

2013年5月18日土曜日

「移民の記憶」

最近は、どうも色々忘れっぽいので、
このブログは、備忘録としても機能しています。
あの映画、前に見たけど、どうだったかなあ…… という感じ。

で今日は、これ、

http://tomo-524.blogspot.jp/2010/12/memoire-dimmigres.html

久しぶりに(まだ途中ですが)見て、
「移民」というものの厳しさが迫ってきます。

「前夜」という雑誌があって、
そのバックナンバーに、
監督であるヤミナ・ベンギギのロング・インタヴューがありました。
わたしのアイデンティティーは、
アルジェリア人でも、フランス人でもない、
それは移民なんだ、
と言っています。
そうなんですね。

2013年5月15日水曜日

les «femmes de réconfort» étaient une «nécessité», selon le maire d’Osaka

中島岳志さんによる、
「橋下徹の言論テクニックを解剖する」です。

http://www.magazine9.jp/hacham/111111/

そして「リベラシオン」。
記事の大きさにまずびっくり。
一市長の発言なのに。
(つまりこれは、一市長の、ではなく、
もっと大きな流れの中の、
その流れをよく象徴する出来事に見えた、
ということなのでしょう。)

http://www.liberation.fr/monde/2013/05/14/japon-les-femmes-de-reconfort-etaient-une-necessite-selon-le-maire-d-osaka_902722

Space Oddity

昨日、一昨日あたりのニュースで、
カナダ人宇宙飛行士、 Chris Hadfield さんの動画が、
話題になっています。
リアルな、CGじゃない、まさにリアルな、
宇宙の写真もたくさんあるのですが、注目は動画。
彼は宇宙船内で、なんとSpace Oddity を歌っているではありませんか!
Ground Cntrol とMajor Tom (トム少佐)の通信という形を取っているこの曲以上に、
彼の状況にふさわしい曲はないかもしれません。

わたしもかつて、いっぱしのDavid Bowie ファンとして、
この曲に打たれた記憶があります。
(歌詞なしで歌える、数少ない曲の1つです。)

http://www.youtube.com/watch?v=KaOC9danxNo

そして聞いてみて、ああ、と思ったのは、
歌詞が微妙に変えられていること。
そう、オリジナルのSpaceOddity は、
最後なんらかの不具合が起き、
宇宙飛行士トムは、宇宙につりさげられてしまうのです。
ここは、
クリスさんの現実に合わせる必要があったのですね。

それにしても、
こんな試みが可能なんて!

2013年5月13日月曜日

朗読劇「銀河鉄道の夜」春の関西ツアー

あの朗読劇「銀河鉄道の夜」が、
初の関西ツアーに出るようです。

http://monpaysnatal.blogspot.jp/

電車の中で電車を?
出町柳から!?
豆大福買って乗り込むとか!?
おもしろそう!!

2013年5月12日日曜日

母の日に

母の日ですね。

1か月半ほど前、
身内のことなので気が引けながら、
この本のことを紹介させてもらいました。

http://tomo-524.blogspot.jp/2013/03/blog-post_20.html

で、母親に今日、久しぶりに連絡したところ、
ここで見て、注文してくださった方もいるようで、
とても喜んでいました。
(わたしからも、merci beaucoup !)
いい本だったと思っていただいたのなら、
いいのですが。

今度は、ある文学者について調べ始めたそうです。
Du courage !

2013年5月11日土曜日

The Next Day

ゲイリー・オールドマン、
は言わずと知れた有名俳優。
『レオン』での刑事の印象は強烈でした。

マリオン・コティヤールといえば、
やっぱり『タクシー』シリーズでの、
主人公の恋人役の印象が強いです。

この2人が、
ボウイの新曲のクリップに登場!

http://www.francetv.fr/culturebox/david-bowie-regardez-le-clip-de-the-next-day-avec-marion-cotillard-135823

http://www.youtube.com/watch?v=7wL9NUZRZ4I

修道士、僧、キリスト、娼婦……
コメントにある通り、
たしかに分かりやすくはないですね。

2013年5月10日金曜日

窒息するドーベルマン

今日の授業で、
Pardon !
を使う回数がとても多いという話をしているうちに、
なぜか都市伝説の話しになり、
院生の頃に読んで強烈な印象を残したあの本、
『チョーキング・ドーベルマン』と
『消えるヒッチハイカー』
の紹介をしてしまいました。

今は日本でも、都市伝説を扱うテレビ番組さえありますが、
そういうところで語られるものは、
どうも物語性に欠けるように思われます。
物語のオチや、結末ではなく、
物語をドライブさせる力そのものを、
ある種の時代の気分が支えているんだ、
というようなことを話しました。
たとえば、「見知らぬ人たちに囲まれて生きる都会生活の不安」は、
ふだんは隠れているけれど、
ある物語の形をとるとき、
強い引率力を発揮しそうです。今でも。

2013年5月9日木曜日

Matebkich

GWに挑戦した『アイシャ』の(自分用)台本作り、
めでたく完成し、
今日はその延長として、
舞台となった土地ボビニーそのものを調べてみました。

やはり知らなかったことも多くて、
たとえば、フランス本国にいるムスリム専用の墓地があり、
そこにはイザベル・アジャーニの父親が埋葬されている、とか、
あのアヨーが設計した、
ナンテールのそれにとても似ているHLMがあるとか。
http://tomo-524.blogspot.jp/2013/04/la-tour-aillaud.html

そしてそのあとは、
映画内に使われている曲をチェック。
1番印象深いのは、これかな。

http://www.youtube.com/watch?v=SH88ocdi7js&list=PLB4B18CD790977ED5

Don't cry という英訳がついているこの曲、
YouTube の、コメントの1番上に来ているもの、
これはおそらく歌詞の仏訳なんでしょう。

********************************

眠れない人たちがいる
昼間は幸せそうにふるまって、
でも夜、一人で泣いている人たちが。
心配しないで、泣かないで。
でもわたしには、だれもそう言ってくれなかった。
心配しないで、泣かないで。
そう、だれかに言って欲しかったのに。
まちがいは、だれにだってあるんだって。


「もうひとつのパリ」

先日、

6月8日(土)15:30~17:00「もうひとつのパリ・移民街と文学」
@朝日カルチャーセンター・新宿教室

http://www.asahiculture.com/LES/detail.asp?CNO=198293&userflg=0

についてお知らせしましたが、
朝日カルチャーがこれについて、 twit していました。
ということは…… 残席あり、ということなんでしょう。
1月の港さんとのトークイベントと内容はかぶりますが、
よろしければ、お越しください。


2013年5月7日火曜日

就活の

遅ればせながら、読み始めました。

「現代思想・4月号 <就活のリアル>」

なんだかこれを読んでいると、
当然、学生たちのことが考え合わされ、
やるせない気持ちになります。が、
そんなことばかりも言ってられません!

彼らが、なんとか生き抜く力をつけるのを手伝えれば、
と思います。
とりあえず、リテラシー。
特に、メディア・リテラシーは重要だと思います。
騙されないように!

2013年5月5日日曜日

「大学入試にTOEFL」の黒幕は経済同友会

というタイトルのブログ、これです。

http://blogs.yahoo.co.jp/gibson_erich_man/32794750.html

先日も、グローバリストであるユニクロの社長は、
仕事に付加価値がつけられないなら、
「年収100万円でも仕方ない」という内容の発言で、
注目を集めました。

上のブログの中の、

「(……)財界やグローバル企業がほしいのは、
ほんの一握りの英語が使えるエリートだけで、
他の子どもたちの教育は視野にありません。」

という部分と、見事に符合していますね。




2013年5月4日土曜日

ル・モンド・ディプロマティーク日本語・電子版

ル・モンド・ディプロマティーク日本語・電子版、再開しています。
これはレベルが高いので、
時間があるときじゃないと、ちゃんと読めません。
GWはいいかも。

http://www.diplo.jp/index.html

それぞれの記事を開くと、
原文も読めるようになっています!
2月号「フランス映画の現実−−意義の薄れる助成金制度」もあります。

こういうサイト、ありがたいですね。

世論調査

「憲法96条改正賛否 各社世論調査」

NHK          賛成26%  反対24%
朝日新聞     賛成38%  反対54%
毎日新聞   賛成42%  反対46%
産経新聞    賛成42%   反対45%
共同通信    賛成43%   反対46%

NHKだけ、他と差があります。

そして先日の読売新聞の見出し。

「憲法96条、自・維・み9割超が改正に賛成」

「9割」って、(違憲状態で選ばれた)議員たちの、
そのまた3党の議員の意見ですね。
こんな見出しって……

2013年5月3日金曜日

台本を

連休です。
何か、少し時間がかかってもいいから、
ベースになるようなことを、と思って、
映画『アイシャ』の台本を、自分で再現してみることにしました。

http://tomo-524.blogspot.jp/2010/10/blog-post_30.html

といっても、もちろん完璧な台本なんてムリですから、
まずはタイミングと場面(場所と養生人物)をすべて書き出し、
重要そうなセリフは書き起こし、
固有名詞や特定できる場所ははっきり示す、
ということくらいのことですが。

数十年前、初めて映画についての論文を書いた時も、
1週間くらいかけて、そうした自分用の台本を起こしました。
その時の楽しさが、だんだんによみがえってきています。

好きな映画なら、これ、楽しいですよ!
(そして間違いなく、よち深く理解できます。)

2013年5月1日水曜日

『検閲帝国ハプスブルク』

今日はもちろん授業日で、
(と言いつつ、休みになっている大学もあるようですが)
学生たちも通常通りの出席状況でした。
理工学部は、基本、まじめです。

さて、わたしの敬愛する先輩にして同僚、
ミスター・ハプスブルグこと菊池先生の新著が刊行されました。

http://www.amazon.co.jp/%E6%A4%9C%E9%96%B2%E5%B8%9D%E5%9B%BD%E3%83%8F%E3%83%97%E3%82%B9%E3%83%96%E3%83%AB%E3%82%AF-%E6%B2%B3%E5%87%BA%E3%83%96%E3%83%83%E3%82%AF%E3%82%B9-%E8%8F%8A%E6%B1%A0-%E8%89%AF%E7%94%9F/dp/4309624553/ref=sr_1_1?s=books&ie=UTF8&qid=1367410931&sr=1-1&keywords=%E6%A4%9C%E9%96%B2%E5%B8%9D%E5%9B%BD%E3%83%8F%E3%83%97%E3%82%B9%E3%83%96%E3%83%AB%E3%82%AF

これはそそられるタイトルですね。
当然、現代を貫く問題です。
神聖ローマ帝国ですから、
むろんフランスも無縁ではありません。
カール5世の母語はフランス語だった! そうですし。
(どうしてそんなことになったのかは、本書で!)

それにしても、グーテンベルクは偉大でした。
彼の発明がなければ、
ルターの宗教革命も、
いやそれどころか世界の文化のあり方まで、
大きく変わっていたかもしれません。
そして印刷物が増え、影響力が増したところで、
検閲は強化されるのですね。

人間の心理というものについての抜群の経験値を持つ菊池先生が、
上からの空論ではなく、
王様たちを含む人間たちをドライブさせる力を、
検閲というシステムを通して追いかけます。

GWに!